米エネルギー省が、新型コロナウイルスの起源に関し、中国・武漢のウイルス研究所から流出した可能性が高いという見解を出したことが分かった。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)が26日、スクープとして報じた。米政府内では発生源について一致した見解は出ていないが、報道を受けて、中国に情報開示を要求する動きが始まっている。

WSJによると、エネルギー省の見解は、ホワイトハウスや米議会の主要議員に提出された報告書から明らかになった。

米エネルギー省は、原子力をはじめとするエネルギー政策を担当するほか、高度な生物学的研究を行う研究所も所管する。

新型コロナの起源をめぐっては、「武漢のウイルス研究所から流出した説」と、「武漢の生鮮市場で動物を介して人間に感染した説」がある。

ウイルス研究所を起源とする説は、米連邦捜査局(FBI)や、共和党の有力議員が支持していた。

マイク・マッコール下院外交委員長(共和党)と同党スタッフは2021年8月、「武漢市の研究所から流出したことを示す多くの証拠がある」とする報告書を発表したが、米国内での評価は分かれる。

現に、米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は27日の記者会見で、「米政府として一致した見解は出ていない」と述べた。

今回の報道を受け、米中のつばぜり合いが早速始まっている。

中国外務省の毛寧副報道局長は27日、「ウイルス起源のことを政治問題化するべきではない」と反発し、「研究所から漏れた可能性は極めて低いというのが、世界保健機関(WHO)と中国の調査結果だ。国際社会でも認められている」と主張した。

これに対し、ニコラス・バーンズ駐中国米大使は同日、「中国がより正直になるように要求していく」と、中国政府に情報開示を求めていく考えを示した。

WSJの記事や、報道のタイミングをどうみるべきか。

新型コロナの起源について、夕刊フジで何度も寄稿してきたノンフィクション作家、河添恵子氏は「武漢の研究所が発生源とする説が補強された。このタイミングで報じられたのは、ウクライナ侵略で和平提案をするなどロシアと急接近する中国に『いい役回りはさせない』とする動きが米国内にあるからだろう。昨年の中間選挙で、中国に厳しい共和党が下院の過半数を獲得したことも関係している。米中間の緊張感が高まるなか、コロナの発生源の問題が新たな火種となり、共和党を中心に中国を追及していく動きが強まっていくのではないか」と語った。