時には目食耳視も悪くない。

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謎深き国。

2017年07月28日 | 映画
 「ふわ~いっ!ジャパニ~ズピ~ポ~!?」と絶叫していた厚切りジェイソンさんも、すっかり日本に馴染んできたらしい今日この頃。
 日本を舞台にしたり、日本のイメージを取り入れた洋画が時々作られますが、それらの作品を見ると、外国の人が日本をどう思っているのか窺い知ることができて、興味深いです。

 出来上がったものを見ると、なんとなく誤解されているような気分になる作品が多いのが正直なところですが。
 例えば、《ラストサムライ(原題:The Last Samurai)》(2003、アメリカ)や《ウルヴァリン:SAMURAI(原題:The Wolverin)》(2013、アメリカ・オーストラリア)でも分かる通り、やはり根強い人気は忍者や武士です。
 日本刀、手裏剣、弓矢といった原始的な武器なども、外国の方の心を掴んで離さないのでしょうか。
 少々、時代考証がおかしくてもぶっこんできます。「この時代に武士も忍者もいないよ!」というツッコミなど聞いてはもらえません(笑)

 一方、現代の日本のイメージは、アニメやゲーム、そしてハイテクトイレのある国です。
 《カーズ2(原題:Cars 2)》(2011、アメリカ)で、メーターが日本のトイレで当惑しますが、日本人の私にも似たような経験があります。
 「その機能は本当に必要なのか?」と本気で悩む時があります。どこまで進化(複雑化?)するのか、日本のトイレ。。。

 冗談はさておき、もっと、日本や日本人のことを本質的に捉えようとしている映画もあります。

 《レイルウェイ 運命の旅路(原題:The Railway Man)》(2013、オーストラリア・イギリス)は実話を元にした戦争体験にまつわるお話です。
 日本とイギリスの名優さんたちの演技が秀逸です。
 (私は、戦争映画があまり得意ではないので、内容について詳しく書きませんが、気になる方はネット検索してみて下さいね。)

 《官能(原題:IN DEN TAG HINEIN)》(2001、ドイツ)の舞台は現代。
 ドイツ語が話せないに等しい日本人の男子留学生コージが、ドイツ社会の現実を把握できないまま、その社会に生きるリンと出会い、彼女に翻弄されて悲劇的な結末を迎えます。

 ドイツ人の彼氏がいながら、日本の若者コージとの間で揺れ動く自由奔放なリンの恋心を描いた物語だととれないこともありませんが、私には、日本人として、そしてわずかですが実際にドイツで過ごした自身の経験と重なって、この作品を単純に現代国際社会における若者たちの恋愛模様だとは思えませんでした。
 それよりは、異なる国に生きてきた人たちの考え方や経験の違い、それらから生じる埋めようのない溝のようなものを見せつけられたように思いました。

 自国(ドイツ)の社会に馴染めずに、現実を見ないで快楽ばかりを優先するリンと、外国で生活をする十分な準備もせずにドイツへ来て、慣れない環境の中で生活に疲れ切っているコージ。
 そんな二人が、お互いのことを理解し合えたとは思えませんでしたし、この二人の関係が恋愛だとも思えませんでした。
 言うなれば、お互いに無い物ねだりの依存、いわば現実逃避でしょうか。

 「外の世界は楽しい。今自分がいる現実と違って開放的で自由だ。」
 人は得てして、そんなふうに考えがちです。

 外国の人は親切で温かい。言葉が分からなくても、すぐに打ち解けて分かり合える。なんて思っていませんか?
 確かに、観光客には親切にしてくれると思いますし、実際に親切な人も中にはいるでしょう。
 けれども、私たち日本人の中に、悪意の人が潜んでいるように、外国の人の中にも想像以上に怖い人がいる可能性があることを忘れてはいけません。

 また、日本と違い、外国では多民族がそれぞれ違う宗教観や民族性を保ちながら入り乱れて暮らしています。
 話す言葉も、口にする食べ物も、調理法や食事の仕方でさえ、それぞれ違うのです。
 知らない人同士がお互いを理解し合うのも、信頼関係を築くのも、日本でよりも数段に難しいことなのです。

 決して、外国が危険に満ちているばかりで、海外旅行をするべきではないと言っているのではありません。
 日本とは全く違う社会や文化に触れることは、人生経験を豊かにしてくれることは間違いないです。
 ただ、海外では日本人というだけで、詐欺や窃盗などのターゲットにされるくらい、日本人の警戒心のなさが有名ですし、事実、その手のニュースは日本でもよく報道されますよね。
 特に今は、世界中のどこでもテロが起こる可能性があります。出かけるのならば、それなりの覚悟が必要だと思います。

 ところで、この作品の邦題についてなのですが、原題の「IN DEN TAG HINEIN」を直訳すると、「その日の中で(の出来事)」くらいの意味なのに、こともあろうか《官能》となっています。
 しかも、ご丁寧に「ヘア無修正版」という言葉まで付け加えてあります。
 私がこの作品を借りたのは、ドイツ語の映画だったからですし、あらかじめ内容を調べてあったので、この作品がそういうもの(笑)ではないと知っていましたが、この「官能」という言葉につられて、エロい映画だと思って店頭で借りた人は、実際に鑑賞してどう思うのでしょうか…

 この作品をエロティシズム路線で売り出すなんて(しかも、そんなにエロくないですよ)、まさに「ふわ~いっ!ジャパニ~ズピ~ポ~!?」です。




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