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札幌・円山生活日記

「マイ・ホーム」の在り方を見つめ直す美術展!~「札幌美術展 マイ・ホーム(仮)」@札幌芸術の森美術館~

本日は「札幌芸術の森美術館」で開催中の「札幌美術展 マイ・ホーム(仮)」の鑑賞です。ひとつのテーマに即して複数名の美術家を紹介してきた「札幌美術展」のシリーズで今回は「マイ・ホーム」を切り口に北海道・札幌ゆかりの多彩なジャンルのアーティスト7人の作品展です。

「札幌芸術の森美術館」入口。地下鉄南北線「真駒内駅」から中央バス(空沼線・滝野線)に乗り「芸術の森入口」で下車し徒歩約5分です。
『ホーム(home)には、住宅、家庭、故郷、発祥地、本拠地などの意味があります。本来あるべき場所、 頼りとなるものというニュアンスを含む言葉です。
昨今では、パンデミック、地域の過疎化、都市開発、移民問題、民族紛争など、ホームを揺るがしかねない出来事が相次いでいます。物質的もしくは精神的な「よすが」であるはずのホームは、思いがけず頼りなかったり、移ろいやすかったりするのかもしれません。  
本展では、暮らし、制度、ルーツ、コミュニティーなど、ホームを形づくる様々な要素をテーマとした作品を紹介します。私たちが「仮に」身を置いているだけなのかもしれない、頼りなくも愛しいマイ・ホーム。 北海道にゆかりのある作家7人の創作を通じて、そのあり方を見つめ直します。』
会期は1月18日(土)~3月9日(日)。会期末で漸くの訪問となりました。会場内は写真撮影OKです。
先ずは札幌生まれ市内在住の画家・アーティスト小林知世氏のコーナー。氏の作品は油彩やステイニング(非常に薄く溶いた水彩絵具に墨や雲母を混ぜたものを 複数回にわたって綿布に染み込ませ滲ませる描き方)の技法で、人が気にも留めないような風景・日用品・食べ物などを白やグレーを基調とした淡い色彩で描いたもの。
小林知世《untitled(wistにあてて)》 2024年 油彩、ジェッソ、鉛筆、雲母、綿布、木枠。
小林知世《untitled》 2025年 油彩、ジェッソ、鉛筆、雲母、インク、綿布、木枠。展示コーナーは作品の雰囲気そのまま。「マイ・ホーム」・・とは『寛ぎの空間』と感じます。

写真家・南阿沙美氏の展示コーナー。ホームレス状態の人の生活、友人とその息子の2人の関係性などのポートレート(肖像)の連作が展示されています。
氏の短大時代の友人とその息子を長年にわたって撮影したシリーズ《マニ親子》。
ブルーシートで作られたテント内部には透過性のある布にプリントされた写真がシートに縫い付けられています。
南阿沙美《写真を見せてくれるとみさん》《家族写真》2024年、インクジェット、紙。ここも「マイ・ホーム」・・安らぎは家族の思い出でしょうか。


蛍光色を用いた鮮やかな色層と透明メディウムを繰り返し重ね、そこに印刷物やラメ、金箔などを織り交ぜた絵画作品を主として制作する武田浩志氏のコーナー 。

壁一面に及ぶ絵画と映像を組み合わせて最新かつ過去最大の作品《portrait 293》。映像は絵画の制作過程をレイヤーごとに撮影しモティーフを変形させたり過程を逆再生したりするものとか。

武田浩志《神殿‐tree-#010》2014年、ミクストメディア。

釧路生まれの彫刻家・米坂ヒデノリ氏のコーナー。思索的な彫刻を制作し続け2016年4月死去、本展出品作家で唯一の物故作家です。「札幌芸術の森野外美術館」にも同氏の作品《コタンクルカムイの詩》が展示されています。
米坂ヒデノリ《さようなら》1979年 木(カツラ、イチイ他)。 死者の船出と見送る人々。氏は新天地を求めて北海道へ移住した先人たち、とりわけ帰郷が叶わずに北海道で逝った人々の慰霊に心を砕いたそうです。

長坂有希氏のコーナー。氏はフィールドワークを通じて学んだ歴史や知識に、自身の体験や感情を織り交ぜて物語を紡ぐ「ストーリーテリング」という手法を用いて制作する作家。本展出品作は大英博物館で見たライオンの彫刻がかつて見ていたであろう風景をたどる作品。

田中マリナ氏のコーナー。制作に適した生活を追求し東京と故郷である札幌との二拠点生活を送っているという氏の作品は「都会」と「自然」の二つのテーマで構成されています。
田中マリナ《ある夜》2024年 アクリル絵具、カンヴァス。「都会」の中心的な作品。
田中マリナ《あなたの目にうつるのは》2024年 アクリル絵具、カンヴァス。人物の顔を縦断する十字の木枠の影はカンヴァスに描かれたもの。
「都会」の作品の向こうは「自然」の作品。
田中マリナ《朝霧の湖畔》2024年 アクリル絵具、カンヴァス。周囲は巨大な壁画、森のかけら(杉の木)、アニメーションで構成される《北海道の森》。物憂げな「都会」も、心休まる「自然」も、ともに「マイ・ホーム」。

最後は日常の何気ない瞬間を伝統的な日本画の技法で描いている葛西由香氏のコーナー。

葛西由香《7日目の創造》2019年 紙本彩色、水干絵具、墨。洗い物を天から見るように俯瞰します。

葛西由香《あやとりとあやふや》2025年 紙本彩色、水干絵具。

葛西由香《無事》 2025年 紙本彩色、水干絵具。ベランダから見えるマンション群、植木鉢、じょうろ、カラスなど。代わり映えしないがかけがえのない日常も「マイ・ホーム」ならではということでしょう。以上で鑑賞終了。多彩なジャンルのアーティスト7人の描く「マイ・ホーム」作品。見応えありました。ありがとうございます。

なお正面入口受付前のB展示室では「生誕120年 入門・本郷新-彫刻家が遺した愛-展」を開催中です。
「札幌美術展 マイ・ホーム(仮)」
会期:2025年1月18日(土曜日)~3月9日(日曜日)
時間:午前9時45分~午後5時(入場は閉館の30分前まで)
会場:札幌芸術の森美術館
観覧料:一般1,000(800)円、高校・大学生600(480)円、小・中学生300(240)円  ※(  )内は前売または20名以上の団体料金 ※小学生未満無料 ※65歳以上の方は当日料金が800(団体640)円になります。年齢の分かるものをご提示ください。 ※障がい者手帳をお持ちの方は、当日窓口でご提示いただくと、ご本人と付き添いの方1名が無料になります。
休館日:月曜休館(2月24日は開館し、翌2月25日は休館)
主催:札幌芸術の森美術館(札幌市芸術文化財団)
後援:札幌市、札幌市教育委員会
(2025.3.6)


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