視覚をあざむくトリックや現実にはありえないイリュージョンの世界の美術展「特別展 トリック×イリュージョン!」。古くから人々に親しまれてきた「だまし絵」など様々な手法による錯覚や幻想的イメージにより見る者の目を惑わす約70点を展示します。現在「北海道立近代美術館」で開催中です。
今日は「北海道立近代美術館」で「特別展 トリック×イリュージョン!」の鑑賞です。小学校の美術鑑賞ツアーも含め多くの鑑賞者で賑わっていました。会期は4月22日(土)から6月11日(日)までの予定です。
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「北海道立近代美術館」東門。
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「特別展 トリック×イリュージョン!」のチラシ。
“「だまし絵」に代表されるような、見る者の目を惑わす作品は、古今東西で制作され、多くの人々に親しまれてきました。視覚をあざむくトリックや、現実にはありえないイリュージョンの世界には、鑑賞者を「!」とさせる驚きや面白さがあり、私たちの心をとらえてやみません。
美術家たちは、人間の視覚の不確かさや、無意識のうちに抱く先入観と固定観念を逆手に取ることにより、こうした表現を生み出しました。時にユーモラスに、また時に「見るということは何か」を問いながら、多彩なしかけを作品に込めてきたのです。
本展では、様々な手法によって作られた錯覚や幻想的イメージに着目し、国内外の作家による絵画や彫刻、映像、メディア・アートなど約70点をご紹介します。不思議で楽しい作品の数々をご覧ください。”
美術家たちは、人間の視覚の不確かさや、無意識のうちに抱く先入観と固定観念を逆手に取ることにより、こうした表現を生み出しました。時にユーモラスに、また時に「見るということは何か」を問いながら、多彩なしかけを作品に込めてきたのです。
本展では、様々な手法によって作られた錯覚や幻想的イメージに着目し、国内外の作家による絵画や彫刻、映像、メディア・アートなど約70点をご紹介します。不思議で楽しい作品の数々をご覧ください。”
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「北海道立近代美術館」ロビー。小学生の美術鑑賞会が開催されていました。これから児童の皆さんとともにトリック×イリュージョン美術の鑑賞です。
【第1章「リアル」をめぐって】
展示会は4つのセクションに分かれていて【第1章「リアルをめぐって」】では精緻に描かれた写真のような超写実作品が集められています。なお展示会場内は最後の4作品を除いて撮影NGです。ただ有名作品が多いようでネットで検索すると割合と画像が出てきたので紹介に拝借しています。
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最初に展示されていたのは日本の写実絵画を代表する巨匠・野田弘志の作品。《TOKIJIKU(非時)VII Pyramid》1992年。「野田弘志-真理のリアリズム」 の感動再び!というところでしょうか。
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ポスター等にも使用されている上田薫の「なま卵シリーズ」の一つ《なま玉子 B 》1976年。作家は卵を描く際には時に200個もの卵を実際に割って写真に撮影し、その何枚もの写真を組み合わせて再構成するそうです。
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上田氏のもう一つの展示作品《ジュエリーにスプーンC》1990年。スプーンに映し出された空間がリアルです。
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印象的だったのはこちら。深堀隆介《金魚酒 命名 鈴夏》 2021年。
最初は3Dの立体写実アートかと思ったのですが解説を読むと、器の中に樹脂を流し込み固まったその表面にアクリル絵具で金魚の姿の一部を描く、さらにその上に樹脂を重ね金魚をさらに描いていく。この作業を繰り返すことにより立体的な金魚が表現されているそうです。作家によれば「2・5Dペインティング」の技法だそうです。奥が深いです。
【第2章オプ・アート】
第2章は「オプ・アート」。「オプティカル・アート Optical Art=視覚的・光学的美術の略)」は錯視の効果を応用した抽象絵画で、幾何学パターンと色彩の組み合わせにより生み出される動きや光を感じる作品類です。一昨年の12月に開催された所蔵品展で鑑賞した作品が展示されていました。
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ヴィクトル・ヴァザルリ《ゲシュタルト・ゼルド》1976年。
【第3章 交錯するイメージ】
第3章では古くから有名なトリックアートの数々とともに、美術の古典から近代に対する先入観や固定観念を根底からくつがえすようなアートトリック作品が展示されています。.
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だまし絵として有名すぎるマウリッツ・コルネリス・エッシャー《滝》1961年。3次元の現実ではありえない建築物を描いた作品です。
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シュールレアリスムの巨匠・ルネ・マグリットの作品《マグリットの落とし子たち》(マ・メール・ロワ(マザー・グース) 刊行:1968年)。視覚的な錯覚が楽しめます。
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同じくシュールな作品。サルバドール・ダリ《ダンス(ロックンロール)》1957年。
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人体を寄せ集めて人型に模した作品。歌川国芳《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》弘化4~嘉永5年。「よせ絵」「はめ絵」とも呼ぶそうです。
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続いては古典的な名作の認識や価値観を一変させる情緒的なだまし絵の数々。その一つ福田美蘭《湖畔》1993年。黒田清輝が描いた「湖畔」という作品の構図を変えることで違う作品として生まれ変わらせ、新たな価値と元作への再評価を狙う作品だそうです。
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同じく福田氏の作品《F100号の肖像画》2000年。
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そして福田美蘭氏の父で「日本のエッシャー」とも称されるというグラフィックデザイナー福田繁雄の『ランチはヘルメットをかぶって』1987年。こちらを含め最後の4作品は写真撮影OKです。
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スレンレスの固まりのように見えるのはスプーンとフォークを積み重ねたものです。
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その固まりを照明で照らすとオートバイのシルエットが映し出されます。何とも緻密に計算されたアートでした。
【第4章 デジタル・トリック】
第4章ではトリックアートの世界に最近のデジタル技術を駆使した作品。会場には主に参加型の作品を制作するというアートユニット「フジ森」の3点が展示されています。
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フジ森《花びんと鳥かご》2014年。一輪の花がいけられた花びんに光を当てるとかごの中で飛ぶ鳥が現れるという作品。
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スリットの入った縞模様の花に光を当てることで飛ぶ鳥のように見えるというスリットアニメーションの原理を応用した作品だそうです。
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フジ森《タンポポ》2022年。
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参加型の作品で白いシートの上で動くとタンポポの綿毛が舞う様子が画面に表現されるという作品。
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たくさんの小学生の皆さんが参加していました。![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/1e/0cdfb83164e3203e3bb5afe7ba8ef3cc.jpg)
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同じく参加型の作品。《手回しオルガン》2019年。空中で手回しの動作をすると画像が動きます。仲々楽しい作品群でした。
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ロビーに展示されていたルネ・マグリットの作品《マグリットの落とし子たち》を使用したフォトスポット。作品の中の入って楽しむことができます。
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以上で「特別展 トリック×イリュージョン!」鑑賞終了です。既にどこかで見た作品もありましたが初見のものも多く十分に楽しませていただきました。驚きと感嘆(!!)のある美術展でした。ありがとうございました。
「特別展 トリック×イリュージョン!」
会期:2023.04.22(土) - 2023.06.11(日)
主催:北海道新聞社、HTB北海道テレビ、北海道立近代美術館
後援:北海道、札幌市、札幌市教育委員会
観覧料:一般:1,700(1,500)円、高大生:1,000(800)円、中学生700(500)円、小学生以下無料(要保護者同伴) ※( )内は以下の割引料金です。
(2023.5.17)