さあ、今年もこの季節がやってきました。
第101回全国高校野球選手権大会が、
沖縄を皮切りに全国で地方大会の開幕です。
第99回が「プレ100回大会」で、
清宮をはじめとして超絶なスーパー球児が参加する大会で盛り上がり、
その余韻をそのまま残して昨年の第100回大会は、
記念大会というだけではなく大阪桐蔭が「史上最強」ともいえる戦力で、
圧倒的な春夏連覇を達成。
大会の盛り上がりは、
かつてないほどまでに高まりました。
そしてその最強大阪桐蔭に果敢に挑んだのが、
地方の公立農業高校である金足農。
21世紀になってまさに「絶滅危惧種」的な扱いを受けていた公立の実業系の学校が、
見事な投球を続ける”夏のヒーロー”をマウンドに、
次々と強豪校を打ち破っていく姿が、
まさに日本人の琴線に触れたといえるかもしれません。
そんな昨年の100回大会を区切りとして、
今年は新たに「101回大会」として新しい世紀を作る大会の始まりとなりました。
ちょうど元号も『平成』から『令和』に変化した年でもあります。
あたらしい季節の初めりに、新しい球児たちが集い、また新たな歴史が刻まれる大会が続いていくことでしょう。
そういう意味でも、
今年はとてもフレッシュな大会になりそうな予感がします。
「平成最後の甲子園大会」となったセンバツでは、
東邦が投打のバランスを見せて見事に優勝を飾りました。
平成の最初の甲子園大会でも優勝を飾った東邦が、
平成の最後の甲子園でも優勝で飾るというドラマチックな大会でした。
そんな中で始まる今年の夏の大会。今年は何か、
絶対の本命というよりもどこも戦力が充実していて、
稀に見る戦国大会になりそうな気配もあります。
これまでの予想ではカバーしきれない、
さまざまなドラマが生まれそうな気配が、
なんだかプンプンするのを感じるのは、
ワタシだけでしょうか。
さて、
今年の大会を占っていきましょう。
毎度毎度言っていることですが、
節目の大会であろうとなかろうと、
今年の高校三年生にとっては【たった一度の、自分たちの夏】がこの大会です。
すべての思いが詰まって毎試合戦うので、
この夏の大会というのは一戦一戦が本当に「乾坤一擲の戦い」になって、
毎年「勝っても涙、負けても涙」となるわけです。
「キミたちの夏」はもうすぐそこまで来ています。
力の限り戦えば、
それは長く心の中に生き続ける、
決して侵されることのない「自分史」の美しい1ページになっていくことでしょう。
そしてそれは、
これからの長い人生の『生きていく糧』に、きっとなっていきます。
勝った負けた・・・・・それは結果。
「あの夏、オレは全力で戦った。」
そう誇れる自分がいる事こそ、
宝物だと思います。
頑張れ 101回目の高校球児たち。
キミ達のすべての頑張りが、
日本の高校野球史の新しい1ページを、
鮮やかに彩ってくれることでしょう。
さあ、はじまりますよ!!
ということで、
今年も地方大会の展望を。
≪第101回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望1 北海道・東北地区 + 沖縄大会 -
【沖縄】(参加64チーム)
宮城擁する興南が今年も大本命。あの裁監督以来の沖縄水産が復活を狙う。
◎ 興南
〇 沖縄水産 沖縄尚学
△ 嘉手納 北山 沖縄工
▲ 糸満 コザ 浦添工 八重山
