≪第104回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望3 関東(その2) -
【埼玉】(参加147チーム)
戦力充実の浦和学院が本命。夏に強い花咲徳栄が猛追する。新鋭の山村学園や、上尾の巻き返しにも期待。
◎ 浦和学院
〇 花咲徳栄
△ 山村学園 上尾
▲ 昌平 聖望学園 浦和実 市川越
2010年代に入ってから浦和学院と花咲徳栄のライバル関係は、やや花咲徳栄側に傾く年が多かった。2020年のコロナ禍の前は花咲徳栄が県大会5連覇を飾っており、完全に『夏は徳栄』という流れを形作っていた。しかし昨年花咲徳栄が本命という評価の下行われた大会で浦和学院が逆転で甲子園をつかみ、そのいい流れを今年も引き継いでここまで来ている。出場した選抜では4強に進出。強豪を次々に破ってのものだっただけにその価値も高く、そのいい流れのまま臨んだ春季関東大会ではまさに無双で優勝を飾った。今や浦和学院は近畿勢を倒せる数少ないチームと目されている。エース宮城の左腕は冴え、芳野、浅田の、そして抑えにはショートから金田が駆けつける万全の布陣だ。そして打線は打って勝つという事を標榜しているだけに強力。他の追随を許さない布陣が出来上がっている。心配があるとすれば森大監督が夏初采配だというところか。一方ライバルの花咲徳栄も、このまま黙って引き下がってはいない。今年は投手陣に柱がいないのがネックだが、打線の破壊力はこれまでのチーム同様素晴らしいものがある。果たして直接対決を制するのはどちらか。しかしこの埼玉大会。惑星も多数で、そう簡単に2強対決とならないところがキモ。まずは春準優勝の山村学園が2強に戦いを挑む。打線は強力で、波に乗れば打ち勝って甲子園という事も十分に考えられる。秋春ともに4強に進出した上尾は名門復活の気配が十分。かなりの好メンバーがチームに合流してきており、公立と言えども油断ならないメンバー構成となっている。夏2大会連続準優勝の昌平は、春はコロナで出場辞退の憂き目にあったが、今年こその決意は強い。名門の聖望学園も今年は戦力充実。久々の甲子園を狙っている。浦和実、市川越に川越東、春日部共栄あたりまでが覇権圏内だ。
【千葉】(参加153チーム)
木更津総合が充実の戦力を誇る。古豪復活へ、銚子商の戦いぶりが楽しみ。
◎ 木更津総合
〇 銚子商 市船橋 拓大紅陵
△ 習志野 専大松戸 中央学院
▲ 東海大浦安 東海大市原望洋 八千代松陰
千葉県大会は毎年大激戦。木更津総合や専大松戸などが安定した力を発揮するも、大会はいつも終盤まで明日をも知れない戦いが続く。
その中で今年は選抜にも出場した木更津総合が戦力充実して本命候補。その原動力はなんと言ってもエース越井の右腕。選抜でも証明された通り、このMax146キロの右腕はそう簡単には打ち崩せない。制球力も向上して、最後の夏を万全の状態で臨む。打線は長打力こそないもののしっかりとつなぐ意識が徹底され、得点力は高い。この木更津総合を崩す1番手は春の県大会で実績を残した市船橋、銚子商の2校か。市船橋はエース森本哲星の左腕がチームの中心。しかし関東大会でいとも簡単に攻略されてしまい、課題も飛び出している。打線で援護できるかが快進撃を続けるカギか。古豪復活を狙う銚子商は木更津総合、習志野の両強豪を撃破して意気上がっている。黒潮打線復活で17年ぶりの甲子園を照準におさめる。秋、春ともに実績を残す拓大紅陵は元ロッテの和田監督が采配を振るう。投打ともにレベルが高く、甲子園を狙える器だ。習志野は夏の戦い方を知る強豪。今年も侮れない戦力を持ち、打倒木更津総合へ虎視眈々。昨年の代表校、専大松戸は伝統の投手力で連続出場を狙う。中央学院、東海大浦安、東海大市原望洋はそれぞれ好投手を持ち、一発狙いの夏の陣となる。
【神奈川】(参加170チーム)
2強の地盤沈下で、2番手組にチャンス。桐光学園は2本柱の投手陣が機能するかがカギ。
◎ 桐光学園 東海大相模 横浜
〇 桐蔭学園 慶応
△ 日大藤沢 横浜商大 横浜商
▲ 藤沢清流 横浜創学館 星槎国際湘南
東海大相模にとって、去年の選抜で全国制覇を達成した後、チームは激震続きで落ち着いて野球をするのが難しい時が続いた。門馬監督の退任発表にコロナ感染での夏の大会出場辞退、そして新監督での秋の関東大会敗退に春の県大会敗退。負のオーラをまとったような今年のチーム、それでもなおその力は神奈川No1であると信じて疑わない。2年時からエースに近い扱いを受けていたエース求は新チームでは全く実績を残せていない。たくさんのピッチャーが入れ代わり立ち代わりマウンドには上がるものの、安定感はイマイチでついに春の準々決勝で桐蔭にそのスキを突かれて4年ぶりの敗戦を喫した。何にしてもこの夏の大会は、東海大相模の立ち直りがどこまでかという事が神奈川の最大の関心事だ。打線の精度は今までと変わらず。投手力の構築がそのカギを握っている。久しぶりに「絶対ではない東海大相模」の神奈川。その中では春の県大会優勝、桐光学園があの松井の夏、12年以来10年ぶりの覇権奪回を狙う。