タレントのryuchell(りゅうちぇる)さんが亡くなりました。
状況から言って、自ら命を絶つことを選んだことはほぼ明らかですが、そうは報じられていません。
最近、自ら命を絶たれた方については、死因には一切触れないのが報道のルールみたいです。
ryuchellさんは「女性風」の外見と仕草ながら、女性のpecoさんとペアでバラエティ番組に出て、タレントに。
2016年にpecoさんと結婚し、その後、男の子を一人もうけましたが…
昨年の8月、pecoさんが人生で初めて好きになった女性で、本来の性指向は同性であったことを公表。
同時に「夫」であることにつらさを感じてしまうようになったとして、離婚届を出したことも公表しました。
pecoさんとは、夫婦ではなく「人生のパートナー」として、共に子育てをして行くと宣言しましたが…
この前後から、生き方が無責任だなどと、主にネット上で激しいバッシングに晒されるようになりました。
いいじゃないですかね、子どもは二人一緒に、責任もって大人になるまで育てると言ってるんだから。
離婚した後、家裁で決められた養育費も払わないような「普通の男」より、まともだと思いますよ。
実際は、外見を完全な女性に近づけるために、肉体的にも人工的なことを行うなどの、一連の行為を…
「実子をもうけた後」にし始めたのが、ネット民の気に障った、ということだったと思います。
「ゲイなのか、そうでないのか、どっちかにしろ!」ということでしょうか。
他人の性指向や性自認が、それほど気になって、口出ししたい人の心理が、私には理解できないのですが。
実際には、人は「異性愛か同性愛か」にきっぱり二分することはできない、グラデーションのあるもののようです。
また、人生の中の時期や、経験する様々な出来事によって、性指向や性自認が変わったり…
また社会的に適合するため、自分自身で抑えつけていた性指向を、人生の終盤になって自覚する人もいるのです。
私だって、中学時代に自慰行為を母親に見つかり…
性的なものを異常に嫌悪する母から(この異常性が老年期に入ってまた別の問題を起こすのですが)…
竹の長物差しで、めった打ちの目に遭わされ、血だらけになるという事件があり。
それがトラウマになって、女性を性的な目で見ることが一時期、恐怖になって…
結果、その直後から高校の途中まで、同性愛になっていました。当時は誰にも言えず隠していましたけれど。
とある80年代女性アイドルに惹かれるようになったのがきっかけで、また異性愛に戻って、今に至っています。
でも、性指向以外の部分では、いろんな物を選ぶ趣味や、考え方が「女性っぽい」らしく…
妻からは「おっさんの皮をかぶったおばちゃん」などと言われているのです。
まあ、おばさんでも何でもいいじゃないかと自分で思っているから…
妻と妻の友達たちの中に男一人混じって、ファンシーな内装のパンケーキ屋さんとかカフェに平気で入ったりします。
自分で着るシャツのうち、いちばんお気に入りの物の色は、ピンクです。
そういえば、クリニックで小さい男の子がピンクのスリッパを履こうとしたら、母親がむきになって…
ブルーのスリッパのほうを「こっち履きなさい!」と叱り付けていた、という話を目にしたことがあります。
あなたはどうですか?我が子やお孫さんが、男の子なのに、赤いランドセルが欲しいと言ったら、どうしますか?
そもそも「男の子の色」「女の子の色」なんて概念が存在するのは、日本だけだってことを知りましょう。
信じない人がいるかもしれないけれど、これ、本当ですよ!