100回大会を見事に連続出場で飾った興南が3年連続出場に向かって驀進中だ。何と言ってもマウンドを死守するエース宮城の存在が大きい。すでに2年連続で聖地のマウンドを踏むこのエースは、今年は出るだけではなく、2度目の優勝を狙っている。春の九州大会をはじめ、夏の大会までに行われた各種招待試合や練習試合でも、強豪校の打線が驚くほどストレートの威力が増したその投球は圧巻だ。あの2010年に春夏連覇した先輩エースの島袋(現SB)をもほうふつとさせるほどのすばらしさで、他を寄せ付ける気配がない。打線も根路銘からつながり勝連、宮城と続く上位の破壊力はかなりのもの。負けるときに淡泊な試合ぶりが出てしまうという悪癖をなくせば、戦力的には県内で負ける相手はいないだろう。3年連続の出場という事になれば、興南にとっても36年ぶりの快挙。監督とすれば「県内で負けている場合ではない」との思いが強いだろうが、行く手を阻むライバルの存在も見過ごせない。そのライバルの一番手には、なんとあの裁監督が率い、新垣渚がマウンドを守った98年のチーム以来21年ぶりの聖地帰還を狙う沖縄水産が上がってきた。80年代~90年代の黄金時代がきらびやかに輝いているほど、その後の21世紀になってからの低迷にはファンも暗い影を落としていたが、そのすべてを払しょくできる可能性を持った夏がやってきた。過去3年間で選手権沖縄大会ではわずか1勝しか上げられなかったチームは、今年華麗に生まれ変わった。その原動力は何と言っても往年をほうふつとさせる猛打線。川端・真栄城・三木とつながるクリーンアップの破壊力は県内随一。上位・下位ムラのない打線の援護を受けて、投手陣も左腕の上原に国吉と強力な2枚看板をそろえており、ようやく全国準優勝2度の『沖水らしい』戦力となった。オールドファンは、復活を待っているが、強力なライバルを倒してその願いはかなえられるのか。さらに夏常連の沖縄尚学も引いてはいない。春の早期敗退で厳しい組み合わせになったものの、伝統の強力打線は健在。勢いがつけば2強とも互角に戦えそう。秋春の4強勢、嘉手納、北山なども面白い。北山は黄金世代の3年生を中心とした質の高い攻守が自慢。初出場が視野に入ってきた。例年身体能力の高い選手を揃える糸満や春4強の沖縄工も戦力は整いつつある。いずれにしても、熱い沖縄の夏は興南をどこが止めるかというのが衆目の一致した見方だ。
【北北海道】(参加校85チーム)
過去2年覇権を争った、旭川大・滝川西・クラーク国際・白樺学園が4強。
◎ 旭川大 クラーク国際
〇 滝川西 白樺学園
△ 帯広大谷 旭川実
▲ 遠軽 旭川龍谷 武修館
昨夏は予想を覆し旭川大が栄冠を獲得した。準優勝はクラーク国際。ここに一昨年の決勝を争った滝川西と白樺学園が絡んで、決め手のない4チームが激しいつばぜり合いを繰り広げそうだ。旭川大は昨年同様、投手陣の層が厚くなった。エース能登から杉山、加藤の3人は誰が投げても試合を作れる能力を持つ。打線は昨夏も4番を務めたキャプテンの持丸で、昨夏甲子園でタイブレークを戦った経験者がたくさんメンバーに名を連ねる。クラーク国際は昨夏の準優勝メンバーが何と8人も残り、こちらも経験豊富な戦力だ。ここ数年は必ず優勝争いに絡んできており、すでにこの地区では強豪としての地位は確立した。関口・浦崎の2枚看板はいずれもMax140キロ超の速球を投げ込む本格派だ。滝川西は2年ぶりの甲子園を狙う。こちらも左右の2枚看板の投手陣が自慢。エース山崎は緩急をつけて打者を翻弄する投球が得意。左腕の岩嵜も小気味いいピッチングを見せ、投手陣ではライバルに引けを取らない。打線はかつて”ゴリラ打線”と恐れられたが、今はかつてのような重量打線ではない。しのいで勝機を見出すチームカラーだ。白樺学園はもとより選手の質の高さは地区No1。打線はそこそこまとまっており、むしろ先の3チームよりも破壊力はありそうだ。追っていく帯広大谷は、6年ぶりの夏を目指す。エース木島の切れるスライダーは見もの。名門・旭川実は今年こそ若干の遅れをとっているように見られるが、名門の意地を見せたいところだ。遠軽、武修館という新興勢力に、古豪の旭川龍谷までが今年本気で甲子園に届きそうな面々だ。
【南北海道】(参加105チーム)
”秋の日本一”札幌大谷か? それとも”春の全道一”駒大苫小牧が勢いで押し切るか、札幌第一が巻き返すか?
