こんなぬいぐるみを買いました。
アルファロメオの公式サイトで買ったマスコット。
日本では『ビショーネ』と呼ばれています。
かわいいでしょ?(うちの妻は大のヘビ嫌いなので、こんなゆるかわ系のキャラでもいやだそうです)
アルファのマスコットですが、イタリア語ではBiscioneと書き、発音をより正確に写すと『ビッショーネ』と表記したほうがいいかと。
まあ『カフェラテ』と日本で呼ばれているイタリアの飲み物が、本場ではCaffe Latteと書いて…
イタリア語の翻訳者・通訳者としてもご飯を頂いている身としては『カッフェラッテ』と表記したくなるのと同じです。
身体の部分にワイヤーが入っていて、折り曲げると自立してくれます。
ぬいぐるみを買ったついでに、ビッショーネくんの由来、そしてそれにまつわるうんちく話を、少々。
ビッショーネのオリジナルは、アルファロメオのエンブレムの中に入っている大蛇です。
これはメメとペッピーノをいつも見ていただいている車屋さんからもらった文鎮ですが…
正確には、この形は1972年~1982年まで使用されていたものです(車についてるのは文字と縁がシルバー)。
このエンブレムは112年前の創業時からあるもので、時代とともにマイナーチェンジを繰り返して来ました。
中央の円の右側で、人を飲み込もうとしている、王冠を戴く大蛇がビッショーネですね。
これは、もとはアルファロメオの故郷であるミラノの街を、中世-13世紀から15世紀にかけて支配していた…
騎士出身の貴族、ミラノ公「ヴィスコンティ家」の紋章です。
ヴィスコンティ家が、何でこんな変な紋章を使っていたのかについては、諸説ありますが…
ヴィスコンティの先祖が、森に出て人を食っていた大蛇(あるいはドラゴン)「ビッショーネ」を退治して、英雄になった…
という伝説から来ている、という説が好きだし、まあ一番もっともらしいかと思います。
ちなみに有名なイタリアの映画監督、ルキノ・ヴィスコンティは、ミラノ公ヴィスコンティ家の傍系の出身です。
そして、アルファのエンブレムの左側にある白地に赤十字は、ミラノ市の紋章から取ったといいます。
ビッショーネとミラノ市の紋章を合わせて、アイコニックなアルファのエンブレムが出来たのは…
アルファロメオ創業の年、1910年。
まだ社名が『Alfa Romeo』となる前、『A.L.F.A』=Anonima Lombarda Fabblica Automobiliであったころ。
そもそもの発案者は、技術部門の社員の一人だった、ロマーノ・カッターネオという人だそうです。
彼はミラノ市内にある、かつての領主の居城『スフォルツェスコ城』前の電停から市電に乗って通勤していて…
城の上に翻るミラノ市の旗と、ビッショーネの旗を見て、この組み合わせが頭にひらめいたのだとか。
ちなみにスフォルツェスコ城という名前は「スフォルツァの城」という意味で、ヴィスコンティ家の家臣で、主家が絶えた後、ミラノの僭主となったスフォルツァ家から来ています。
スフォルツァ家も、支配権の正当性をアピールするため、主家の紋であるビッショーネを家紋に使いました。
なので、今もこの城の壁にはビッショーネが刻まれています。戦前には旗も翻っていたかもしれないです。
まあ、アルファロメオというのはいろんな伝説に彩られたブランドで…
その伝説のすべてが本当かどうかは、正直わからないんですが。
でも、先日このブログにコメントを下さったフォロワーさんのおひとりが…
1993年にDTM=ドイツツーリングカー選手権でチャンピオンになった、アルファの155V6TIの画像を見て…
ヨーロッパの騎士を連想する、と書いておられたのは印象的でした。
それはやはり、マシンの外観に中世の騎士の紋章=ビッショーネや…
中世から続くミラノ市の紋章が使われているところから来る、というのは確かだろうと思います。
そしてアルファのエンブレムは、最初から、中世の騎士を連想させるアイコンとして…
ある程度、意図的に考えられているのではないか…という気もするのですよね。
それは、112年前の創業当初から、黎明期のモータースポーツに積極的に関わって来たアルファが…
「競う車」「戦う車」のイメージを前面に打ち出して来たことと、リンクしていると思うのです。
というわけで、今度はアルファと「騎士」のイメージ…
そして、モータースポーツ挑戦の歴史と関わる、他の「シンボル」の話を書きます。
本日はこれまで。