≪第104回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望5 北信越地区 -
【新潟】(参加71チーム)
エース田中を擁する日本文理が圧倒するか。ライバル新潟明訓が意地を見せるのか。
◎ 日本文理
〇 新潟明訓 東京学館新潟 中越
△ 帝京長岡 北越
▲ 加茂暁星 新潟産大付 村上桜ヶ丘
今年のドラフトの目玉の一人とも言われる日本文理のエース、田中に注目が集まる。投げては148キロをマークした速球でバッターを撫で切り、打っても春の県決勝で2打席連続アーチとまごうことなき二刀流。秋、春ともに準優勝を飾り、最後の夏にもう一つ高いところまで登りたい。チームの特徴である打線も鋭く、死角はないように見受けられる。その日本文理を決勝で破り春の県大会を制した東京学館新潟だが、田中のいないチームに対して打撃戦で勝った内容は評価を上げるものではなかった。北信越大会でも初戦で選抜21世紀枠の丹生にコールド負け。今一つ安定性を各投手陣の底上げが出来なければ、夢の甲子園は近づいては来ない。むしろ日本文理の積年のライバルである新潟明訓の方が力を付けてきている。打線は強力で、春も田中から得点を奪い、帝京長岡の好投手・茨木はKOした。何とか投手陣に太い柱を作ることができれば、盤石な状態でライバルとの対戦を迎えられる。春4強に進出の名門・中越も鼻息が荒い。エース小幡が自信をつけてきており、夏に強い実績も相まって対抗馬に掲げる関係者も多い。芝草監督に鍛え上げられた帝京長岡・小幡はなかなかの好投手。この小幡だけではなく好素材の選手が集まってきており、サッカーに続けと甲子園進出が至上命令だ。秋の県大会を制した北越は春少し停滞した。それでも素質を高く評価されるエース山倉らが試合をしっかり作れれば上位に対しても引けを取らない戦力だ。昨夏準優勝の新潟産大附は、今年も上位進出を狙い打力の強化に余念がない。
【長野】(参加78チーム)
春県優勝の上田西と、昨夏優勝もコロナ禍で春は沈んだ松商学園が2強。都市大塩尻が挑戦状をたたきつける。
◎ 上田西
〇 松商学園 東京都市大塩尻
△ 佐久長聖 岡谷南 長野日大
▲ 篠ノ井 東海大諏訪 松本一
上田西が戦力を充実させてきた。春の県大会を制して臨んだ北信越大会で打線が爆発。3試合で24得点、1試合平均8得点を挙げて夏への準備は万端だ。しかしその分投手陣は3試合で19失点と安定感を欠き、希望と不安がないまぜになった大会となった。それでも2勝して決勝に進出したのは大きな成果。昨春の選抜に続いての甲子園を手繰り寄せられるか。一方昨夏の優勝校である松商学園は、秋も順調に優勝を飾ったものの、そこからコロナ禍に巻き込まれて春は地区大会で敗退。それでも持っている力は県内では屈指で、連続出場の可能性も十分に持っている。ネックになりそうなのは投手陣の整備か。エース左腕栗原は信頼が厚いが、それをサポートする層が薄い。打線は相変わらず鋭い打球を飛ばして得点力は高く、昨夏のように波に乗ればどこまでも突っ走る。都市大塩尻は春上田西と激突した準々決勝で大接戦を展開。昨年からの経験を持つエース今野が相手校の強力打線を抑えられれば視界はグッと開ける。ダークホースではやはり名門の佐久長聖を上げる。今年は上位に顔を出してきていないものの、夏はやはり怖い存在だ。バランスの取れた投打で激戦を勝ち抜けるか。春4強の岡谷南は、ここのところ必ず県大会で上位に顔を出す実力校。春原監督就任からグッと力を上げてきており、ひょっとしたらがないわけではない。東海大諏訪の衣川は県内屈指の捕手で、2本揃う投手陣を引っ張る。そのほかでは長野日大や松本一、春準Vを飾った篠ノ井などが優勝を虎視眈々と狙っている。
【富山】(参加40チーム)
県大会の図式は全く変わらない。高岡勢か、富山勢か。また今年も激しいバトルが繰り返される。
◎ 高岡商
〇 富山一
△ 富山商 高岡一
▲ 氷見 石動 未来富山
年々参加校は減って今年は40チームの大会となった。そんな中、ここ数年ずっと続いている高岡・富山の4強対決が今年も繰り広げられそうだ。