◎ 札幌大谷
〇 駒大苫小牧 札幌第一
△ 東海大札幌 苫小牧工
▲ 北海 北照
秋の日本一に輝いた札幌大谷は、本当に力強かった。その力強さは、選抜で2回戦敗退となっても変わりはしない。飯田・西原・石鳥らで構成された打線は、全国の名うての好投手とこれまで当たってきており、決して力負けしないたくましさが特徴。あとは細かいプレーの精度が上がれば、さらに得点力は伸びる。投手陣では秋春と頑張った”打ちにくさではNo1"の太田に加え、復活ののろしを上げてマウンドに帰ってきた西原が控える。その札幌大谷”本命”説に待ったをかけるのが駒大苫小牧。ここ3年連続で秋か春の全道大会を制しており、あの強いコマトマの復活とささやかれている。打線の破壊力は札幌大谷をしのぎ全道No1の呼び声も高く、あとは速球派のエース北嶋がどこまで踏ん張れるかにかかる。選抜に出場した札幌第一は、その選抜大敗の後遺症を若干引きずっているように見える。選抜での大敗を返す舞台は甲子園しかない、復調が待たれる夏の陣だ。選抜準優勝から音沙汰のない数年を過ごしてきた東海大札幌の巻き返しにも注目。エース小林はかつてのエースたちと比べても遜色ない素晴らしい球を投げるドラフト候補。打線がやや湿っていた春を過ごしてどこまで底上げができたか。そのほかでは強打で春の大会、決勝まで駆け上がった苫小牧工も注目される。打線の力で打ち勝てれば、何と47年ぶりの夏の聖地だ。名門の2校も黙っているわけにはいかない。昨夏の代表校である北照は、今年は全くその動向を聞かないが、巻き返せるか。また「北海道の夏将軍」北海も虎視眈々と2年ぶりのVを狙う。夏の戦い方をよく知っているだけに、有力校にとっては嫌な存在だ。
【青森】(参加57チーム)
やはり今年も八戸学院光星がトップを走る。しかし弘前学院聖愛が猛追、青森山田を加えたつばぜり合いが面白そう。
◎ 八戸学院光星
〇 弘前学院聖愛 青森山田
△ 弘前東 青森商
▲ 弘前工 弘前実 八戸工大一
最近の青森大会の図式、というか、ここ四半世紀にわたって、八戸学院光星と青森山田の2強の対決という図式は全く変わっていない。ともに最大のライバルだという事を認め、とにかく「このライバルに勝たなければ甲子園はない」という覚悟で毎年夏の決戦に挑む。今年は秋は八戸学院光星が優勝、青森山田は4強で涙を呑んで選抜には光星が出場した。しかし春の県大会では青森山田が選抜帰りの光星を破り県大会を制覇。2強は「最後の夏の決戦」にかけるという、いつもの夏の図式が出来上がりそうだった。しかしここに、思いもよらない伏兵が登場した。弘前学院聖愛だ。聖愛は県大会決勝では青森山田に終盤競り負けたが、2位で出場した東北大会で大ブレーク。並みいる強豪をなぎ倒して、何と初制覇を飾ってしまったのだ。その戦い方は、打線が機能してというもの。夏の大会に向けて投手陣の整備が整えば、一気に本命の座に躍り出ることも可能な位置につけてきた。3試合連続の1点差ゲームを勝ち切ったしぶとさは、苦しい夏の戦いでもきっと生かされるはずだ。迎えうつ八戸学院光星は、エース後藤を筆頭に投手陣が粒ぞろい。そしてそれを支える打線は今年も強力で、東北屈指の破壊力を誇る。特にショートの武岡は「坂本2世」と呼ばれるほどの好プレーヤーだ。この3強からは離されているが、近年ぐっと力を伸ばしているのが弘前東。秋は準優勝、春は4強と確実に上位に進出している安定感のある戦い方は注目される。青森商、八戸工大一、そして名門の弘前勢なども候補に挙げておく。
【秋田】(参加44チーム)
全出場校に希望と勇気を与えた金足農の大活躍。今年の活気は、レベルアップを生んだ。
◎ 明桜
〇 能代 秋田商
△ 秋田修英 秋田中央 角館 横手 能代松陽
▲ 大曲工 大曲農 金足農
去年の金足農の大躍進が、どれだけ県内の各校に勇気と希望を与えただろうか。『俺達でもできる』という気概は県大会に今まで以上の活気と緊迫感を生んできた、そんな1年だったと思う。そんな中、当の金足農はどうか。正直に言って、今年はやはり全国への道はかなり厳しい。特に中心となる投手が育っていない現状は厳しく、上位まで駆け上がるのは苦しいと予想される。一方で昨年吉田(現日ハム)にも劣らないといわれたエース山口を擁しながら金足農の後塵を拝した明桜が、復活へののろしを上げている。春は県大会優勝、そして勢いに乗って東北大会でも決勝へ。去年のくやしさをもって今年は盤石な体制が整った。