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孫子 兵勢第五

2007-04-30 08:06:58 | 占い
兵勢第五

兵勢は兵の勢いなり、勢とは自然の勢いにて、
このように仕掛ければ必ずこのようになると云うことなり、
例えば水なき山の頂に瀑布をこしらえようと、
筧にて平地にある水を取り、流れ下る勢いにて最前水の
ありし地より高きところへ上る、其のところより又
下りの勢いにて上るようにして、段々に勢を取れば、
水なき山頂にも至るべし、故にこの篇の内にも水の
流れる勢にて大石を流し、又丸き石を千仭の山より転がせば
とどむること出来ぬことを喩えとする。また、太原の
劉寅は猛獣将縛必伏形、鷙鳥将撃、必劍翼、将以用其勢然也と
云えり猛き獣、又は鷲鷹などが物を取ろうとする時は必ず
形をかがめ翼をすぼめるは、奮撃の勢をなさん為なりと云うこと。
兵の勢も又かくの如く、奇正の法によく鍛錬して、うつべき圖に
中りて発すれば、弱を転じて強となし、小勢以って多勢を挫くこと、
尋常の計らいに超えたり、奇正の法すなわち勢をなす所以にして
陣法の骨髄なり、故にこの篇みな奇正の理を以って兵の勢を説けり、
劉寅また、世の孫子をよく読まざるもの、其の書に陣法を説かざる
こと缼けたる所なりと云うは、この篇乃ち陣法の要旨なることを
知らず、誠に孔明が八陣の圖と合せ考えれば、千万世之上に於いて
古人の秘せし妙所ことごとく是を得べしと云えり、意を注ぐこと
なり、又上の篇を軍形篇とし、この篇を兵勢篇とする。
形は総體を以って云て、勢は発するところにあるなり、故に
荀悦は、勢者隨時進退之宜也と云い、施子美は
臨時制敵之勢也と云えり。

孫子 兵勢第五   漢籍国字開全書より
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