息子がまた帰省しています。
うちの父や義母が、誕生日のお祝いをしたいというので、わざわざ来てくれました。
22歳の誕生日当日は、彼女とふたりで既にお祝いしているのですけれど……。
義母はそんなにしつこい質問はしないのですが…
父は同じ質問や同じ話を繰り返ししてしまうので、若い人にはめんどくさいと思われそうなのに…
いつもながら辛抱強く、笑顔で優しく受け答えしてくれました。
相変わらず話がうまいので、みんなが大笑いするようなネタもたくさん提供してくれて。
おかげでお年寄りたちは、とても嬉しそうで、幸せそうな笑顔を見せてくれました。
毎度毎度、ほんとにありがとう。
息子の、科学の研究者としての優秀さなどより、そういう優しさが一番、親として誇らしいです。
息子の研究室には、今インド人とクロアチア人の外国からの留学生がいるのですが…
先日新たに、ナイジェリアからの留学生が加わりました。
アフリカ諸国から来た人を迎えるのは、研究室でも初めてのことらしいのですが…
発展途上国の人だけにお金はなくて、知識や実験の手技も先進国のメンバーたちより劣るらしいのですが…
たくましさや、学問への熱心さ、向上心は日本人や他の外国人より上らしく、好感が持てると息子。
とりあえず、新しく入った外国人の身の回りの世話は、一番年下の研究員がするらしいのですが。
息子の同期の人たちふたり(いずれも女性)たちは、英語が息子ほど得意でないらしく…
結局息子が、まだ来たばかりの留学生の、何から何までお世話する係になっているとのこと。
何しろ彼は、日本語が「アリガトウゴザイマス」ぐらいしか話せず、右も左もわからぬ外国で。
まず到着した成田へ迎えに行っての、バゲージロスト・トラブルの対応から始まって…
住む家探しや、奨学金の受け取り、住民票の取得、銀行口座の開設などなど、やることは山ほどあると。
おかげで、しばらく自分の仕事は手に付かないほどだそうです。
なるべく日本の生活に慣れたいから、自炊でも日本風の「白飯」を食べたいというので…
炊飯器の購入と使い方の指導まで。
おかげで、ものすごく感謝されて「君は信じられないぐらい良い人だ」と言われたとか。
国の家族に「この人物に大変お世話になったおかげで、何とかやれている」と報せるために…
二人で並んで撮った写真を、ナイジェリアの家族にネットで送信したみたいです。
特に大変だったのは、不動産屋で部屋を探して決めたときで…
最初に言われた家賃が、たとえば3万円だったとしても…
入居時には、数か月分の家賃先払いや、敷金礼金だの、保険料だの、保証金だのがかかって来て…
15万ぐらいかかるのが、外国人には理解のほかで…
明らかに「俺が外国人だから、日本人が騙そうとしているのではないか」と思ってしまったらしく。
それぞれの加算金の「意味」を、英語で説明するのに、とても苦労したそうです。
すべて納得してもらった後も「そうは言っても、そんなお金出したくても持ってない」ということになり。
結局大学の研究棟に戻って、教授にわけを話して、貸してもらうことになったと。
教授も、そういう留学生のトラブルには慣れているとはいえ、ポンと貸してくれるのは本当に親切です。
そんな中で息子もその留学生も、一緒に実感したのは…
どこへ行っても日本人が、本当に英語が苦手だということ。
成田でロストした荷物を探してくれる係の人とか…
大学の「留学生相談課」の係の人とか…
そういう人は外国人を相手にするのが仕事なので…
少なくとも息子は手を放して、自分で直接交渉してもらえるだろうとおもったら…
「すみません、言葉に自信がないので…」と係の人に言われて、仰天したと。
ナイジェリア人も「なんで日本人はこんなに英語ができないのか?学校では習わないのか?」と質問され。
日本人は学校で6年とか8年とか英語教育を受けるけれど、ほとんど役に立たない物であるのを説明して。
「じゃあ君はどこで英語を学んだのか?外国留学の経験があるのか?」と質問されて。
いや、海外生活の経験はない。ただ日本で自分なりに学んだり、外国人と接して慣れたり…
研究上、必要に迫られて使っているうちに上達した、と言ったのだけれど…
相手は、今ひとつ腑に落ちない様子だったみたいです。
また、実験器具もそろっていないナイジェリアの大学研究室しか知らない彼にとっては…
こちらの実験室での作業のすべてが目新しく、興味津々らしく…
初日に、息子の同期の女性がやっている実験を、大男の彼が傍について目を皿のようにして見入っていて…
いきなり英語で質問したりするのを、彼女が「引いて」怖がってしまったときには…
息子がわざと同じような実験を、必要もないのに始めて、自分の方に張り付かせて説明して。
同期の女子からも「〇〇君は本当に神だ!」と感謝されたとか。
その同期たちも徐々に慣れて、ナイジェリア人を怖がらなくなってきたみたいですけれど。
こういうときに、子どものころから外国人慣れしているのが役に立つと、息子自身が言っていました。
海外留学というのが、いかに苦労が多いか、特に行ったばかりの頃はどれだけ大変かというのは…
私自身が経験者なので、よくわかります。
そういうときに助けてもらったこと、助けてくれた人のことは、全部、後々まで鮮明に覚えているものです。
そのナイジェリアからの留学生にとっても、息子のことは生涯忘れられない記憶になることでしょう。
今はお世話が大変でも、そのうち海外で研究するために、日本を飛び出すつもりの息子ですから…
そのときには、いま留学生にしてあげている世話の「因果」が、世界をめぐり巡って…
最後は自分に返って来て…
自分自身、海外でひとから親切を受けて、助けられることに繋がるのではないでしょうか。
情けは人の為ならず。