マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演、アル・パチーノ&ジョー・ペシ共演のアメリカ暗黒史を描いた大作「アイリッシュマン」を鑑賞
ネットフリックスで公開されている本作。僕の地域では、わずか1館のみで公開終了ギリギリのタイミングで鑑賞してきました。
先ずは、この作品のストーリー構成から。ロバート・デ・ニーロ演じるアイルランド系アメリカ人フランク・シーランは、表向きは、全米トラック運転手組合の組合長アル・パチーノ演じるホッファのボディーガードとして働きながら、裏では、ジョー・ペシ演じるマフィアのボス、ラッセルの手助けをする殺し屋の顔を持っている。
二つの顔を持つフランクの回顧禄とて物語は展開されるのですが、実は二つの顔を持っているのは彼だけではなく、登場人物すべてにあるところが面白い。当時は、共和党から民主党へ政権が移り、ジョン・F・ケネディーの登場により時代が大きく変換されようとしていた頃で、ダラス暗殺の説のひとつであるマフィア陰謀説などを絡めながら、ケネディー家の関係など政治的な関わりの中に、誰もが二つの顔をもって登場していきます。そうした中で、マフィアの殺し屋として暗躍していったのが、デ・ニーロ演じるフランクで、彼が悪事に手を染めていく過程を四半世紀にわたり詳細に描いています。
この作品の魅力的なところは、実在の人物を演じきっているデ・ニーロ、パチーノ、ペシの三つ巴の人間関係とその結末。最後に生き残ったのは、フランクのみながら、マフィアの掟を守り家族さえにも口を閉ざし続けながら最後は、神父との無言の告解で終わる。フランクの沈黙が印象的でした。
コッポラ監督のゴッドファーザーシリーズが動のマフィアの傑作なら、今回、スッコセッシの相棒であるデ・ニーロとペシに今回スコッセッシ作品初共演となったパチーノのアイリッシュマンは、静のマフィア映画の傑作だと思います。