例年投手力主体にチームを組み立てる学校だが、今年もそのチームカラーがぴたりとあてはまる。2年生エースの佐々木と同じく2年生の長尾の両右腕がマウンドをがっちり守る。打線もそこそこは打てる力を持っており、決して貧打ではない。追うのは春準優勝の能代か。そして秋準優勝の横手も絡んでくる可能性がある。しかしいずれも若干不安定な戦いぶりも見受けられ、上位に来るまでにはいたいという事もないわけではない。シードは確保しているので、何とか大会前半で勢いに乗りたいところだ。名門の秋田商も今年は黙っていない。名門らしいしぶとい戦い方を見せれば一気に浮上もありうる。そのほかでも、勢いがつけば頂点に駆け上がりそうなチームは、とても片手では足りない。秋田修英は初めての甲子園を狙う。力のある秋田中央や角館、いつも夏にいい戦いをする能代松陽なども決して侮れない。
【岩手】(参加66チーム)
注目は何と言っても大船渡の佐々木がどう戦うか。順当なら花巻東と盛岡大付の「2強」の争いが濃厚だが。。。。
◎ 花巻東 盛岡大付
〇 大船渡 専大北上
△ 盛岡四
▲ 一関学院 久慈 一関一
誰が何と言っても、今年の高校球界で最も注目を浴びているのは大船渡のエース・佐々木だ。その160キロを超える剛球は、この予選でも注目の的。果たして佐々木が絶好調ならば、打ち崩すことのできるチームは存在するのか。もとより昨年、金足農の吉田がその超絶ぶりを全国のファンに見せつけたばかりだけに、佐々木の動向がこの大会のすべてといってもいいかもしれない。しかし「連投はダメ」という”外圧”も監督は強く受けているはずで、昨年の吉田のような使い方は、現時点では想像できない。そうすると、やはり大船渡は絶対的な攻守の力は持っていないため、強豪に勝ち切ることはできないだろうというのが大方の見立てだ。しかし、いったい佐々木がどういった使われ方をするのかなんていうのは、まだだれにもわからない。いったいどうなるのか、この岩手大会は波乱の要素が多くちりばめられた大会だ。順当に行けば県内2強の花巻東と盛岡大付属の「宿命の対決」が濃厚だ。秋は盛岡大付属が制し選抜へ。そして春は花巻東が巻き返して優勝、東北大会に進出した。花巻東は4人とも5人ともいわれる投手陣をしっかりと大会で回しながら使っていくのが得意。そしてここぞの試合でコンディションよくエースを出すことができれば、覇権は見えてきそうだ。エースの西舘は好調を維持しており、盛岡大付属との戦力比較でも、やや部がありそうだ。その盛岡大付属は、自慢の強力打線が健在。ここ2年で2回甲子園に出場しており、戦い方を知っているのも強みだ。追っていく中では、中尾監督が就任してすっかり戦力の底上げができている専大北上が一番手。甲子園まであと一歩のところまで来ており、今年は2強に一泡吹かせたい。名門の一関学院も秋春ともに8強入りしてシード権を確保。かつては「3強」といわれた時代もあったので、ライバルに負け続けてはいられないところだ。春県大会で盛岡大付属にサヨナラ勝ちして準優勝を飾った盛岡四も面白い存在。かつて1度だけ甲子園に出場したこともあり、夢が手に届くところまで来ている。
【山形】(参加48チーム)
激しい4強のたたき合い。いずれも甲子園の経験豊富で、どこが勝ってもおかしくはない。
◎ 鶴岡東 酒田南
〇 日大山形 羽黒
△ 山形城北 山形中央
▲ 山形学院 九里学園
4強といわれる鶴岡東、酒田南、日大山形、羽黒。近年いつも県内のトップを争い、山形中央を加えた5校から、20年以上にわたって代表校が出ている。今年も4強のつばぜり合いはすごくて、まさに「どこが勝ってもおかしくはない」という様相だ。その中で若干リードするのは、春の県大会優勝、東北大会4強の鶴岡東か。昨夏の決勝でサヨナラ負けした悔しい思いを選手全員が持っているため、今年にかける思いは強い。エース池田をリードする大井は県内屈指の捕手で、打っても強打線の中心に座る。選手の底上げも完成して、いよいよ絶対負けられない戦いに挑む。酒田南はエース渡辺の剛腕がチームの柱。そしてライバルにも負けない強力打線は県下屈指の破壊力を持つ。春の県大会で決勝まで上がってようやくチームの形が見えてきた日大山形は、一昨年夏、昨春と2年連続で甲子園に出場しており、今年も狙いは一つだ。好リードを見せる渡部がチームをけん引する。昨夏久しぶりに甲子園を掴んだ羽黒は、エース篠田が残り虎視眈々と連覇を狙う。力で押し切る野球で、ライバルに先んじる構えだ。この4強から代表校が出る可能性は極めて高いが、追っていく各校も力は持つ。今や名門の域に達した山形中央は、今年も看板の全員野球で甲子園に挑む。軸になる投手が現れれば、一気の浮上も考えられる。春秋ともに4強入りを果たした山形城北にも注目。同じく春4強の山形学院とともに、大会に新たな風を吹かせる可能性も十分だ。
