昨年、NHK紅白歌合戦の出場歌手の中に韓国勢がゼロだったことが話題になった。NHKは「政治と文化は違う」としたが、韓国メディアは、歴史認識をめぐる日本との対立や、竹島(島根県隠岐の島町)の領有権問題の影響で「排除された」と主張した。ただ、純粋に“歌合戦”という舞台に、ダンス、コスチュームなどで極端に複合エンターテインメントを徹底させた「K-POP」はそぐわない。しかもヨソの国の人たち。今年の司会者は紅組が女優の綾瀬はるかさん、白組が人気5人組グループの「嵐」に決まった。果たして、出場歌手に韓国勢は選ばれるのか
屈辱の出場歌手ゼロ
韓国側としてはかなりショックだったのだろう。平成23(2011)年の大みそかの紅白歌合戦には、東方神起、KARA、少女時代の3組が出場していた。彼ら彼女たちは、日本ツアーやCD売り上げなどで24年も前年に勝るとも劣らない音楽活動を展開していたという。が、フタを開けてみれば昨年の韓国からの出場歌手はゼロだった。
韓国紙はいっせいに反発した。特に中央日報は「独島(竹島の韓国名)問題と関連しないだろうか」と疑問を投げかけ、領土問題の影響で「(韓国人歌手は)紅白から排除された」と断定した。
この年の8月、李明博(イ・ミョンバク)大統領(当時)が韓国の大統領として初めて竹島に上陸したことから、日本側の反韓感情は高まった。NHKは「領土問題の影響はなかった」としているから、それはそうなのだろう。ただ、反韓という日本の世論を考えると、韓国の歌手が紅白に出場にしていれば一騒動になったのかもしれない。それとも韓国メディアは紅白出場で日本を“勝った”とでも言いたかったのか
もう音楽じゃない?
政治、外交的背景はともかく、韓国の歌手が昨年の紅白に出場できなかったことを文化的側面からみると、音楽的要素の重要性が著しく低くなっている韓国のK-POPに原因があったのかもしれない。
音楽的要素の重要性の低下は、日本の音楽業界にも同じことが言えるようだ。
「印象的な歌詞とメロディーなどが確実に減る一方で、その代わりに、切れのあるダンスやタレントのコスチュームなど、音楽以外のもので楽しませる複合エンターテインメントになってきている」
「別れのブルース」「青い山脈」などの大ヒット曲の作曲で知られる故服部良一氏の長男で、作曲・編曲家の服部克久氏はこう説明する。グループの中で序列を競う選挙なども、複合エンターテインメントの要素の一つなのだろう。
克久氏は「それは時代の流れで、善しあしではありません」とも指摘する。
一方で韓国では、日本の音楽業界よりもさらに複合エンターテインメント化を徹底させているようだ。K-POPは、米国で流行(はや)っている最新のサウンドを、米国の機材やスタッフらを使って作り、米国で録音することも多いという。そしてさらに、日本人の振付師をつけ、楽曲は基本的にはヒップホップ。歌詞、メロディーは軽視されがちになる。
日韓で同じように音楽的要素の重要性の低下が指摘される中、韓国からわざわざ紅白歌合戦に出場してもらわなくてもいいという考え方もありそうだ
圧力に屈するな!NHK
歴史を紐解(ひもと)けば、日本の演歌のルーツは韓国にあるとか、日本のレコード資本が戦前に朝鮮半島に進出していたため日本のメロディーが韓国の大衆歌謡に根付いたとか、その源流をめぐる議論はしばしば起こる。ちなみに韓国源流説の根拠になっているのは「古賀メロディー」。作曲家の故古賀政男氏が少年期を韓国で過ごしたことが影響を与えたという考え方だ。
いずれにせよ、戦前から戦後にかけ、日本と韓国は歌謡曲というジャンルで密接な関係にあった。大阪出身の服部良一氏も戦前の韓国大衆歌謡に得意のポップス調のアレンジを加え、現地で新風を起こしていたとされる。
そうした中で昭和26年から始まったNHK紅白歌合戦。第1回で紅組のトップバッターを務めた菅原都々子(つづこ)さんは、第7回(昭和31年)で「連絡船の唄」を歌った。自身の持ち歌だが、1937(昭和12)年に朝鮮半島で大ヒットした「連絡船は出て行く」に日本語の詞をつけたものだった。そして、桂銀淑(ケイ・ウンスク)さん、キム・ヨンジャさんら日本を拠点に活躍した韓国人歌手は紅白に何度も出場している。