それからの10年間、毎年のように決勝、準決勝に出続けていた桐光学園はその壁が敗れず敗退を重ねてきた。しかし今年、自チームの陣容は例年と変わらずながら、目の上のたんこぶだった東海大相模、横浜、慶応らに勢いがなく、勢い桐光学園が浮上してきたという県大会となりそうな気配だ。エース針ヶ谷と中平の二本柱は県大会を制すには十分な陣容。そこにスーパー1年生3人を加えた打線がどう援護できるか。毎年県大会では佳境に入ってからフェードアウトするパターンとなってしまっているが、今年はベテランの野呂監督も何とか壁を破りたい。その桐光に春は8強で敗れた横浜は、夏も8強で桐光と当たる組み合わせ。昨夏の甲子園で躍動したエース杉山、ショート緒方らのキラ星達が成長を見せていれば2年連続も十分に狙える陣容だ。ただ、部内は春先からガタガタしている感じで、落ち着いて大会に臨めるか。しかし共学になった横浜のアルプスでの、チアの応援も観てみたい気がするが。。。春東海大相模を破り準優勝の桐蔭学園は長打と足を絡めて得点を奪う攻撃力が看板。そろそろ全国に出場して『桐蔭の元祖は神奈川』という事を知らしめなければなるまい。慶応は夏になるとグッと戦力が高まってくる流れがあり、今年も侮れない1校だ。投手力に心配があるので、打線が援護したい。日大藤沢も打線が看板だが、山本昌臨時コーチに鍛えられた投手陣が奮起できるか。久しぶりの古豪復活に沸く横浜商は春4強進出。胸のYのマークに恥じない戦い方で甲子園を目指す。その他惑星は多数で、レベルが落ちたといわれる神奈川大会だが、1,2回戦のレベルは他県と比べて破格だ。
【東東京】(参加128チーム)
関東一が本命も、新監督が率いる帝京も浮上。選抜帰りの二松学舎も加えた3強が鋭くたたき合う展開か。
◎ 関東一
〇 二松学舎大付 帝京
△ 小山台 修徳 日大豊山 東海大高輪台
▲ 明大中野 東亜学園 堀越 大森学園 日体大荏原
昨年春夏ともに甲子園を逃した関東一.策春も関東一は都大会、関東大会を制して意気上がり夏の予選に進んだが最後の決勝で二松学舎に力負け。その悔しさを晴らしたい今年の夏になる。好素材と言われた井坪がようやく本格化して、チームを引っ張るようになり全体が活性化してきた。打線はかなりいい状態で、昨年よりも上の評価。今年こその思いは強く、本命の座は揺るがない。一方で金田伸監督の下力をつけてきたのが11年ぶりの甲子園を狙う帝京。縦じまのプライドにかけて打倒2強を誓う。エース高橋は選抜帰りの国学院久我山を完封。力を見せつけた。投手陣はそのほかにも2,3枚の任せられる投手がそろっており、盤石の状態だ。あとはいかに打線が好機をつかんでいけるか。一方選抜帰りの二松学舎は、選抜での完敗をまだ引きずっている模様。エース布施は関東一との春の東京大会で打たれ、関東大会でも山梨学院に完敗。投手陣の整備が3季連続甲子園への最も大きなカギだ。この3強が頭一つ抜ける存在だが、追ってくるチームにチャンスがないわけではない。その筆頭格はこのところ毎年いいチームを作り甲子園に肉薄している小山台か。今年も全員で守り、全員で攻める意識が徹底。上位のチームにとっては実に厄介な存在だ。修徳は例年通り、夏は打撃で勝負。しかし今年は投手陣も粒ぞろいで、甲子園への道は十分にひらけている。日大豊山、東海大高輪台も波に乗れば上位に進出してくる力は十分に持ち、明大中野はプロ注目のエース、中村の好投にかける。
【西東京】(参加125チーム)
選抜4強の国学院久我山が本命も、鈴木の復活あれば東海大菅生が逆転する。日大三も復活ののろし上げるか。
◎ 国学院久我山 東海大菅生
〇 日大三
△ 八王子 日大鶴ケ丘 創価 明大中野八王子 佼成学園
▲ 国士舘 早実 駒大
このところずっと西東京の高校野球シーンを引っ張ってきた東海大菅生。しかし今年は秋、春と音沙汰なしで夏を迎える。昨夏は完ぺきな攻守の出来で西東京大会を楽々勝ち上がったが、甲子園の初戦はくじのいたずらで大阪桐蔭と激突。雨中の激闘でコールドで屈した。この大阪桐蔭はこの春も甲子園を席巻して全国制覇。一方の東海大国府は東京でも存在感を見せられずにいたが、ひじを痛めていたこの代のエース、鈴木泰が復活してきてガラッと景色が変わってきた。鈴木泰は大阪桐蔭との練習試合で復活の先発を果たしこの全国制覇チームを抑えた。もとより打線には昨年春夏甲子園で戦ったメンバーが多数残り、最後のピースとしての鈴木泰復活はチームに活気を与えている。今年も東海大菅生が本命とみる。さて、選抜で4強に進出した国学院久我山。豊富な選手層を誇り、昨夏決勝で敗れた雪辱を誓う夏だ。今年の国学院久我山の売りは粘り強さと試合運びの巧みさ。そのあたりには一日の長があり、東海大菅生とのライバル対決は注目を集めている。秋春ともに東京の4強に進出した日大三は、小倉監督の気迫が乗り移ったようなチーム。4年ぶりの甲子園をつかめるかは、やはりやや不安定な投手陣の出来にかかるか。そのほかは群雄割拠。八王子、日大鶴ケ丘の強豪は今年も夏用のしっかりしたチーム作りを行っており侮れない。創価も圏内。打線の力は水準以上だ。箕野監督復帰の国士舘、そして名門の早実などはどう巻き返すか。