【宮城】(参加67チーム)
連覇を狙う仙台育英は”6年一貫”での強化が実る。力の差はあるが、ライバル東北が追っていく一番手。
◎ 仙台育英
〇 東北
△ 東北学院 古川
▲ 聖和学園 利府
仙台育英の優位は動かしようがない。昨夏は甲子園こそつかみ取ったものの、謹慎明けという状態で全国で戦える態勢を整えることはできななかった。しかし今年は違う。経験豊富な投手陣に、付属である秀光中学からどんどんいい選手が供給されてきて、投手陣の陣容は押すな押すなの大盛況となっている。現代の高校野球において複数投手陣の存在は不可欠だが、それにしても層の厚さには驚かされる。大学野球並みのローテでこの夏も決して死角は作らない。打線も野球をよく知る破壊力のある打線。杜の都の夏3連覇は、手が届くところまで来ている。この動かしがたい「大本命」を、ライバル東北が何とか倒そうと狙っている。投打ともに仙台育英よりは「1ランク下」とみられてはいるものの、夏に強い歴史は脈々と現在の選手にも受け継がれている。最近あまり分の良くないライバルとの直接対決までは、負けるわけにはいかない。波乱の要素は少ない大会とみるが、秋準優勝、春も仙台育英と接戦を演じた古川あたりは面白い存在だ。秋春ともに敗れている仙台育英に対しての、夏の秘策はあるのか。東北学院は春3位に食い込んで東北大会を経験。そこでまさかの2勝、特に2試合目は花巻東を破るという殊勲の星を上げた。なかなか好感の持てるチームで、力いっぱいの戦いを誓う。春4強の聖和学園、そして近年必ず上位に食い込む公立の星・利府の戦いぶりにも注目だ。
【福島】(参加75チーム)
聖光学院の連覇はついに止まるのか。あの佐々木監督率いる学法石川がその候補筆頭だ。
◎ 学法石川
〇 聖光学院 東日本国際大昌平
△ 日大東北 福島商
▲ ふたば未来 磐城 学法福島
いよいよ「聖光王朝」に終止符を打たれる瞬間は来るのか。これまで12連覇を果たし、まさに福島の絶対王者の地位をゆるぎないものにしていた聖光学院。しかし今年のチームは、秋の新チーム立ち上げからどうも投打の歯車がかみ合わず、選抜を逃しただけではなく春は県大会でも敗れるという波乱を演出した。これまでどの大会においても、県大会レベルでは無敵を誇っていた聖光学院だけに、そのショックは計り知れないものがあるのではないだろうか。この悔しさをバネに夏復活を遂げるか、それとも他校が久しぶりの夏をつかみ取るのか、注目の大会だ。聖光学院は夏に向けて例年必ず層の厚い部員の中から「孝行息子」が出現して、チームの苦境を救ってきた歴史がある。今年も2年生などに好素材が揃っており、誰を軸に戦いを進めていくか。打線はその得点力の高さと、土壇場での粘りが身上。もちろん今年も、簡単には負けないチームにはなっている。それでも本命に推せないのは、ライバルにものすごいビッグネームの指揮官が現れたせいだ。それは昨年11月に学法石川の監督に就任した、元仙台育英の名将・佐々木監督だ。80年代~90年代にかけた一時代を築いた学法石川が古豪と呼ばれるようになって久しいが、名門復活の切り札として起用されたのが、「東北地区の野球をスミから隅まで知り尽くした」佐々木監督。これまで幾多の指揮官が挑んでも倒せなかった打倒聖光は、この名称の手にゆだねられている格好だ。春の東北大会では東北を破り、優勝した明桜には1点差の惜敗。しかし名門復活へ、確かな手ごたえをつかんだはずだ。そして春聖光学院に快勝し、優勝まで上り詰めたのは東日本国際大昌平。元巨人の伊藤監督を指揮官に、勝利に飢えていたナインにたっぷりとエキスを注入している。その力はむしろ学法石川を上回るとまで見られており、兄貴分である東日本国際大に続いて、全国の舞台に名乗りを上げるつもりだ。この3強のたたき合いは見ていて面白い。特に指揮官同士の駆け引きは、そのチーム作りとともに非常に面白く、一気に熱を帯びた県大会になりそうな雰囲気が漂う。ここに名門で今年は秋準優勝、春3位と実績を残した日大東北も絡む展開になるか。