ふわり。
何か甘い香りが、正臣の鼻をくすぐる。
(・・・あれ・・・・・・?)
窓は開けていないから、室内からの香りなのだが、これは。
(金木犀・・・なんで、この近くには植わってないのに)
甘い香りは金木犀のそれで、自分と静雄しかいない室内に優しく広がっていた。
(どこだろう)
(どこだろう)
(あ、)
(みつけた)
「静雄さん」
「ん?」
声をかけてから、前からぎゅっと抱き着く。
突然のことに、静雄は狼狽していたようだったが、どちらかというと照れが大きかったようだ。
「おい、紀田?」
「静雄さん、今日もどこかで喧嘩してきたんですか?」
抱き着いたまま、正臣が静かに問い掛ける。
「ん?・・・まぁ、今日はノミ蟲を殴りにいったくらいだけど」
「そのとき、どっか木の間とか通りました?」
「あー、どうだったかな、多分追い掛けてるときとかに」
「そうですか」
「・・・どうしたんだよ?」
「いい匂いしますねー・・・」
問い返しても、答えずに静雄の胸にうずめている正臣の顔を、手で上を向かせ口づけた。
「・・・静雄さん?」
「・・・・・・俺は浮気とか、してねぇぞ」
「・・・は?」
突然の発言に、ついキョトンとしてしまう。
しかしその考えに至った理由がわかって、笑いを堪えられなくなる。
「あはっ、あははははっ!!静雄さん、ちが、違いますよぉ」
「・・・何なんだよ、香水なんかつけてきてねぇぞ」
少しムッとした静雄に、まぁまぁと笑いながら言う。
「香水の匂いで女の子との浮気を判別すると思ったんですよね、静雄さん」
無言でこくりと頷く静雄。
「違うんですよ、オレが言ってたのは、」
そう言って、静雄のワイシャツの襟や胸ポケットに手を伸ばす。
摘みあげたのは小さな橙。
白い掌で、やわらかく燃えるような。
「金木犀付けて、帰ってきちゃったんですね」
「・・・あ、」
(だから、いい匂いするんですね)
(ああ)
(もっとぎゅってしてていいですか?)
(っ・・・・・・・・・・・いいよ)
何か甘い香りが、正臣の鼻をくすぐる。
(・・・あれ・・・・・・?)
窓は開けていないから、室内からの香りなのだが、これは。
(金木犀・・・なんで、この近くには植わってないのに)
甘い香りは金木犀のそれで、自分と静雄しかいない室内に優しく広がっていた。
(どこだろう)
(どこだろう)
(あ、)
(みつけた)
「静雄さん」
「ん?」
声をかけてから、前からぎゅっと抱き着く。
突然のことに、静雄は狼狽していたようだったが、どちらかというと照れが大きかったようだ。
「おい、紀田?」
「静雄さん、今日もどこかで喧嘩してきたんですか?」
抱き着いたまま、正臣が静かに問い掛ける。
「ん?・・・まぁ、今日はノミ蟲を殴りにいったくらいだけど」
「そのとき、どっか木の間とか通りました?」
「あー、どうだったかな、多分追い掛けてるときとかに」
「そうですか」
「・・・どうしたんだよ?」
「いい匂いしますねー・・・」
問い返しても、答えずに静雄の胸にうずめている正臣の顔を、手で上を向かせ口づけた。
「・・・静雄さん?」
「・・・・・・俺は浮気とか、してねぇぞ」
「・・・は?」
突然の発言に、ついキョトンとしてしまう。
しかしその考えに至った理由がわかって、笑いを堪えられなくなる。
「あはっ、あははははっ!!静雄さん、ちが、違いますよぉ」
「・・・何なんだよ、香水なんかつけてきてねぇぞ」
少しムッとした静雄に、まぁまぁと笑いながら言う。
「香水の匂いで女の子との浮気を判別すると思ったんですよね、静雄さん」
無言でこくりと頷く静雄。
「違うんですよ、オレが言ってたのは、」
そう言って、静雄のワイシャツの襟や胸ポケットに手を伸ばす。
摘みあげたのは小さな橙。
白い掌で、やわらかく燃えるような。
「金木犀付けて、帰ってきちゃったんですね」
「・・・あ、」
(だから、いい匂いするんですね)
(ああ)
(もっとぎゅってしてていいですか?)
(っ・・・・・・・・・・・いいよ)