まずはここ4大会連続で夏を制する高岡商が大本命。だが今年の春の大会は準決勝で富山商と4-3の大接戦、そして決勝でも富山一と延長にもつれ込む大接戦を戦った。例年と同じくしっかりと守りを固めて・・・・・という試合展開が得意で、ロースコアゲームに強さを発揮する。サイドのエース桑名から長身の川尻につなぐ継投は盤石に思われるが、北信越大会では啓新に打ち込まれコールドで大敗。たくさんの教訓を持ち帰らされた。打線の破壊力が今一つなだけに、しっかりと抑えて接戦に持ち込んで勝ちを重ねていきたい。追う富山一はスケールの大きさではライバルをしのぐ。エース小林はドラフト候補の右腕。鋭い球筋で秋、春ともに高岡商打線に立ち向かいほぼ失点ゼロに抑える実績を積み重ねている。問題は打線で、ここという試合で爆発しないことが多い。もう少し得点力が上がれば、8強入りした13年以来の夏の扉は開く。富山商は秋春ともに4強どまり。ライバルに少し遅れを取っているが、巻き返せるか。大負けしない代わりに大勝もしないチームカラーで、夏の過酷な県予選を考えると少しでも打って早めの勝ちを積み重ねたい。一昨年の独自大会で優勝、昨年も夏準優勝に輝いた高岡一は今年、春の準々決勝前に出場辞退。まき直しの夏になる。また今年は秋春ともに4強に進出して気を吐く氷見も十分に圏内。新顔の未来富山など楽しみなチームも多く、盛り上がった大会になりそうな気配だ。
【石川】(参加44チーム)
選抜出場の星稜と春北信越Vの日本航空石川が双璧。連覇狙う小松大谷がどこまで迫れるか。
◎ 星稜 日本航空石川
〇 小松大谷 金沢
△ 遊学館 鵬学園
▲ 金沢商 門前
昨年に続いて星稜、日本航空石川、小松大谷の3チームが競り合う展開。選抜8強の星稜は、田中新監督を迎えての初陣になる。エースのマーガードは選抜の好投で自信を付けた。打線も鋭い当たりを連発してエースを好サポート。選手層の厚さから見ても1番手に上がる。そうはさせじと日本航空石川も力を伸ばしてきた。春は県大会準決勝で大久保、鞠谷、矢川の3本の柱で星稜を完封。その勢いに乗って北信越大会では打線が爆発。3試合で30得点を挙げて完勝のVを飾った。全国屈指と言われる内藤は鋭いスイングスピードで快打を連発。星稜投手陣との決戦のなる夏に自信満々だ。両校の対戦はこれまでもほぼ互角。この夏はどちらが激戦を制するか。そしてそこに割って入りたいのが2連覇を狙う小松大谷。昨夏はついに念願の甲子園を射止め、今年のチームも秋春と実績を残してきている。看板の打線は上位2強に引けを取らない迫力で、投手陣が頑張りを見せれば2年連続の聖地も見えてくる。春準Vの金沢も今年は狙っている。投打に突出した力はないものの、その分穴もなく取りこぼしはしそうにない。上位と当たった時力負けしなければ、の期待は十分だ。このところ甲子園にはご無沙汰の遊学館は、星稜・日本航空石川の牙城を崩せないでいる。今年は監督と3番・中川の親子鷹で臨む夏だ。鵬学園は初の夏を狙う。金沢商は実績はないが、試合内容はとてもよく期待を集めている。元星稜監督の山下氏がアドバイザーに就任した門前の戦いぶりにも注目だ。
【福井】(参加28チーム)
コロナ禍で練習制限の選抜出場校、敦賀気比の動向次第でいかようにも変わる。福井工大福井はチャンスに賭ける。
◎ 敦賀気比
〇 福井工大福井 啓新
△ 福井商 北陸
▲ 丹生 敦賀工
参加チームが30を切って、シード勢は4試合を勝ち抜けば甲子園に届く。しっかりと作戦を練って大会に臨んでくるはずだ。今年は昨年春夏甲子園出場のメンバーが多数残り、投打に完璧な仕上がりと思われた敦賀気比が5月にコロナ禍に見舞われ練習自体を自粛。この動向が今大会のすべてを支配するといっていいだろう。本来であればエース上加世田にキャッチャー渡辺を軸とした太い幹を持つ敦賀気比が圧倒的に有利な大会だったはずだが、その仕上がりぶりに不安が付きまとう。敦賀気比は選抜でも何もできずに初戦敗退。苦しい春となった。しかし本来持っている力は県内では抜けていて、案外夏もスイスイと勝ち上がっていく可能性は高いと思われているが、どうか。その間隙を縫って優勝を狙う一番手は福井工大福井。珍しい1番ピッチャーの向嶋が投打の軸。速球の威力は抜群で、控え投手陣とともに福井工大福井の屋台骨を支えている。打線もまずまず仕上がっており、敦賀気比との決戦に向けて牙を研いでいる。春は優勝を飾った啓新。秋に決勝で敗れた福井工大福井にリベンジしての優勝だっただけに価値がある勝利だった。本来のエースである田中が春は投球を封印したが、その間に控え投手陣が成長。いい効果を生んだ。初の夏をつかむには、投手陣を支える守備力の強化と、ここ一番でヒットをつなげる打線の整備だ。名門2校があとを追う。福井商は2年生主体のチームで戦いに臨む。エース河野は一皮むけてエースらしくなってきた。北陸は投手力を前面に出して戦いを挑む。選抜出場の丹生は春の北信越大会で4強入り。甲子園の遺産をチーム強化にうまくつなげている。