私が通うチュラ大では、曜日やイベントによって、たくさんの露店や屋台が出現し、なかなかの賑わいを見せる。ご飯類、おかず、果物、菓子、飲み物、アクセサリー、衣料など、出店は多岐に亘り、見たこともない物を目にすることができるので、見つけたら冷やかし半分で覗くことにしている。そんな折、郷愁を誘う一品を見つけたので、普段甘いものを口にすることはまずないのだが、思い切って買ってしまった。
それがこのロティサイマイというお菓子。空気で膨らませたビニール袋に入っていると知ったら、皆さんは日本の何に似ていると思いますか?そう、子供の頃、お祭りの夜店で親に買ってもらった綿菓子です。東京と約2900マイルも離れた異国の地で、異曲同工とでも言うべき物に出会うのは実に感慨深い。
綿菓子のあのふうわり口の中で溶ける優しい甘さ、大好きな故に翌日食べようと残しておいたら、しぼんでしまった時の切なさ、近所の駄菓子屋に綿菓子製造機が登場し、10円玉を投入して、広がる綿を割り箸で巻き取る楽しさ、は今でも心の奥にそっと棲んでいる。
ロティサイマイと綿菓子の違いは、まず形状。細い針状の飴が繊維状に絡み合っている。どのようにして作るのか、不思議に思ってYou Tubeを検索すると、面白い動画が見つかった。溶かした砂糖を煮詰めて作る飴を、熱いうちに棒状にし、両端を繋げて引っ張るのである。これを何回も続けると、1本が2本、2本が4本、4本が8本というように2のn乗で本数が増え、細くなって行く。まさに熟練の技であり、一見の価値がある。肝心の味だが、繊維状だけにふうわり感には乏しいが、口に入れるとすっと溶けるのは綿菓子と一緒。サトウキビ由来の砂糖を使っていて、甘さだけでなく、香ばしさもある。これをクレープみたいな薄い生地で包んで食べるのがタイ式であり、ロティサイマイは古都アユタヤの名物だそうだ。
潰れないよう大切に持ち帰り、3日間楽しんだが、問題が二つ発生した。一つ目は、飴をちぎる際に、細かな屑が発生し、これが湿気を吸ってテーブルをベタベタにすること。これはテーブルに紙を敷いておけば防ぐことができる。二つ目は、飴の量に比べて、付いてくるクレープの枚数が圧倒的に少ないことである。10枚入っていたのだが、全部使っても飴が半分近く残ってしまった。もっと大胆に飴を盛らなければいけなかったようだが、貧乏症の私にしてはたっぷり包んだつもり。仕方なく、翌日同じ店へクレープだけ買い足しに赴いたのであった。