異常なんです。男と女それぞれが「身に着けるべき色」なんてものまであるっていうことが。
いつからなんだろう……少なくとも戦国時代までは、武者の緋縅の鎧とか、赤備えの甲冑の軍団とか普通だったわけで。
かなり新しい「決まり」なんじゃないですかね。
とにかく、そんな私を他人は、本当は変な目で見ているのかもしれないけれど、私は何も苦痛ではないです。
いろんなことが中性的というか、あいまいな人、本当は、結構いるんじゃないでしょうかね。
隠していたり、自分で認めたくないから、自分自身を偽っていたりするだけで。
ちなみに、同性間の性行動は「自然の摂理に反する」と思っているのが実は間違いで、最新の動物行動学によって…
人間以外でも、脊椎動物の間では、同性間の性行動が広く行われている、という研究が発表されています。
ニューズウィーク日本版に載った記事を参考までに貼っておきますので、ご興味のある方はどうぞ。
自然界における同性間の性行動には、ちゃんとした存在理由がある、という説ですね。
同性愛を内心で嫌悪する人が多いのは、それがタブーであるという社会規範を、育つ中で教えられたからであって…
「自然の摂理に反する」ものではない。
少なくとも、人間以外の自然界にも、ごくありふれた行為であるらしい、というのは確かだと思います。
日本の文化的伝統の中では、江戸時代の前期まで男の同性愛は、特に武士と僧侶の間で「衆道」と呼ばれて…
異常でも何でもない、ごく普通のこととされていました。現代の私たちとは全く感覚が違ったのです。
朝廷の後宮や、江戸幕府の大奥では、女性の同性愛が黙認されていました。
またこれは日本だけの文化ではなく、性交を禁じていた宗教の修道者、戦士、後宮の女官の間での同性愛は…
世界中いたるところにありました。
やや話が脱線しましたが…
ともかく、想像力が足りなかったり、ものを深く考える事のできない人、考えるのをめんどくさがる人は…
白か黒か、善か悪か、敵か味方か、男か女か、などなど…
すべてを「二分法」で捉えたがります。
でも、現実のこの世界は、そんな風にシンプルにはできていません。
人間もまた自然界の一部ですから、同じことです。複雑で、多様で、また不安定な生き物なのです。
性自認や性指向といったものもまた、実は、百人いれば百通りなのだと私は思います。
ただ、社会がものすごく大雑把な枠組みを作って、そこに当てはまらない者を排除するから、それが怖くて…
みんなが何かのカテゴリーに「自分を当てはめている」だけなのではないか。
だから、個人的にはryuchellさんの言っていることや、人生の選択がそれほどおかしいとは思いませんでした。
でも人間は……もしかするとこの島国=ムラ社会に慣れてしまった人は特にそう、である気がするのですが…
ごく狭い範囲で、しかも今現在、とりあえず世に流布しているだけの…
世界観、価値観、倫理観、家族観、ジェンダー観etc...
の枠にはまり切らないものを、嫌悪し、忌避したがるもののようです。
それに当てはまならない者は、集団でリンチに遭わせて、追放するか、出て行かなければいじめころす。
ryucellさんを死に追いやったものが、何だったのか、亡くなったニュースの動画についた…
匿名の人々の心無いコメントを見れば、想像がつくと思います。
人の死を「ギャグ」だと言い放ち、故人を「化け物」呼ばわりする…
こういう人々は、実名を明かしても、こういうことを言うのでしょうかね。
卑怯者どもが!
さらにヘドが出そうになるのは、こうした心無いコメントに関していえば……
同じようなテレビのキー局のニュースでも、やたらと付いて炎上しているものと、そうでないものがある。
要するに、誰かがクソリプみたいなのを付けて、それがちょっとでも放置されると…
尻馬に乗って、どんどんクソリプを付けるやつが、引きも切らず出てくるというところ。
周りを見て、そういう「空気」になっていないところには、1件もクソリプがつかない。
みんな、空気を読んで、リンチやいじめをしているんですよ。
倒れた者がいると、こいつなら叩いていいんだと、すかさずハゲタカのように群がって、言葉の刃を振りかざす。
そうした暗い群集心理が、この人を死に追いやったのでしょう。
みんなそれが怖いから、空気を読んで、同調して、みんなが叩くなら叩く、叩かないなら息をひそめている。
こちらのツイートも見てください。
人権の侵害に加担するとわかっているなら、決して沈黙してはいけない。
まさにその通り。
それにしても、そんな同調圧力の強い、息の詰まるような社会が、本当に「美しい国」だと言えますか?
