小倉唯さんの、ツイッターアカウントのプロフィール欄は今、こんな風になっています。
《声優です。アーティストのお仕事もしています。お菓子が主食です。コスメ、ダンス、ヘアアレンジが好きです。振り付けや作詞もやります……》
実際はそれ以上にいろんな役割をこなして、自己プロデュースができる…
「クリエイター」兼「パフォーマー」になりました。
もともと子役さんだった唯さんですが、小学校を卒業しようというタイミングでアイドルに転身を夢見ます。
お母さんには反対されたようですが、結局『ハロープロジェクト』の事務所のオーディションを受けます。
そのオーディションには落ちましたが、同じハロプロ系で、声優とアイドルを同時に育てるという趣旨の…
「アップフロントスタイル」という事務所のたかみゆきひさ社長の目にとまり、所属することになりました。
(その後事務所は「スタイルキューブ」と改称)
ハロプロのオーディションに落ちたことを、たかみ社長は「へえ、この子を取らないんだ」と意外に思ったそうです。
グループアイドルの中に入ると、身長が低すぎてバランスが悪い、ということだったかもしれません。
あとは、声がやっぱりスカスカのハスキーボイスで、歌も上手じゃなかったからでしょうか。
それでも、ずば抜けた「アイドル性」を持っていること(単純な「容姿」ということでなく)、それから…
なにより、真面目で「人一倍努力できる力」を持っていることを、たかみ社長が見抜いたのだと思います。
当時、事務所が主催していた、アイドルの卵が出演する小さなイベントに出るようになった唯さん。
ステージでは、アニソンやアイドルソングのカバーを歌っていたようです。
同時に「特徴のある声を生かせるのでは」ということで、声優のオーディションも受けるよう勧められます。
そして事務所に入ったばかりのころ、あるソーシャルゲームの、アバターのキャラボイスの仕事をします。
そのゲーム自体はプロジェクトがとん挫したため、結局「幻のデビュー」になりましたが…
この収録で、今仲良しの日高里菜さんと出会っています。日高さんもこれが初めての声優の仕事だったとか。
一方アイドル業のほうでは、同じ事務所の、石原夏織さんとコンビを組むことになります。
後に日本武道館公演を大成功させるまでになる、伝説的な声優デュオ『ゆいかおり』の誕生でした。
といっても、いきなり売れたわけではなくて、最初のころは…
「お客さんより10センチでも高いところで歌えれば、まだよかった」
「ライブでお客さん数人なんてこともあったし、路上ライブをしても、誰も立ち止まってくれなかったり」
というありさまが続いて。
事務所の衣裳部屋の隅っこを『ハムスターハウス』と呼んで、そこでふたり膝を突き合わせて…
「私たちこれからどうなるんだろうね」と不安な気持ちを語り合ったそうです。
そんな下積み生活が終わったきっかけは…
VOCALOIDの、メインキャラだった初音ミクを、動画の中で歌いながらダンスさせるという…
「Project DIVA」で、初音ミクの動きのモデルとなる「モーションアクター」に唯さんが選ばれたことでした。
選ばれた理由は唯さんがダンスの「天才少女」だったのと同時に…
身長や体型が設定上の初音ミクに近いこと、つまり二次元のキャラクターのようなスタイルだったからでした。
そして、唯さんが身体のあちこちにセンサーを付けてダンスを踊り…
その動きをPCで解析して、初音ミクのダンス映像が作られました。
そして、唯さん自身が初音ミクのダンスを「踊ってみた」の動画をニコニコ動画に上げたのがバズり…
初音ミクの「中の骨の人」として、小倉唯の名前がサブカル界隈で、初めて広く知られるようになったのです。
こちらが、その動画です。
まるで羽が舞っているような軽やかな動き。これでまだ13歳ですから。
この動画の評判をきっかけとして『ゆいかおり』もインディーズデビュー、続いてメジャーデビューにこぎつけ…
唯さん、夏織さんも、声優として本格的にデビューし人気になるという具合に、とんとん拍子に進みました。
結局、唯さんをブレイクさせる起爆剤になったのは、もともと一番得意だった「ダンス」でした。
芸は身を助ける、ということですね。
もちろん、ブレイクして売れること以上にこの世界で大変なのは「売れ続ける」ということです。
そのために必要なあらゆる努力をし、多くの犠牲を払って来たからこそ、現在の立場があるのです。
とくに「声優アーティスト」が売れ続けるために必要なのは、ベースとなる声優としての技量です。
たとえ声のお芝居そのものでの収入が、自分の収入全体の、1~2割ぐらいでしかなかったとしても。
そのことをよくわかる賢さがあった、というのが「売れ続けた」秘訣なのかもしれません。
それでも「踊ってみた」で世に出た、という経験と関係があるのか、ないのかわかりませんが…
今でも唯さんは、いろんな「踊ってみた」の動画を、YouTubeやTikTokでよく配信しています。
たとえば、こんなもの。
https://vt.tiktok.com/ZSdx1FtwU/?k=1
人間離れした体の細さと薄さに驚きますが、こんな踊りにくそうな恰好で…
廊下でちょこっと、ほんとに軽く「踊ってみた」だけで、これだけ見せるのは、さすがです。
そして今、再び初音ミクと関係のある仕事をしている唯さん。
『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』というアプリゲームの中の…
『MORE MORE JUMP』というグループの、花里みのりというキャラクターの声を担当しています。
初音ミクの「中の骨の人」だった時代から十数年を経て、再び初音ミクと共演しているという。
その関係で、キャラクターのダンスを「踊ってみた」動画を、自分のプライベートYouTubeに上げました。
こういうものです。
唯さんらしい、丁寧で精密な踊りかた。性格もダンスに出るんですかね。
ステージでは、ダンスと生歌を両立させた総合パフォーマンスで魅せる小倉唯ですから…
やはり「歌手」ではなく「アーティスト」なんですよね。
最後に、最新シングルのMVの、ダンスバージョンを貼っておきます。
周りは、メジャーなアイドルグループに振り付けとダンス指導しているような、一流のダンサー&コレオグラファー。
その中に交じって、この動画、本番一発撮りでOKになったそうです。凄いスキルですね。
まだまだこれからどこまでパフォーマンスレベルを上げて行くか、本当に楽しみです。