きいろをめでる

黄瀬、静雄、正臣の黄色い子達を愛でる同人二次創作短編小説中心。本館はAmebaです。

キスの過去(静正前提の臨正)

2010-07-02 13:12:13 | 小説―デュラララ
腕を掴まれ、振り向きざまにキスされた。

目を見開いた先にあった顔に、これほど欲情を感じないキスがあったものかと、抵抗を見せた。

だが後頭部を押さえられ舌を捩込まれ、腰もとを甘く撫でられたら、なす術もなかった。


「ん、あっ・・・・・・やっ・・・やめろっ!」
ドンッと強引に体を引き剥がした。
「おっと」
悪びれた様子もなく、目の前の男は体勢を整える。

「やぁ、正臣君」
「・・・何しにきたんですか、臨也さん」
「つれないなぁ、君に会いにきたんだよ?」
正臣の険しい表情とは逆に、楽しそうに笑う臨也。

「まぁでも・・・・・・こんなにキスが上手くなってるとは思わなかったよ、シズちゃんだろ?」
「ッ!!」
一方的に蹂躙しておいて、上手も下手もないだろうとは思ったが、発言の意味と真意に頬が熱くなる。

・・・・・・上手く、なっている。
過去を示唆する言葉。

「俺が今から君を奪ったら、シズちゃん嫌がるよね。あはははは、それもいいなぁ」

正臣の胸が痛み始める。
嫌だ、嫌な予感がする。
このままじゃ・・・過去と同じだ。

「ということで、俺は君を奪うことにしたよ」
ドラマや小説だったら、思わずうっとりしてしまうような言葉も、正臣の耳には苦痛でしかなかった。

「俺はシズちゃんが大嫌いだからね。もちろん、君のことは大好きだ。愛してるさ。だからこそ、俺は君を手に入れる。傷付けても他人が死んでも、君の心が死んでも、俺は徹底的に君を愛し、かつ愛さないで、自分のものにする。君が何と言って抵抗しようが、全て俺の思い通りにしてみせる」

嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
そんな独占欲いらない。
そんな狂愛いらない。
オレはただ、本当の愛がほしいだけなのに。
今と未来を見て生きていくって決めたのに。

折れそうになる心を必死に立て直して、言葉を絞り出した。

「オレは臨也さんのこと、大嫌いです」
キッと目線を上げ、見据える。
「・・・・・・言いたいことは、これで終わりですか?」
「嫌がられると、余計煽られるって知ってる?・・・ま、言いたいことっていうか、言うべきことは言ったし」

急に引き寄せられて、首筋に痛みを感じる。

「それ・・・キスマークで宣戦布告ってことで」
「ッ・・・・・・!!」
ニヤニヤと笑う相手を、羞恥の念を込めた目で睨みつけた。

「じゃあね、また会おう。正臣君が池袋にいる限り---いや、生きている限り、いつでも会えるから」





正臣は何も言わなかった。
いや、言えなかっただけなのかもしれない。


俯いて、アスファルトを見つめていた。



今はただ、本当の愛とは何なのか、知りたかった。