≪第101回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望2 北関東 -
【茨城】(参加93チーム)
絶対とみられていた常総学院の躓きで混戦演出か。いつものライバルたちが鋭く追い、プロ注目の石岡一・岩本も怖い。
◎ 常総学院
〇 藤代 霞ヶ浦 明秀日立 水戸商
△ 石岡一 土浦日大
▲ 日立一 水城 竜ヶ崎一
新チーム結成以来言われていた「今年は常総絶対」という空気が、微妙に変化して夏を迎える。常総学院の戦力が充実しているのは疑いがない。中妻・岡田ら4枚入る強力投手陣を、主砲の菊田・斎藤が支えるチーム力は関東の中でも屈指。本来ならば、県大会は「通過点」にしなければいけないチームだが、秋春とどうしても大事な試合を勝ち切れていない。その弱点を突きたい対抗馬の一番手には、春の県大会を制した藤代が上がってきた。投手陣はどこに出しても恥ずかしくない陣容をそろえ、あとは伝統的に迫力という点では劣る打線の爆発待ち。反対に打線で勝負は明秀日立。一昨年、昨年と強打のチームで県内を席巻していたが、今年もまた伝統の強力打線が出来上がった。しかし絶対的なエースが不在という投手陣が不安を抱えており、どこまで打線が援護できるかがカギ。常に上位に進出する常連の霞ヶ浦は2度目の夏を狙う。長年の悲願は3年前に達成したものの、その後の「2度目」がまた難しく、聖地を踏めてはいない。今年も確実にいい戦いで上位進出は固く、「最後の最後」で突き抜けた何かが出てくれば甲子園が見える。名門の水戸商には、中京から広島カープで活躍した紀藤が指揮官として就任。初めての夏の大会になるが、プロ、そして自身の母校である中京の「勝てるメソッド」をどこまでナインに叩き込むことができているか。春の県大会で準Vという結果が出ているだけに、注目される。また有力校がこぞって警戒しているのが石岡一の好投手・岩本だ。21世紀枠で出場した選抜では、全国を驚かせるような見事なピッチングを披露。一躍ドラフト候補に躍り出た逸材だ。もちろんこの石岡一、現在までのところ完全に岩本のワンマンチームという様相ではあるが、上位陣にとってはこれほど怖いチームはないであろう。特に序盤での戦いは避けたいところか。3連覇を狙う土浦日大は、今年は過去2年と比べて打線の破壊力がいま一つ。今年は守りを固めて、逃げ切る野球を目指す。水城、竜ヶ崎一など、かつて甲子園出場経験のある学校が追い、常総1強を突き崩そうとしている。
【栃木】(参加59チーム)
作新学院の9連覇はなるのか。大混戦の大会を演出するのは果たしてどこか。
◎ 佐野日大 作新学院
〇 文星芸大付 国学院栃木
△ 白鷗大足利 青藍泰斗
▲ 宇都宮工 栃木工 矢板中央
現在8連覇を継続する作新学院の行く手に、今年は多数のライバルが立ちはだかりそうだ。作新学院は、秋準V、春8強とそれなりの成績は残しているものの、小針監督はかなり物足りなさを感じている様子。自慢の打線が火を噴く展開になれば作新ペースだが、どうやら今年は多くを望めない感じで、昨年同様複数の投手をやりくりして失点を防いで接戦を勝ち抜くという試合展開が多くなりそうだ。とはいえ勝ち方を知っているという点では他校の追随を全く許さないチーム。小針流の夏の戦い方が、今年も他校を席巻する可能性も、ないとは言えない。今年実績を残しているのは、何と言っても秋春連覇の佐野日大。投打ともに県大会ではかなりいい成績を残すが、関東大会に出た途端にからっきしになってしまうのはどうしたわけか。実力では上回るだろうと思われる相手に対して見せてしまう試合運びの稚拙さが命取りにならなければいいのだが。新監督を迎えて意気上がる名門の文星芸大付も有力候補の一つ。ただ打つだけではない、今までチームにかけていた”ツボ”の部分が試合に現れてくるようになって、チーム力は格段にアップしている。国学院栃木、白鷗大足利、青藍泰斗の3校は例年通りしっかりと夏に向けて戦力を整えてきつつある。国学院栃木は投手に、白鷗大足利は打線に、青藍泰斗はバランスに強みを持つだけに、しっかりと勝ちあがって上位との対戦に持ち込みたいところだ。そのほかでは今年実績を残す公立勢に注目。特に栃木工は春準Vに輝いたが、破った相手が作新、白鷗大足利、国学院栃木と強豪ばかりだけにその価値は高い。快進撃を夏も続けられるか。
【群馬】(参加62チーム)
前橋育英がトップをひた走る。直接対決で圧倒的に不利な健大高崎の巻き返しは?
