大谷先生。
あたしの大好きな家庭教師の先生。
いま 大阪教育大学の2回生
背はちっこいけど…
顔は小池徹平くんに似ててかなりのイケメン。
初めてあったその日から
あたしのハートはストップモーション(古っ)
週3回。2時間の勉強タイムが楽しみで仕方ない。
仕方ないんやけど…
やっぱり勉強は苦手。
『はぁ…』
本日かなりの落ち込み中。
『…どうしたん溜息ついて
それになんか今日暗いで?どうしたん?』
無意識の溜息に気が付いたんか
大谷先生が あたしの顔を覗き込んで尋ねた。
ため息の理由(わけ)あまり言いたないけど、隠してもしゃーないし
あたしは 小さな声で俯きがちにゆうてみた。
『えっと…今日…数学赤点で追試決定…やったりした』
『えっ? どこがわからんかったんや?どの範囲?』
大谷先生は あたしに詰め寄る。
『えっと…指数対数って奴。』
『指数対数って こないだ散々やったやんけ…』
そう言って、先生はため息をついた。
(ように見えた。)
『はぁ こないだ散々やり散らかしました。』
『で…どこ間違えたん?』
『3の2乗やのに2×3したり、引き算間違えたり…』
『うっわ、もったいな!けど…オレもそう間違えた事もある…』
『うっ…。あたしってあかんっ…』
『まあまあ 落ち込むなって…。』
あたしは なんか情けなくて黙り込んでしもた。
部屋の中には時計の針の音と、外を走る車の音だけが聞こえてる
沈黙が…つらい。
すると、大谷先生は突然
『まぁ…もう過ぎたことやしもう悩むな。次がんばったらええねんっ なっ』
そう言って、あたしの頭をぽんぽんと優しく叩いた。
『えっ…』
今まで男の人にそんなことされたことなかったから
みるみるうちに顔が赤くなってしまう
大谷先生は 真っ赤になったあたしをじっと見ている。
で…
『あれ?なんか顔 あこぅ(赤く)ない?風邪か?』
『ちゃ…ちゃいます。部屋が暑くて…』
あわててエアコンのリモコンで温度を下げるふりした。
『そっか ほな追試の勉強や。テスト用紙だしてみっ…』
と言って、いつものように授業を進めていった。
★★★
『はい 今日は終わり…』
『はぁ…頭煮えたぁ。』
大谷先生は あと片付けをしながら…
『あ、もし再追試になったら、今日ほど優しないから 覚悟しとけっ』
『うっ…覚悟って…』
何気ない一言やったけど あたしには十分な破壊力。
『その代わり 見事な点数やったら ご褒美やる。』
『ご褒美?』
『なんでも ゆうこと聞いたるわ。』
『そしたら…お…おデートとか』
思い切って提案した言葉に大谷先生の表情が曇った。
そんなに嫌なん?
『んー それは 無理(笑)
そんなんしたらトーテムポールが襲ってくるぞ。』
『トーテム?』
『ちゅうか 通天閣が歩いてやってくる…。』
『なんなんですかぁ…。』
『ちゅうことで(笑)ほな 追試頑張りやー…。』
大谷先生はいつもの人懐っこい笑顔でそう言って帰っていった。
あたしは、ほてる顔に両手を当て
『通天閣って歩けるん?…』なんてつぶやいた
デート無理やったらなんか美味しいもん買ってもらおう♪
END