果たして今年の大みそかはどうなるのか。歌による日韓親善に異を唱えるつもりはないが、NHKにはその選考にあたって、いろいろな圧力に屈しないでもらいたい。
屈辱の出場歌手ゼロ
韓国側としてはかなりショックだったのだろう。平成23(2011)年の大みそかの紅白歌合戦には、東方神起、KARA、少女時代の3組が出場していた。彼ら彼女たちは、日本ツアーやCD売り上げなどで24年も前年に勝るとも劣らない音楽活動を展開していたという。が、フタを開けてみれば昨年の韓国からの出場歌手はゼロだった。
韓国紙はいっせいに反発した。特に中央日報は「独島(竹島の韓国名)問題と関連しないだろうか」と疑問を投げかけ、領土問題の影響で「(韓国人歌手は)紅白から排除された」と断定した。
この年の8月、李明博(イ・ミョンバク)大統領(当時)が韓国の大統領として初めて竹島に上陸したことから、日本側の反韓感情は高まった。NHKは「領土問題の影響はなかった」としているから、それはそうなのだろう。ただ、反韓という日本の世論を考えると、韓国の歌手が紅白に出場にしていれば一騒動になったのかもしれない。それとも韓国メディアは紅白出場で日本を“勝った”とでも言いたかったのか
もう音楽じゃない?
政治、外交的背景はともかく、韓国の歌手が昨年の紅白に出場できなかったことを文化的側面からみると、音楽的要素の重要性が著しく低くなっている韓国のK-POPに原因があったのかもしれない。
音楽的要素の重要性の低下は、日本の音楽業界にも同じことが言えるようだ。
「印象的な歌詞とメロディーなどが確実に減る一方で、その代わりに、切れのあるダンスやタレントのコスチュームなど、音楽以外のもので楽しませる複合エンターテインメントになってきている」
「別れのブルース」「青い山脈」などの大ヒット曲の作曲で知られる故服部良一氏の長男で、作曲・編曲家の服部克久氏はこう説明する。グループの中で序列を競う選挙なども、複合エンターテインメントの要素の一つなのだろう。
克久氏は「それは時代の流れで、善しあしではありません」とも指摘する。
一方で韓国では、日本の音楽業界よりもさらに複合エンターテインメント化を徹底させているようだ。K-POPは、米国で流行(はや)っている最新のサウンドを、米国の機材やスタッフらを使って作り、米国で録音することも多いという。そしてさらに、日本人の振付師をつけ、楽曲は基本的にはヒップホップ。歌詞、メロディーは軽視されがちになる。
日韓で同じように音楽的要素の重要性の低下が指摘される中、韓国からわざわざ紅白歌合戦に出場してもらわなくてもいいという考え方もありそうだ
圧力に屈するな!NHK
歴史を紐解(ひもと)けば、日本の演歌のルーツは韓国にあるとか、日本のレコード資本が戦前に朝鮮半島に進出していたため日本のメロディーが韓国の大衆歌謡に根付いたとか、その源流をめぐる議論はしばしば起こる。ちなみに韓国源流説の根拠になっているのは「古賀メロディー」。作曲家の故古賀政男氏が少年期を韓国で過ごしたことが影響を与えたという考え方だ。
いずれにせよ、戦前から戦後にかけ、日本と韓国は歌謡曲というジャンルで密接な関係にあった。大阪出身の服部良一氏も戦前の韓国大衆歌謡に得意のポップス調のアレンジを加え、現地で新風を起こしていたとされる。
そうした中で昭和26年から始まったNHK紅白歌合戦。第1回で紅組のトップバッターを務めた菅原都々子(つづこ)さんは、第7回(昭和31年)で「連絡船の唄」を歌った。自身の持ち歌だが、1937(昭和12)年に朝鮮半島で大ヒットした「連絡船は出て行く」に日本語の詞をつけたものだった。そして、桂銀淑(ケイ・ウンスク)さん、キム・ヨンジャさんら日本を拠点に活躍した韓国人歌手は紅白に何度も出場している。
果たして今年の大みそかはどうなるのか。歌による日韓親善に異を唱えるつもりはないが、NHKにはその選考にあたって、いろいろな圧力に屈しないでもらいたい。