65オヤジのスタイルブック

絵画と写真の境界線

僕のようなアートに関わる仕事をする人にとって、気になる会話があります。

それは、よく美術館で聞こえる会話なのですが、古典絵画などの写実作品を観ている人が「写真みたい」と言う言葉。

この言葉を聞くととても残念に思うのです。そもそも写真が生れる前に、写実的絵画は存在していました。いわゆる宮廷画家といわれる人々が、貴族などの肖像画を描いたていた時代です。

彼らは、依頼者の姿を忠実に描く以上に描かないといけません。そこには、人物も切り取る行為以上の想像力と技術を要します。そして、そのような絵画芸術は、写真の登場により衰退していったのです。

美術館で耳にする「写真みたい」はおそらく撮られた写真を観る感覚で言われていると思います。芸術の世界にも写真と言う分野は存在しますが、それは芸術表現の手段として用いられるもので、写真を撮る行為とは別の次元といえます。

今日、写真家の篠山紀信さんが、GQ Men of the Year 2012の席上で、写真は時代を映す鏡と述べられていました。確かに写真は時代を映しとり残っていきます。

本来の写真には、そのような大きな役割を持っていると感じます。ですから写真家も芸術家のひとりと言えるのです。

観たものを素直に言った言葉かも知れませんが、絵画の中の写実性は、たんなる写しとる行為ではなく、写真よりも先にあった時代を映しとる芸術なのです。


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