最も印象に残った球児
11.群馬
阿久沢 毅 内野手 桐生 1978年 春 夏
甲子園での戦績
78年春 1回戦 〇 3-1 豊見城(沖縄)
2回戦 〇 7-0 岐阜(岐阜)
準々決勝 〇 4-0 郡山(奈良)
準決勝 ● 2-3 浜松商(静岡)
夏 1回戦 〇 18-0 膳所(滋賀)
2回戦 〇 0-3 県岐阜商(岐阜)
群馬といえば好投手の宝庫。
74年夏の4強入りを果たした前橋工・向田、78年の桐生・小暮をはじめ、
前橋工・小川、東農大二・高仁、阿井。
前橋には完全試合男・松本もいます。
現西武監督の前橋工・渡辺に桐生一の優勝投手・正田、同校は翌年一場も輩出しました。
甲子園では目立たなかったものの、
近年では小林(中日)、藤岡(ロッテ)や鹿沼なども輩出しています。
そんな”好投手の宝庫”群馬県にあって、
ワタシが一番印象に残ったのは、
スラッガー・阿久沢です。
阿久沢は78年の甲子園に、
名門桐生の4番打者として出場。
11年ぶりの名門復活は、
投の小暮・打の阿久沢という2本柱ががっちりとチームを支えていました。
秋の関東大会から注目されていた大型チームの桐生。
選抜ではPL学園、豊見城と並び3強と称されました。
その選抜の1回戦、
桐生はくじ運悪く、初戦から3強の一角である豊見城と対戦します。
この試合、
パワフルな豊見城打線に立ち向かったのはエースの小暮。
左腕からキレのいい球を投げ、
石嶺(元阪急)を軸とする強打の豊見城を翻弄。
そして2回戦で、
スラッガー阿久沢はその本領を発揮します。
大柄な左バッターであった阿久沢。
その太い腕から弾き返される打球は、
速さ・飛距離共に抜群。
その試合を観戦したあの世界の王さんが絶賛したほどの、
凄いバッターでした。
その阿久沢、
次の郡山戦でも2試合連続となるアーチをたたき込み、
全国にその名をとどろかせました。
準決勝では惜しくも粘りの浜松商の軍門に下ったものの、
小暮の左腕とともに阿久沢のバットは、
強烈な印象を残して甲子園を去りました。
夏は強敵・前橋との直接対決が期待された県大会を制し(実際の対戦はなし)、
甲子園に再び登場。
初戦の膳所戦では18得点というド派手な試合を見せましたが、
『大量得点の試合の後は危ない』
の野球の格言通りの試合を2回戦に見せてしまい、
県岐阜商の横手投げエース・野村に翻弄され、
大きな期待に応えることなく”あっという間に”甲子園を去ってしまいました。
阿久沢選手はこの夏の大会ではいいところを見せられずじまい。
しかし彼を巡る”争奪戦”は秋になるほどにヒートアップ。
スラッガー候補を欲するプロをはじめ、
六大学勢などが攻勢をかけますが、
彼自身はその喧騒を”どこ吹く風”という感じで国立の群馬大学に入学。
そしてあろうことか、
『気楽にできるから』という理由で準硬式野球に入部。
硬式野球のキャリアに終止符を打ってしまいました。
『才能の宝庫』
だっただけに、
内外から本当に彼の才能を惜しむ声が多く上がりましたが、
そこは彼一流の”人生の美学”があったのでしょう。
しかしあの甲子園で見せたものすごいスイングの速さと打球。
今でも群馬県高校野球ファンの間では、
【伝説のスラッガー】
として、語り継がれています。
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