きいろをめでる

黄瀬、静雄、正臣の黄色い子達を愛でる同人二次創作短編小説中心。本館はAmebaです。

はこんで、はこんで(静正)

2010-10-07 18:00:57 | 小説―デュラララ
ふわり。
何か甘い香りが、正臣の鼻をくすぐる。

(・・・あれ・・・・・・?)

窓は開けていないから、室内からの香りなのだが、これは。

(金木犀・・・なんで、この近くには植わってないのに)

甘い香りは金木犀のそれで、自分と静雄しかいない室内に優しく広がっていた。


(どこだろう)
(どこだろう)

(あ、)

(みつけた)


「静雄さん」
「ん?」

声をかけてから、前からぎゅっと抱き着く。
突然のことに、静雄は狼狽していたようだったが、どちらかというと照れが大きかったようだ。

「おい、紀田?」
「静雄さん、今日もどこかで喧嘩してきたんですか?」

抱き着いたまま、正臣が静かに問い掛ける。

「ん?・・・まぁ、今日はノミ蟲を殴りにいったくらいだけど」
「そのとき、どっか木の間とか通りました?」
「あー、どうだったかな、多分追い掛けてるときとかに」
「そうですか」
「・・・どうしたんだよ?」
「いい匂いしますねー・・・」


問い返しても、答えずに静雄の胸にうずめている正臣の顔を、手で上を向かせ口づけた。

「・・・静雄さん?」
「・・・・・・俺は浮気とか、してねぇぞ」
「・・・は?」

突然の発言に、ついキョトンとしてしまう。
しかしその考えに至った理由がわかって、笑いを堪えられなくなる。

「あはっ、あははははっ!!静雄さん、ちが、違いますよぉ」
「・・・何なんだよ、香水なんかつけてきてねぇぞ」

少しムッとした静雄に、まぁまぁと笑いながら言う。

「香水の匂いで女の子との浮気を判別すると思ったんですよね、静雄さん」

無言でこくりと頷く静雄。

「違うんですよ、オレが言ってたのは、」


そう言って、静雄のワイシャツの襟や胸ポケットに手を伸ばす。

摘みあげたのは小さな橙。
白い掌で、やわらかく燃えるような。



「金木犀付けて、帰ってきちゃったんですね」
「・・・あ、」




(だから、いい匂いするんですね)
(ああ)
(もっとぎゅってしてていいですか?)
(っ・・・・・・・・・・・いいよ)