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札幌・円山生活日記

特別展「New Eyes 視線のはなし」~「本郷新記念札幌彫刻美術館」~

札幌市中央区宮の森の閑静な住宅街のなかにある小さな美術館「本郷新記念札幌彫刻美術館」。日本を代表する札幌出身の彫刻家・本郷新(1905-1980)の野外彫刻の石膏原型や本郷が残した膨大なデッサン等の資料を含む1800点あまりを収蔵します。同美術館では現在シリーズ展「New Eyes(ニュー・アイズ)視線のはなし」を開催中です。

今日は週末恒例の「円山公園」から「北海道神宮」への散策の足を延ばして「本郷新記念札幌彫刻美術館」で特別展「New Eyes 視線のはなし」鑑賞です。先般「さっぽろ雪像彫刻展2023」で同美術館に来た際にこの展覧会の開催を知ったのですが時間の関係で鑑賞することが出来ませんでした。展覧会は昨年12月24日(土)から開催されていて4月16日(日)までの会期なので後日の再訪とし本日でかけてきました。アクセスは今回も地下鉄東西線「西28丁目駅」から出ているJR北海道バス山の手線〈循環西20〉に乗車し「彫刻美術館入口」で下車、「宮の森フランセス教会」の前より歩いてまいりました(地図)。 

「本郷新記念札幌彫刻美術館」。
前庭には「さっぽろ雪像彫刻展2023」の崩れた雪像が残っています。

本館内に入ったところ。
「展覧会概要」表示。なにやら興味をそそる展覧会のようです。
“「New Eyes(ニュー・アイズ)」は本郷新記念札幌彫刻美術館のシリーズ展です。今日的なテーマをひとつ定め、それに即しつつ独特な思考と際立つ表現の美術家を数名ほど選出し、ここに紹介するものです。5年ぶり4回目となる今回は「視線」をテーマとしました。
 なにやらいわくありげな画中の人物たちが交わす視線からはドラマが感じられます。犬の像が放つ無垢で真っ直ぐな眼差しは、つまるところ主(あるじ)から注がれる愛情の深さを物語っています。
 ある画家はささやかな日常にこそひときわ大切に目を配り、ある彫刻家は内を見つめ続ける彫像に自己を重ねます。
 触れ、重なり、逸らし逸らされ、他者へ自己へと複雑に交錯する視線—そんな視線のさまざまを可視化させ、眼前に提示してくれる作家もいます。
 世界的感染症の拡大を受けて疎遠となった、視線の届く範囲でのコミュニケーション。本展は、そのあり方についても改めて考える契機となることでしょう。”

 
会場最初の作品は岩永啓司《静かな翳》2010年。

展覧会名の「New Eyes 視線のはなし」から視線に注目して鑑賞していきます。

まず岩永啓司氏の作品コーナーへ。
内向の視線ー岩永啓司の場合。長くなりますが読ませる紹介なので掲載します。
“欅、松、榛、桜、桂、黄檗、胡桃なとさまさまな樹種に対峙する彫刻家。そのほとんとが製材されたものてはなく、倒木や廃材など縁あって出合った木たちであるから、硬さや密度、性向、乾燥度合いなど、岩永は一々これらの違いに向き合って造形してきたのである。
 今回は、本展の最初にご覧頂いた約3メートルに及ふ巨大な《静かな翳》(No.10)を含め4体の男性の姿の木彫像を出品。視線をテーマにする本展にあって、内、3点もの像が目を閉し、視線を放たない。唯一まぶたを開く《静かな聲》(No.11)にしても、そこに瞳はなく、明瞭な視線は認められない。
 まふたが閉じられた時、たちまち視線は失われるのだろうか。岩永の作品を見ていると、外に向けて放たれるべき視線が、目をつむることて翻って己に向き、閉じる時間に応じて、思いも募り、そうして強度を増したベクトルが己の内奐に突き刺さってくるようなある種の痛みを共感する。
 とりわけ《黒い境界》(No.12)は、面を下げ両腕で環を作り、己の世界に閉じこもる。指先同士は融合し、けっして解かれることはなく、腕からは袖のようなものか生え、外界からの侵入を許さない。内向性の極めて高い作品てある。そんな膨満した思いが《静かな聲》ては軽く開いた唇から漏れ出ているのかもしれない。”


こちらのコーナーで三体の作品が展示されています。
《黒い境界》2017年。
その視線の先には《静かな翳》。
《静かな聲》2012年。
“唯一まぶたを開く《静かな聲》(No.11)にしても、そこに瞳はなく、明瞭な視線は認められない”とする表情。
《HORIZON》2022年。
その瞼は閉じられています。視線はありません。

