印ニューデリーで強姦や女性への暴力に対する抗議集会に参加する人々=2021年8月/Anushree Fadnavis/Reuters© CNN.co.jp
(CNN) インド中部マディヤプラデシュ州の高裁は、夫に「不自然なセックス」を強要されたとして提訴した女性の訴えを退ける判決を言い渡した。
インドでは婚姻関係にある夫が妻に性行為を強要した場合でも、妻が18歳以上であれば犯罪とはみなされない。今回の判決では、この法律の抜け穴が浮き彫りになった。
法改正を求める運動は何年も前から続いているが、国家が介入すればインドの結婚の伝統が破壊されかねないと主張する保守層の反対に阻まれているという。
法改正をめぐってはデリー高裁の2022年の判決で判断が分かれ、インド最高裁で上訴審が続いている。
マディヤプラデシュ州高裁の判決によると、原告の女性は結婚後間もない2019年に夫が自宅へやって来て「不自然なセックス」を強要したとして、インド刑法377条に基づき警察に通報した。
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同条項では、同意のない「男性、女性、あるいは動物との自然の摂理に反する性交」を禁止している。2018年に最高裁が同性愛を違法としないとする判決を言い渡すまで、同条項は同意に基づく同性カップルの訴追に利用されていた。
裁判書面によると、原告の女性は問題の行為が繰り返されたと主張し、夫からはもしこのことを口外すれば離婚すると脅されたと訴えている。しかし女性は自分の母親に相談し、促されて2022年に提訴した。
裁判の中で夫側は、婚姻関係にある夫婦間の「不自然なセックス」は犯罪ではないと反論した。
判決では、夫婦間の不同意性交は罪に問わないとする免除規定に基づき、夫が妻に性交を強要しても犯罪にはならないと判断した。この規定は英国の植民地時代の遺物として、インド独立後も70年以上残り続けている。
女性はまた、「持参金の要求に応じなかったという理由で」義理の両親からも精神的、肉体的嫌がらせを受けたと訴えている。こちらの裁判は今も係争中。
今回の判決は、暴力や差別に脅かされ続けるインドの女性の処遇をめぐり、改めて疑問を突きつけた。
インドでは女性の保護を目的とする法律が制定されるなど改善の動きはある。しかし夫婦間の不同意性交禁止に対しては二の足を踏む状況の中で、女性が適切に保護されない状況が続いているという。
夫婦間の不同意性交を禁止するよう訴えている弁護士のインディラ・ジャイシン氏は、もしも例外規定が撤廃されれば「多くの女性が恩恵を受ける」と話し、裁判所は緊急にこの問題に対応する必要があると主張。「この犯罪は目に見えない。現在、女性はどこへも行く所がない」と訴えた。
インド政府が2019~21年に実施した調査によると、調査対象の15~49歳の女性10万人あまりのうち17.6%は、自分が望まないセックスでも夫を拒むことはできないと回答した。拒まれた夫が妻をたたいたり殴ったりすることは正当化できるとする回答は11%に上った。
既婚女性が警察に被害を届け出ようとしても、多くの場合は相手にされない実態も、22年の調査で浮かび上がった。
ムンバイ市内の公立病院3病院の2008~17年の記録を調べたところ、不同意性交の被害者1664人について、警察に記録が残る事件は1件もなかった。このうち少なくとも18人の女性は夫婦間の不同意性交を通報。
この中には元パートナーや元夫にレイプされたと訴える10人が含まれる。
しかし女性4人は、夫婦間の不同意性交は犯罪ではないことから警察には何もできないと説明されたという。
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