あかん…
体温計を見ると『38.0』
しっかり熱がある。
昨日寝る前に悪寒が走って…
薬飲まんなあかんなぁ…って思ってたのに
疲れてたのとめんどいのとミックスされてそのまま寝てしもた。
さっき薬箱探したら薬切れててん。
ドラッグストアに買いに行くのもお医者さんに行くのも
なんかダルくって…
しんどい時は寝るんが一番。
昨日の自分を恨みながらあたしは夢の中へと旅立った。
ことっ…
物音に目を開けた。
やっぱり寝るんが一番なんか ちびっと楽になった気がする。
ぼーっとした頭であたりを見渡すと…
キッチンの処に人影をとらえた。
背中?
人がおる…
って…
『泥棒ーーーーーーーーーーーー!!!!!』
一気に目覚めると その人影があたしの頭を小突いた。
『誰が泥棒やねん』
『あー あはははははははは』
忘れてた
あたしは今 一人やないねん
大谷と同棲してんねん。
さっき寝落ちする前に風邪ひいたみたいってメールしたんやった
『ほんま酷いやっちゃ』
『すんません』
あたしはぐったりと布団に倒れこんだ。
大谷が大笑いしてる声が聞こえた。
『リサ 昼飯まだやろ?食えるか?』
『んー』
『リサのこっちゃから何も食わんと寝てたら治るって…』
『うーーーーーーー』
言い当てられて悔しくなった
なんでこの人はあたしの行動をこうも当ててくるんやろ
美味しいかわからんけどな…
ちょびっとでもええから食えと差し出されたお盆には
出来立てのお粥とお茶。
『えっ 何これ もしかして大谷が作ってくれたん?』
『おぅ』
それはうちのおかんでも作らんであろう
ふんわり卵が特徴の卵粥
『おいしそー♪大谷ってこんなんも作れるんや…
それに引き換え あたしときたら…あたしときたら…』
カップケーキ作らしたら焦がすし
だし巻き卵焼かせたら焦がすし
ついでに魚も焦がすし
女子力低すぎや
がくんっと頭を落としたあたしに聞こえてきたんは…
『そんなんつくり方教えてもうたら誰でも作れ…あっ…』
『大谷?教えてもうたん?』
しまったってゆう大谷の顔は耳まで赤い。
『美味しいのん食うて欲しいから…おかんに電話して聞いた。』
嬉しい。
めっちゃ嬉しい。あたしに美味しいのん食べさせたいからって
わざわざおかんに聞いてくれたやなんて…
『いただきますっ♪』
『どーぞ なんなら食わせたろか(笑)』
『ひ…ひとりで食べられるもんっ』
ほんまこのおっさんは…
あたしの熱 これ以上あげる気なん(笑)
『わっ おいしいっ…』
卵とご飯が絶妙なハーモニー♪弱った体に心地ええ。
『ほんま?』
『うんっ これが大谷のおかんの味なんやなぁ…へへへへ』
『アホかっ 教えてくれたんはおかんやけど作ったんはオレや
せやから大谷の美味しいお粥さんってゆえ(笑)』
もーなんでこんな所 噛みついてくんやろ
『はいはい…あっちゃんのお粥さんや』
『こらっ あっちゃんゆうなっ』
『あっちゃん♪お粥さん美味しぃ…ありがとー』
そんなやり取りしてたらなんか具合もようなってきたみたいで
ペロリっとお粥さんを間食した。
『一応これも飲んどけ…風邪薬買うてきた。』
至れり尽くせりとはこうゆう事なんやろなぁ
『…大谷ってきっとええ奥さんになれるわ』
『はい?アホか奥さんになるんはおまえやろっ』
ぐっ……
思いがけないお返事に飲み込もうとした薬がのどでつっかえかけた
水を流し込んでなんとか飲み込む
はぁ…殺す気なん(笑)
『薬飲んだら ちびっと寝とけ…』
『うん。』
『リサ…』
『ん?』
ちゅっ…
寝床についたあたしのデコに大谷の唇が落ちてきた。
『はよぅ 元気になるんやぞ…』
『うん。』
end