◎ 前橋育英
〇 健大高崎
△ 桐生一
▲ 樹徳 前橋商 伊勢崎清明 前橋工
例年と同じ図式ではある。2強といわれる前橋育英と健大高崎の決戦が、県大会の雌雄を決する対戦になるだろう。しかしその2強の立ち位置は微妙に毎年違っていて、昨年は健大高崎の戦力が突出しているのではないかとみられていたが最後に前橋育英が逆転。甲子園をつかみ取った。過去10回の県大会での直接対決では、前橋育英が健大高崎を9勝1敗と圧倒。それがそのまま、甲子園の出場回数につながっている。今年の前橋育英は、昨年からマウンドを守る梶塚がエース。投手育成に定評のある荒井監督の下、今年も成長を見せてマウンドに君臨する。打線は浮き沈みが激しいというのが例年の印象だが、今年も中距離ヒッターを並べて、3・4点を奪いに来る構成だ。一方の健大高崎。機動破壊を標榜して全国のチームから恐れられる攻撃力は、前橋育英との直接対決では完全に封じられてしまっている。昨年は機動力よりも破壊力で勝負したが、厚い壁はまたも敗れず一敗地にまみれた。そろそろ「何か」を考えて臨むこのライバル対決という気がするが、果たしてどうなるのか。前橋育英が苦手ということは、桐生一にも当てはまる。現在7連敗中で、あのユニフォームを見るのも嫌という感じだろうが、この高い壁を乗り越えない限り甲子園の夏はやってこない。バランスの取れた投打は高水準を保っており、何とか苦手意識を払しょくしたい夏だ。樹徳も相変わらず強豪の位置をがっちりとつかんでいる。今年は秋8強、春4強と実績的にも十分。夏は自信を持つ攻撃力で活路を開きたい。名門の前橋商、前橋工の両校も虎視眈々と聖地への帰還を狙う。このところ存在感を見せ続けている伊勢崎清明にもチャンスあり。大会の序盤で波に乗れば、初出場の夢も現実のものとなる日が来るかもしれない。
【山梨】(参加35チーム)
今年もまた、2強対決が濃厚。今年は山梨学院が、頭一つリードか。
◎ 山梨学院
〇 東海大甲府
△ 甲府工 甲府商
▲ 駿台甲府 都留 日本航空 富士学苑
例年のごとく、宿命のライバルの対決が甲子園に直結する。ここのことろずっと山梨学院と東海大甲府が他校を引き離すという県大会の構図は今年も健在で、両校の直接対決が大会のハイライトであろう。山梨学院は今春の選抜では主砲の野村が1試合2本塁打を叩き込んでその強力打線ぶりを見せつけた。打線の破壊力はもちろん県内No1で、他の追随を許さない。投手陣はエースと呼べる投手こそいないものの層の厚い陣容が組めており、県大会のレベルではまず心配はないだろう。それよりも全国のレベルで粗い試合になりがちなところの修正が必要か。ライバルの東海大甲府は、エース加藤の出来がライバルを制す一番のカギ。右オーバーハンドから力のある球を投げ込む正統派。山梨学院の打線は力の勝負で抑えきる腹積もりだ。打線は破壊力こそ一歩譲るが、得点力は高く、加藤・鈴木・関口の中軸は3人で投打の軸を賄う文字通りのチームの中心だ。2強を追っていきたい対抗馬には、名門の公立2校を上げる。甲府工は投打の底上げが進んでおり、ひょっとしたらの期待を抱かせるチームになってきた。一方甲府商は春4強の勢いに乗りたいところ。春準Vに輝いたのは駿台甲府。2本柱が整った投手陣で勝負をかける。このところ安定している都留や、名門だが音沙汰を聞かない日本航空、富士学苑らが台風の目になれるか。