佐藤一明《見てくる犬》2021年の犬の視線。
佐藤一明《見てくる犬》2021年。

国松紗智子《Line of Shight》2022年。壁4面に描かれた作品。


小林知世《untited》。
「ぼやけて何かわからない情景や意味としては壊れている文章も、観察し断
片を集めていくとそれぞれのものとは別の気配が星座の様に浮かんてくるとい
う感覚があります。このような感覚を大切に生活の中で見つけた場面を組み
合わせ作品を作っています」
(作者の制作姿勢)。

小林知世《untited》。

野澤桐子氏の作品。
視線のドラマー野澤桐子の場合。こちらの作品群も楽しそうです。
‟皮革やベルベット生地、光沢ある床板などの写実表現、細密描写に目を奪われるが、この画家の作品の最たる特徴はなんと言っても、いわくあリげな風
貌の人物たち。彼らが発する視線は複雑に交錯し、あるいは食い違い、それ
がまた無表情の中で行われているため、絵解きの楽しみが増す。
 例えば、《Red berry woods》(No.2)。ソフアに深々と身を沈める初老の男と階段を降りてくる若い女のミスマッチ、両者の相まみえない視線から、物語の展開は読みにくく、不穏な空気を感知るじる。初老の男は《Who is the joker?》(No.1)にも登場し、ここでは、手札を見つめるその対面で女が自身の 手札を私たちに明かし、勝負の行方を教えている。しかも、この賭けての敗北は死を意味するのか、おそらくいかさまが行われていることなぞつゆ知らぬ男に既に銃口が向けられている。いや、しかし大抵こういう場面は形勢の逆転があるはずであり、となるとこの後、からくリを見破った男が彼らに目に物見せる結末などうなるのか。いやいや、この勝負を俯瞰してどこかで眺める第三者の存在も考え得る。男の肩に乗る猿がもしや・・・?とさまざま物語が湧いてくる。
 ほかにも、東日本大震災後に描いたこちらを見据える男の絵(No.3)、サンタ
クロースの一服(No.6)、自身のアンドロイドを作った男(No.6)など絵解きの時
間が去来する。”


《Who is the joker?》2002年。
銃口が向けられたまま手札を見つめる初老の男と手札を明かす女。
女の視線。

《青の民の青年》2016年。
青年の視線。
《12月26日》2019年(部分)。「にがい酒」で一服するサンタクロースだそうです。
《Japanese 2011》2012年(部分)。
《未知との遭遇》2022年。
《Red berry woods》2006年。
“ソフアに深々と身を沈める初老の男と階段を降りてくる若い女のミスマッチ、両者の相まみえない視線”。
若い女の視線。かなり想像力を掻き立てられる作品群でした。

本郷新氏がアトリエ・ギャラリーとして建てた邸宅をいかした「記念館」へ。
1階東側の展示室。
2階西側の展示室。応接室の雰囲気が残されています。
2階の大窓に面した展示室。「円山」が臨めます。以上で展覧会の鑑賞終了。

「北海道神宮」。「本郷新記念札幌彫刻美術館」の開館は午前10時なので「円山公園」と「北海道神宮」を散策し「北海道神宮」を通り抜けていきます。
「神宮茶屋」。
「神宮茶屋」裏のリススポットを覗くと・・。
本日もリスがお出ましのようです。
エゾリスです。
また来たね!と微笑むエゾリス。
なにやらお腹のあたりが気になるのでしょうか?

もう1匹のリスが合流し・・。
追いかけ合いをしながら場所を移動していきます。

こちらの洞で仲良くツーショットでした!本日も見応えのある展覧会「New Eyes 視線のはなし」も含め充実の散策でした。大変結構でした。ありがとうございます。

特別展「New Eyes 視線のはなし」
会期;2022年12月24日(土)~2023年4月16日(日)
休館日:月曜日(祝日は開館し、翌火曜休館)
会場:本郷新記念札幌彫刻美術館 本館
観覧料;一般500円(400円)、高大生300円(250円)、中学生以下無料
※( )内は10名以上の団体料金
※65歳以上の方は当日料金が400円(団体320)円になります。年齢の分かるものをご呈示ください。主催等主 催:本郷新記念札幌彫刻美術館(札幌市芸術文化財団)
後 援:北海道、札幌市、札幌市教育委員会
(2023.2.8)

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