KANON廃園

スタジオカノン21年間の記録

1999年(平成11年)の仕事

2019年08月24日 | カノンの記録
★「週刊ストーリーランド」1999年10月〜2001年9月放送
視聴者から寄せられたオリジナルストーリーをアニメ化するというバラエテイ番組。
特にアニメ好きではない一般視聴者向けというか、絵は劇画調のものが多く、アニオタ好みの美少女系キャラは一切登場しません。
オカルトやブラックユーモア的なお話に人気があったようです。

 第29話 「誰もこない予約席」
 制作 日本アニメーション 
 演出・作画 三浦辰夫

クリスマスイブの夜、海辺のおしゃれなレストランに一組みのカップルがやってくる。
席は満席だが、窓辺の予約席がいつまでも空いている。主人はこの席にまつわるある夫婦の話をしんみりと語り始める・・・。

9月に「天使になるもん!」の作業が終わり、この年は他に特筆すべき仕事はありませんでしたが、1本だけオールデジタルの背景というものをやってみました。

アニメーション制作のデジタル化はすでに少しずつ波及していましたが、仕上げ、撮影に比べて、背景部門はまだほとんど手描き(紙媒体によるもの)が主流でした。
撮影とセルがデジタル化した場合、背景は撮影などにスキャンしてもらうという形を取っていましたが、自社でスキャンをする場合は専門の作業員が必要なのだからスキャン代を別途請求すべきといった声が背景会社から上がっていたような状況です。

デジタル化移行期と言えるこの時期に、たまたまデジタル作品の話が1本あり、試しに背景も全てデジタル描き(フォトショップで作成)してみようということになりました。
もっとも自分はまるでフォトショップ操作など興味もなく、スタッフの一人がデジタル描きを是非やってみたいと希望した為、このお話の中心となるレストランシーンを任せてみることにしたものです。
手描きに少々自信をなくしていたところだったらしく、こういうチャンスを得て、また新たな意欲が湧いてきたようでした。
 設定と原図整理は私がやりましたが、それに彩色してボードを作ってもらい、あれやこれやとチェックを重ねました。

手描きと違って、この当時はどうしても色に深みや渋みが足りないというか、PC 画面で綺麗に見える色はTV ではかなり派手になってしまいます。
そのあたりの調整加減がまだよくわからないころだったので、見た目で良いと思えるものでやっていくしかありませんでした。
のちに別作品で、マスモニだのキャリブレーションだのうるさくいわれて、辟易したこともあります。

演出さんにも直接チェックに来てもらい、あーだこーだと調整を重ねましたが、何しろまだフォトショップのバージョンも低く、PCのスペックもさほどないころの話なので、出来のほどは限られていたかもしれません。


今でこそベテランの美術監督に成長した彼がこの当時のデータを見ればどう思うだろう?と思いつつも、すでにデータらしきものは存在しないのが残念至極。のちにHD が壊れてなくなったとか・・・)

 手描きの背景が何枚か残っていました。


レストランの窓から見える風景。少しづつたそがれていきます。

山の背景が違っているのはなぜだろう・・・と思ったら、どうやら現代と過去で違いを出したようです。


回想シーンでタッチを変えた背景にしています。


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