東京への五輪招致をめぐる中国での反応が、どちらかといえば低調だというのは、日中の現状をみれば仕方ない。ただ、賛否いずれの論者とも、頭から離れない一点があったとすれば、東京での五輪がこれで2度目ということではないか。
世界の経済大国に躍り出た中国が、北京で初の五輪開催にこぎつけたときには、建国から実に60年近い時間がたっていた。仮に中国が引き続き一定の成長と安定を維持し、五輪種目で金メダルの量産国であり続けたとしても、2度目の開催がいつのことになるのかは予想がつかない。北京五輪からの時間的な間隔や、20年の東京五輪を含めた開催地域のバランスも考えるなら、夏季五輪の新たな招致を中国指導部が決断するまでには、かなりの時間を要するだろう。
ところで、アジアで開催された夏季五輪を振り返ると、日本、韓国、中国とも、経済成長の勢いを示す国家イベントという側面が強かった。今回の東京招致でも「3兆円」の経済効果が語られ、五輪特需を見込んだ対日輸出の伸びを期待する中国での論評も早々と流れている。北京五輪の例を振り返ると、02年から08年までの経済効果は当時のレートで15兆円相当とも試算され、北京市の国内総生産(GDP)の年平均成長率が、五輪特需により、中国政府の5カ年計画が掲げた目標より0.8%上積みされたともいわれる。実際、北京でのインフラ整備や住宅開発をみると、五輪の前後で市内は一変した。
五輪終了後には相対的な景気の落ち込みが懸念されるが、北京の場合はあのリーマン・ショックと重なり、中国政府が景気刺激策として4兆元(約56兆円)の財政出動に踏み切ったことで、五輪特需後の落ち込みが厳密にどの程度だったかは算定が難しくなってしまった。
中国経済を長い目でみたとき、五輪特需に続いたこの巨額の財政出動は、住宅やインフラ投資に依存した経済モデルを固定化させてしまったようにみえる。「リコノミクス」と呼ばれる李克強首相の経済政策ですら、当初の触れ込みだった成長速度の抑制が、7月に発表された「7%成長維持」などによって再び上ぶれしそうな気配だ。
五輪のような大型イベントは、終わったあとの出口戦略が必要になる。北京がどうだったかはさておき、2度目の五輪開催となる東京には、その鮮やかな戦略を期待したい
世界の経済大国に躍り出た中国が、北京で初の五輪開催にこぎつけたときには、建国から実に60年近い時間がたっていた。仮に中国が引き続き一定の成長と安定を維持し、五輪種目で金メダルの量産国であり続けたとしても、2度目の開催がいつのことになるのかは予想がつかない。北京五輪からの時間的な間隔や、20年の東京五輪を含めた開催地域のバランスも考えるなら、夏季五輪の新たな招致を中国指導部が決断するまでには、かなりの時間を要するだろう。
ところで、アジアで開催された夏季五輪を振り返ると、日本、韓国、中国とも、経済成長の勢いを示す国家イベントという側面が強かった。今回の東京招致でも「3兆円」の経済効果が語られ、五輪特需を見込んだ対日輸出の伸びを期待する中国での論評も早々と流れている。北京五輪の例を振り返ると、02年から08年までの経済効果は当時のレートで15兆円相当とも試算され、北京市の国内総生産(GDP)の年平均成長率が、五輪特需により、中国政府の5カ年計画が掲げた目標より0.8%上積みされたともいわれる。実際、北京でのインフラ整備や住宅開発をみると、五輪の前後で市内は一変した。
五輪終了後には相対的な景気の落ち込みが懸念されるが、北京の場合はあのリーマン・ショックと重なり、中国政府が景気刺激策として4兆元(約56兆円)の財政出動に踏み切ったことで、五輪特需後の落ち込みが厳密にどの程度だったかは算定が難しくなってしまった。
中国経済を長い目でみたとき、五輪特需に続いたこの巨額の財政出動は、住宅やインフラ投資に依存した経済モデルを固定化させてしまったようにみえる。「リコノミクス」と呼ばれる李克強首相の経済政策ですら、当初の触れ込みだった成長速度の抑制が、7月に発表された「7%成長維持」などによって再び上ぶれしそうな気配だ。
五輪のような大型イベントは、終わったあとの出口戦略が必要になる。北京がどうだったかはさておき、2度目の五輪開催となる東京には、その鮮やかな戦略を期待したい