若年性アルツハイマーの女性と家族の葛藤と苦悩を描いた「アリスのままで」を観賞
日本での公開が一番最後になった本年度アカデミー賞受賞作品で、この作品で主演女優賞でオスカーを獲得したジュリアン・ムーア。この作品は、彼女の迫真の演技に高い評価を受けたと言えます」。
50歳の誕生日を迎えた言語学の大学教授アリス。長男、長女、次女の三人の子供に恵まれ、夫は医学博士として、不自由のない豊かな生活を送っていた彼女が、若年性アルツハイマーの診断を受けます。アリスは、症状が悪化したときに、自分が自分であるためのある決断を下すというう展開になっています。
彼女にとっての病気は、大学教授とてのキャリア以上に言語を言語学者が失うと言う現実に加え、この病気に遺伝性があり、自分の子供にも将来同じ病気が発症する可能性があると言う二つの宿命を課させられた過酷な戦いです。そうした葛藤と苦悩をジュリアンは見事に演じています。
監督リチャード・グラッツアーは、社会派監督として評価が高い作品を生み出していましたが、今年の3月ALS(筋委縮性側索硬化症)で4年の闘病生活の中亡くなっています。まさにこの作品が生涯の完結作となりました。
現在において完治するこのない病に対して、自らの病と闘いながら人間としての尊厳とその未来におびえながらも、懸命に自分らしく生きることの大切さを心に染み入るように感じる作品です。