思いつくまま、気の向くままの連載記事。
第2回は『関東編』です。
≪選抜出場校 思い出編2≫
関東代表 木更津総合(千葉) 3度目(2年連続)
夏4度出場 甲子園通算8勝6敗
木更津総合というと、『木更津中央』時代の70年代に、千葉では甲子園を狙えるチームとして位置づけられていたのが、ワタシが最初にこの学校を知ったきっかけでした。しかし、時は銚子商・習志野の2強時代。しのぎを削る両校がともに全国制覇を成し遂げるなど『野球王国』の名をほしいままにする地区だったため、木更津中央の出番はありませんでした。その木更津中央が復権するのは、2000年代に入ってから。現在の五島監督が就任してからですね。印象に残っているのは08年のチームですね。春の関東大会で、東海大相模、横浜という神奈川の強豪を連覇して優勝。その勢いをかって夏の甲子園もものにしました。投の2本柱に、その後早大でも活躍する地引捕手を中心に、キッチリと勝ちをものにしていくチームでした。そしてその後は、12年に黄本、13年に千葉、そして昨選抜は早川と甲子園に登場するたびにしっかりとしたエースを擁して、勝利をものにしたりしています。しかしながら、千葉代表として甲子園でインパクトのある戦いをしたかとなると、まだまだ。ライバルの銚子商、習志野に成田、千葉経大付属など、甲子園で『ああ、あの時のチームは・・・・』と地元のファンに語られるような戦いを繰り広げてきたチームに比べると、まだまだ甲子園での戦いは『これから』といったチームです。甲子園の勝利の校歌斉唱時に『全力で歌う』シーンばかりが取り上げられているようでは、ファンの印象には残りません。関東を制した今年のチームで、何とか全国の強豪に挑んでいきたいものです。
関東代表 常総学院(茨城) 9度目(2年連続)
夏15度出場 甲子園通算 38勝21敗 優勝2回 準優勝2回
もう、言わずと知れた北関東の代表的なチームで、名物監督である木内監督の姿とともに、高校野球ファンの脳裏に焼き付いて離れないチームです。今では強豪の名をほしいままにしている常総ですが、その登場は新しく、甲子園初登場は昭和62年のこと。まだ30年ほどの歴史しかありません。そして最初の登場は、『繰り上げ出場』だったこともまた、珍しいことですね。何しろ取手二であの強かった”最強PL"を破った木内監督が就任して、高校野球界の話題を独り占めしていた常総学院。『いったいどんなチームに仕上がるんだろう』とかたずをのんで見守っていたファンの前に登場したのは、大会のわずか数日前にバタバタと補欠校から繰り上がって出場したチームでした。しかしあのえんじ色の早稲田カラーのユニフォームが甲子園で躍動するまで、さほど時間はかかりませんでした。甲子園で戦うための準備など何もしていなかった『繰り上げ出場』の選抜大会では初戦敗退したものの、その悔しさと経験を持って臨んだ夏の甲子園では、そのえんじのユニが、甲子園狭しと躍動しました。小さなエース島田に一年生ショートの仁志ら、のちにプロ野球で活躍する選手も揃えたこの軍団は、この一度の甲子園だけでファンの脳裏に深く『常総学院』という名前を刻みつけました。尽誠学園・伊良部、沖縄水産・上原、中京・木村とのちにプロで活躍する三人の好投手を次々に攻略、そして『大会NO1』の呼び声が高かった東亜学園の川島相手に島田が一歩もひるむことなく投げ合い、最後はサヨナラで決勝進出を決めた準決勝は、語り草になるほどの好試合でした。決勝では春夏連覇のPLに敗れましたが、”大会の華”は間違いなく常総学院でしたね。その後は春も夏も全国制覇を遂げ、木内監督引退までの間に獲れる栄光はすべて獲った感のある常総学院ですが、やはり最初に挑んだ昭和62年の夏の大会が、いまだにワタシには一番印象に残っています。ワタシの勝手な印象なんですが、昭和59年の取手二、そしてこの62年の常総学院の頃の『木内采配』は、選手を伸び伸びとプレーさせるということが徹底されていて、『グラウンドに出たら選手に任せる』という様な采配だった印象が強いです。しかしマスコミに過度に『木内マジック』と喧伝され、また木内監督を慕って数多の好選手が集まってくるようになってから、なんだか試合の中で采配をこねくり回すような感じになっていった気がして、その変化があまりワタシ自身は好きではありませんでした。90年代~の木内采配は、『勝つための方法論』が変化したように、感じていました。
しかし2013年夏、佐々木監督が久しぶりに『オリジナルの常総らしいなあ』という戦いぶりを見せてくれて8強まで進出。更に昨春の8強進出。そのチームの変化が、なんだか妙にうれしくて、また常総を一生懸命応援するようになってきている自分に気が付いたりもしています。今の常総学院、いいチームです。いい野球をします。今年もまた、オーソドックスな戦法の中にキレを感じさせる野球で、上位を狙ってほしいものです。
関東代表 桐生第一(群馬) 5度目(2年ぶり)
夏9度出場 甲子園通算 17勝12敗 優勝1回
桐生第一がセンセーショナルに高校野球の舞台に登場したのは91年センバツ。ホッカホカの初出場校が、いきなり8強に進出して、世間をあっと驚かせました。それまでの群馬県高校野球界は、公立校優位だったものを、桐生第一が登場したことでガラッとその流れを変えるきっかけになりました。桐生第一はそれまでの群馬県にはない『大型チーム』を毎年作り上げて、『全国でもしっかり戦える』チーム作りを押し進めました。それが結実したのが99年。安定感抜群のエース正田を軸に『負けない野球』を押し進めたチームは大会に入ってからグングンと力を伸ばし、ついには群馬県勢初の全国制覇を達成することになりました。相手好投手に抑え込まれながらじっと好機を待ち勝ちをもぎ取った初戦の比叡山戦、3回戦の静岡戦、準決勝の樟南戦などは、このチームの真骨頂でした。そして決勝は、すべての呪縛から解き放たれたように打つは打つはの大花火!お祭りのような試合でした。埼玉・上尾高校出身の福田監督は、チーム作りはまず投手陣を含めた守りからの哲学でしっかりとしたチーム作りを進めていき、そのベースの上に大型選手ならではのパワーある攻撃力をミックスさせて、甲子園で群馬県勢がそれまでなし得なかった偉業を成し遂げました。そしてその後の群馬県勢は、有力チームが次から次から登場。今や関東屈指の激戦地として、レベルの高い戦いを繰り広げています。県勢2度目の全国制覇を達成した前橋育英や、機動破壊で名をはせる健大高崎など、強豪チームの宝庫です。それもこれも、桐生第一がその扉を開いたことから始まっている歴史です。桐生高校の稲川監督や、前橋工、高崎商、前橋商が作ってきた『公立の歴史』の上に絶妙な味付けをした『私立の強豪たち』が、群馬の隆盛の主役となっています。
(つづく)
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