『…さっきから何回もゆうてる通りそんなんいらんからっ』
『だからコーヒー1杯分のお金で綺麗になれるんだから』
『コーヒー飲みませんっ』
『今より綺麗になって彼氏にサービス♪しようよぉ』
しつこい…
さっきからしつこいねんっ。変なセールスさんに絡まれてんねん。
それもこれも 大谷が早く来ぇへんからやん。
『おい なにしとんねんっ!』
声の主は待ち人である大谷。
これでセールスさんからもさよならやって思ったのに
『小泉こいつ誰?』
『エステとかのセールスさん…』
さぁ 大谷
セールスさんにあっちに追いやってくれー
『そのセールスなんかになんでへらへらしとんねん。』
『へっ?』
大谷さんなにその見当違いな突っ込みは?
『あたしはへらへらなんかしてへんっ』
『いーや へらへらしとった。』
『してへんっ』
してるしてへんとあたしらは言い合いになってた
『なぁ こいつへらへらしとったよな?』
『あたしへらへらしてませんよねっ』
『い?いやオレにフラれても…』
セールスさんは所在なさげに小さく呟いた。
『してる『してないっ』』
『お前が…『大谷が遅刻…』』
お互いの意見は平行線
ぷいっとお互いにそっぽ向いて…
今日の予定である海坊主のライブ会場へと向かう。
大谷ってなんでこうなんやろ
彼女がへんなセールスに絡まれてたら『オレの彼女に何すんねん』って
男らしく手でも引っ張ってくれるんがふつうちゃうん。
折角 久々のデートやのに 久々の海坊主ライブやのに
なんでこんな微妙な雰囲気になるんやろ…
『…ほいっ』
大谷がそっぽ向いたままあたしに手を差し出してきた。
『おまえは手ぇでも繋いどかんとふらふらするやろっ』
『ふらふらって…』
『とにかく手だせっ』
顔が赤いんは気のせいかな?
『はいはいはいっっ手なっ 』
『はい は一回でええねんっ』
『はーい♪』
ぎゅっと握った手があたしらの仲直りのサイン
END