自然や文化財がいくら美しくても、日本人の心根が醜ければ、美しい国だなんて、恥ずかしくて言えない。
そうじゃないですか?
もっとみんなが、正直に自分を表現し、自由に、心を開放して生きられる社会…
本当の意味で「多様性」が確保された社会になればいいのに。
というか、多様性のない単一的な生物集団は、環境の変化にとても弱い。
それは人類誕生よりずっと前からの、自然の「摂理」で、多様性のない種や群は、自然に淘汰されて来たのです。
だからそれこそガラパゴス島のように閉じられた、変化や多様性の少ない生態系に、外から違う生物が入って来ると…
旧来の生物は、たちまち絶滅の危機にさらされるのです。
ムラ社会とか、島国根性とか、そういうものが通用するのは、外界との接触を断っている間だけ。
まあ、だから徳川幕府は「鎖国」をしたのでしょうけれど。
もう「鎖国」なんてしたくてもできない日本。
鎖国して「日本は日本、他国と付き合う必要ない」と言うには、人口を今の三分の一とか四分の一とかに激減させて…
しかも農林水産業、つまり食料の生産に90%ぐらいの人手と資本を集中させて…
さらに、ほぼすべてのエネルギーを自然エネルギーに頼るようにする必要がある。
いや、ムラ社会、ガラパゴス社会の論理が通用しなくなっている理由は、物資の問題からだけじゃない。
それは、狭い地域の小さな集団でだけ「情報」が共有されている環境だから、通用するんです。
そもそもこれだけ通信が発達し、インターネットなんていうものまであって…
世界が情報という観点からも狭くなっている時代、情報鎖国もしないといけない。
現実問題として、できますか?
できたとしても、それが良い社会だと言えますか?あなたはそれを望みますか?
かつてこの国は「外」に自分たちを合わせるのではなく…
資源を持つ、周辺の国々の文化や、言語、宗教のほうを無理やり日本に同化させて…
単一な「大日本」「大東亜」を建設して、でかい日本の中に籠って生き残る、ブロック経済をもくろんだ。
でも、失敗して敗戦したんしょ?
同じことを繰り返して、世界を相手に戦争しますか?
何度も同じ失敗は許されませんよ。また失敗したら、今度は「日本」というものが消滅する可能性が高い。
なら「ムラ社会原理」はもう捨てて、外向きにも内向きにも、柔軟で、寛容で、多様性の確保された集団になる。
いろんな人が生きやすい世の中を作る。
それ以外に、生き残る道はないんじゃないですか?
それこそ、現実問題として。
そうでないと、何億年も前の太古から続くこの星の「摂理」によって、日本、マジで滅びますよ。
そんな嫌なこと、考えたくなかろうが何だろうが、滅びが迫っていることに変わりはない。本当ですよ。
諦めて何も考えないことにするか、日本の未来、子どもたちの時代が持続可能なように努力するか、の選択です。
そこまで大げさに考えたくない、にしても、みんなが目を吊り上げてひとを指さして…
「標準」からはずれたところがあるのを非難し合っているような、そんな息苦しい社会はもうやめましょうよ。
何が好きだろうと、誰が好きだろうと、どんな格好をしようと…
他人に加害するのでさえなければ「まあいろんな人がいますよ」「別にいんじゃね?」で済ます。
そういう世界のほうが、誰もが気楽で幸せなんじゃないですか?
まあ、現に自分が幸せではないから、人を指弾したり、差別したり、いじめたりするのでしょうけれど。
でもね、それは間違い。幸せになるには、それじゃ駄目なんですよ。本当に、それじゃ駄目なんです。
最後に、下の動画をぜひ見てください。
パトリック・ハーランは、最近の発言が個人的には好きでないんですけれど、ここでは正しいこと言ってます。
ではどうぞ。
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