映画批評&アニメ

◆ シネマ独断寸評 ◆

基本は脚本(お話)を重視しています。
お勧めできるか否かの気持を総合評価で示しています。

映画寸評「デンデラ」

2011年08月01日 08時02分33秒 | 映画寸評

「デンデラ」2011年 日 )

  監督 天願大介

 

リアリティが全く無いお粗末

 

口減らしのために村の掟で姥捨て山に捨てられた老婆たちが、実はその後も集団を作って生き延びていたというお話。この意表をつく設定は斬新で気を引くが、この思い付きだけで成り立っていると言っていい、リアリティのまるで無い作品である。

70歳になって掟どおり山に捨てられたカユ(浅岡ルリ子)は、捨てられた女たちのデンデラという共同体に助けられる。それは100歳になる長老メイ(草笛光子)が作りリーダーとなっている50人になる集団であり、自給自足でたくましく生き延びているものだ。しかし労働力とならず口減らしとして捨てられた老婆たちが、厳しく豊ではない自然の中でどのようにして生きていけるのかという説明はほとんど無く、どんぐりを食べたりたまにウサギを捕らえたりという程度のお粗末な描写のみである。そしてメイたちは自分たちを捨てた村人に復讐しようと武闘訓練までしており、多くの者が賛同している。その主張を聞くと、彼女たちが捨てられたのは、村の男たちの悪意により村八分的に阻害された結果のように思える。心ならずも口減らしをしなければ村全体が生きていけなくなるほどの貧しさの結果であることや、それを村の掟として続けてきて自分たちもその親たちを見殺しにして生きてきたという事実は、きれいさっぱり忘れ去られているのである。これらの点は、復讐に反対するマサリ(倍賞美津子)の意見にも出てはこない。そもそも前述のような老婆たちが山の自然で生き延びられる程度の貧しさであれば姥捨てなどなかったであろうに。ここに至って名作「楢山節考」とは無縁の話になりきってしまっているのだ。

やがて話は、デンデラが熊に襲われ熊との戦いが中心になっていくのだが、それらも特たる面白さは無い。弓矢があるならなぜもっと使わないのか、もっと作戦の立てようがあろう、など細部にまでリアリティの無いこと甚だしい。特に、最後にカユが選択した行動とその顛末については、なんのこっちゃとあきれ返るほか無い。

かつてのスター女優が多数出演しているのだが、一部を除いて誰がどれやら良く判らず気にもならなかった。浅岡ルリ子がノーメイクでがんばったという触れ込みで、ほんまかいなと思いつつ見たが、やはり、目の周りはいつもの真っ黒ベタベタ塗りたくりではなくて普通のメイクである、という意味のようであった。

 

総合評価 ① [ 評価基準(⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投ろ)]