あげちうのブロマガ

不定期連載「ナオヤ戦記 ~奈落の巨顎~」第一話

ちょっと、ある意味での壁の前。

冒頭草案

…この所、ツイてたんだ、だから。少し、気にするべきだったとは、思う。
デカいマグロを仕留めたし、その前はクエも釣り上げた。
一躍、漁村の英雄になった俺だったが、親の視線は気に成る程度に冷ややかだった。

「浮かれるなよ?足下を掬われるぞ」

解っては、居た筈だったが。夢見も良かったその日、俺は周りが見えてなかった。
結局、海に落ちて。有り得ない鮫のデカい口が、それまでの記憶だ。

「ナオヤ戦記 ~奈落の巨顎」
※「異世界で無双する筈が鮫に追いかけられてます」から、改題

第一話「勇者、現る?」

1「ヘレナは祈る、全裸で」

「我が神トラッドよ…知恵をお与え下さい。私の身を捧げます…だから」

この神殿の神官であり、女祈祷師のヘレナは、幾つかの装飾以外はほぼ全裸の恰好のまま魔法陣の中に立ち、いつもの様に祈りを捧げつつ、神の返答を待った。薄暗い神殿の中には今は、彼女一人しかいない。トラッド神への祈祷が叶う、数少ない女祈祷師である彼女だったが、今は切実な危機に直面していた。「シャジャク」と名乗る、奇妙と言って良い魔導士らの集団によって、この地区は未曽有と言って良い危機に直面していたのだ。河や井戸、水のある場所から突如として発生する巨大な魚の様な怪物「シャグ」を”彼ら”は操って。このトラッド神の神殿を、手中に収めようとして居た。

幸いと言うべきか。今の時点ではまだ、神殿の影響範囲なら、神官らの祈祷により結界を張る事は出来た、シャグもシャジャクらも入ってはこれない。しかし、その外には広大な農地と、そして人々の住む家々が点在。それらはその猛威の中、家を、土地を捨ててこの神殿の結界内に逃げ込むしか無く。そして、神殿の備蓄もまた、それらを維持し続けるにはあまりに不足していた。外に出れば、徘徊するシャグの餌食に容易くなってしまう。この地域は、今、正にシャグに包囲され、陥落しようとしていたのだ。

やがて、それでもいつもの様に、だ。彼女の前にうっすらとした光が現れ、そしてそれはやがて、雄々しいと言って良い見事な体躯に豪奢な鎧を纏った女性、その姿を取って現れた。見上げるヘレナに、その女性体は語りかける。

『まいど言ってる様に、私一応女だからそう言うの要らないんだけどさ・・・貴方のそう言う感覚がこの事態を招いた一因って、少しは理解してる?』
「汚物に近いモノを否定して何が悪いんですか」
『なんでこの子が私を呼び出せるんだろう・・・まあ良いや。ともかく、シャジャクが忌々しいのは解ってるんだけど…相手には相手なりの執着はあるのよね。だから、貴方もそれに比するモノを喪失する覚悟を持たなくちゃいけない、それはお金じゃない訳よ』
「ト、トラッド様の為なら、この身など幾らでも・・・!」

顔を紅潮させ身をよじり始めたヘレナに、トラッドも知ってると言う視線で、ともかく言葉を続けた。

『これ、打開まで何時まで掛かるか…私にも解らないから、あまり要求はしたくないんだよね。打開し得る方法はある。”アルス”という異世界から、勇者を呼び込む事で彼らを倒せる可能性は、ある。ただ…貴方は、その男と一切こう…”そう言う事”しちゃダメだって言う、それ守れる?』
「は?」

奇妙に上気していたヘレナは、本当に意味不明な事を聞かれたと言う風に、顔をしかめた。


2「嗜好と狂気は紙一重」

「有り得ないんだけどー」

それでも、ヘレナも今年で18には成る。成人と言って良い彼女は、ともかくトラッド神官の正装、白い神前衣を身に着けつつ、祈祷場で一人、魔法陣を描いていた。トラッド神からは特に指定はされなかったが、一応その魔方陣の中から出るには、術者の許可が必要だった。この中に呼び出せば、取りあえず基本的な危険は無いだろう、それを念入りに確認しつつ、彼女は魔法陣の外に立ち、トラッド神から魔力を付与された錫杖を振り上げ、詠唱を始める。

「全能なるアルティア、大地の主神たる王よ。アルスよりの選ばれし勇者を我が元へ招きたまえ…我の制約をその贄とし、非力たる我が願いを、聞き届けん・・・!」

そう、まるで嫌な物を見ない様にか、目を硬く瞑りつつその詠唱は続き、その魔法陣の描かれた部屋は、奇妙な風の流れ、重力の異常?そう言うモノが…次第に支配し始めていた。渦を巻きながら、空気は魔法陣の中央に集まり始めていて。やがて、奇妙な、少し大きなモノが落ちる音がする。ヘレナはそれで、片目を恐る恐る開いて行くとそこには。

「・・・なんだ?」

そこにはずぶ濡れで腰を下ろし、辺りを怪訝そうに見回す一人の少年?が、居た。

だが、”それ”を目にした瞬間、ヘレナの中で。何かの、ちょっとテンションの高い効果音は不意に、鳴ってしまった。


3「始めての異性との会話」

祈祷師ヘレナ、彼女自身、ドラッド神のそれの様な体形はしていない、むしろ小さく貧弱、そう言っても良い位で。年頃になり異性を意識する様に成って、次第に?”それ”が恐怖に成っていくのに…それほど時間は掛からなかった。トラッド神の神官を目指したのも結局は、男性との接触を殆どしなくて済むから、だ。そしてそれは直ぐに”願い”を叶えてくれた、彼女にはトラッド神を呼び出す祈祷師の力が発露する事になり。この神殿は他の神殿には居ない、トラッド神を顕現させ得る重大な「祈祷師」を抱える事になり。その環境の中では一目置かれる、特別な地区に成って行ったのだ、が。

そんな彼女の前に居る、実際には自身より年上だ、というその青年は。少なくとも彼女の理解している「男性」とは、ちょっと違う何かとしてあった。彼女の中で、始めて感じる様な、奇妙な胸の高鳴りが収まらない。

錫杖を握りしめつつ、怪訝そうな青年を前に、彼女はようやく、絞り出す様に、言葉を発していく。

「貴方にはあの、この世界を救って頂きたくてあの、大変だとは思うんですがだけど」
「御免何言ってるか解らない…ここは何処だって?神殿?」

名は、一応聞く事は出来た。彼は大池 直也、と言うらしかった。彼女には、今は他の事は考えられなかった。

「は、はい!ここはトラッド神を祭っていて、私はこの場で祈祷師を任されております、ヘレナと申します!ゆ、勇者様・・・」

直也の目にも、彼女は十分魅力的な女性には見えた、が。それ以上に今のそれは、ちょっと挙動不審にさえ感じた。

 

・・・冒頭の、少年誌連載の第一話、程度の長さ以降、ちょっと筆が進まない。

はたして。

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