チュラ大のタイ語講座Intensive Thai レベル2の3/4が終わり、タイ文字の読み書き発音から、短い会話文を読んでその意味を把握する課程に入っている。喫茶店、フィットネスジム、家族の集まり等のテーマで、一日教科書1章分(5〜6ページ)が3時間かけて解説される。授業だけで理解できるほど優秀ではないので、老骨に鞭打って、毎日予習に3時間、宿題に1時間を費やしている。つまり、1日7時間はタイ語漬けになっているという訳だ。
この生活を4週間続けていると流石に疲れてくる。身体の方も、少ない頭髪が伸びてカールし、鬱陶しくなってきた。前回は渡航直前に近所の床屋で髪を短くしてもらったので、帰国までどうと言うことはなかったが、今回4か月はいるのでそうもいかない。タイ語の実戦を兼ねて、最寄駅近くのソイ(小さな通り)にある床屋に行くことにした。バンコクで初めての床屋デビューである。
店の前でしばしタイ文字を眺めていると、看板にあるのが店の名前で「チュター バーバー」、ガラスに書かれている赤い文字が、「男性向け理髪店」とわかった。その下が料金で、大人150バーツ、大きい子供100-120バーツ、小さな子供70-80バーツ。一番下の長い文字を読み取る前に、店のおばちゃんから手招きされてしまったので、全文解読にまでは至らなかったが、これが勉強の成果かと、ちょっと嬉しい瞬間だった。中に入って、「髪を少し短くして下さい」と、習った単語と文法で文章を構築して言うと、優しそうな理髪師のおじさんはわかってくれたみたいで、指でOKサインを出した。これまた嬉しいものである。
かくしてバンコクで床屋デビューとなったのだが、所変われば品変わるで、日本と異なる点が幾つもあって面白かった。まず料金。東京の近所の床屋は4,000円もするが、こちらは150バーツ(約650円)。チップを入れても170バーツ(約740円)だ。その代わり、蒸しタオル、顔剃り、洗髪、整髪料、マッサージといった至れり尽せりのサービスはない。髪を刈った後は、生え際を軽く剃って、ハイお仕舞いである。ドライヤーは服に付いた髪の毛を吹き飛ばすためだけに使われる。次にカットの仕方。ハサミと櫛で丁寧にカットしてくれるのが日本。一方、この店は電動バリカンと櫛であった。私のような髪の量に乏しく、偏在している上に天然パーマである場合、バリカンは難しいと思うのだが、用途に応じてバリカンを使い分け、器用に仕上げてくれたのには驚いた。11月の帰国までにあと2回はお世話になることだろう。
まあ、それはそれとして、散髪後に床に散らばった髪の量を見てグサっときた。他の客より少ないのは致し方ないが、自分で思っていたよりも遥かに少なかったのだ。床屋デビューは、秋風に抗う木の葉の如き人生の黄昏感をも知らしめてくれたのである。