本日の美術レビューは岐阜県美術館開館40周年を記念して開催中の近代日本画の巨匠として知られる「前田青邨展」です。
前田青邨は岐阜県中津川市出身の日本画家で、再興日本美術院の重鎮として長年活躍され文化勲章を受章するなど、弟子には平山郁夫がおり、日本画の巨匠として広く知られる画家です。今回の展覧会は岐阜県美術館開館40周年記念展として開催、青邨の代表作の早稲田大学・会津八一記念博物館所蔵の大作「羅馬使節」や重要文化財の「洞窟の頼朝」などの大作を含め100点以上の名品が一堂に介しています。
ここで、近代日本画について説明したいと思います。日本画と言うと水墨画や平安から江戸時代に亘る大和絵を想像される方も多いと思います。明治以降の近代日本画においては、そうした日本の古典絵画の伝統を踏まえながらも西洋絵画にも影響を受けながら新たな日本画を模索しています。
青邨と言えば大和絵に始まり多彩な歴史絵巻を描いた人物画の世界が有名です。そんな中で今回の目玉と言える「羅馬使節」は天正の遣欧少年使節団のヨーロッパ留学でルネサンスの壁画に触発された作品で、青を基調とした色彩と構図は西洋絵画の趣を強く感じます。また、線描を極力省き濃淡だけで描かれた魚や鳥の群れが描かれた作品は水墨画の技法を用いながらもどこかモダンな雰囲気が漂っていました。日本はもとより、中国、韓国、ヨーロッパなどの様々な美術に触れながら多彩な表現で独自の世界を描く青邨、老若男女を問わず広く親しみを感じ、日本画の可能性を感じると思います。
会期は11月13日まで、すでに後期展示がスタートしています。また、同時開催の「岐阜県美術館名品尽くし」も美術館を代表するルドンや山本芳翠など美術館を代表する名品がずらりと展示された見応え十分のコレクションですので、ぜひこの機会に訪れてみてはどうでしょう。