Art Tree ブログ

アートツリー出版社のブログです。

板谷梅樹の世界

2024年09月21日 | 日記
★取材レポート★

モザイクアートは、普段は街中で目にすることがあまりないかもしれません。
大きなモザイク壁画などは、建物と一体になっていることが多いので、建物が壊されると一緒になくなってしまうのです。
「昭和」モダンのアートシーンを飾ったモザイク作家・板谷梅樹(1907-1963)の展覧会が、泉屋博古館東京(東京・六本木)で開催中です。



梅樹の父は、近代陶芸の巨匠・板谷波山(1872-1963)です。
波山は失敗した作品を砕いてしまったので、庭には陶片が沢山あったようです。
梅樹は子どもの頃から、美しい色彩の陶片を色々な形に砕いたり寄せ集めたりして遊んでいました。





梅樹は20代半ばから、陶片を活用したモザイク画の制作を志します。



代表作は旧日本劇場一階玄関ホールの巨大なモザイク壁画(1933年作、原画:川島理一郎)ですが、残念なことに現存していません。
その他、飾箱や飾皿、帯留やペンダントヘッドなどを制作しました。







戦後復興の中で残された梅樹の作品は決して多くはありません。
今回の展覧会は、梅樹の作品を一堂に集めた初の展覧会で、住友コレクションの板谷波山作品とともに鑑賞できる貴重な機会です。



(写真は全て内覧会時に撮影したものです。主催者の許可を得ています。)

特別展 昭和モダーン モザイクのいろどり
板谷梅樹の世界
[同時開催]特集展示 住友コレクションの茶道具
【会期】2024年8月31日(土)-9月29日(日)
【会場】泉屋博古館東京(東京都港区六本木1-5-1)

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舟越桂 森へ行く日

2024年07月29日 | 日記
★取材レポート★

彫刻の森美術館(神奈川県箱根町)は、富士箱根伊豆国立公園に位置する箱根にあります。
日本で初の野外彫刻美術館で、自然の中で人々と芸術家が交流する場として1969年に開館しました。
現在開館55周年を記念して、彫刻家 舟越桂(1951-2024)の展覧会が開催中です。



展示室は4つあります。
展示室1には、舟越さんのアトリエを再現した展示があります。
舟越さんのアトリエは木の温もりを感じる秘密基地のようだったといいます。



展示室3には、裸体像が展示されています。
舟越さんが着衣のない裸体像を制作され始めたのは2003年頃からです。
前年の2002年に、父親であり彫刻家の舟越保武さんが逝去されています。
そのことが作品に与えた影響もあるかもしれません。



舟越さんの彫刻は、静かな佇まいの人物像で知られていますが、人間のすることを丘の上から見続けているスフィンクスをイメージした《戦争を見るスフィンクスⅡ》には確かな表情があります。





「舟越桂 森へ行く日」は、彫刻の森美術館が周年を記念した展覧会にと、2023年3月に生前の舟越さんに依頼したことから企画が始まりました。
しかし、2024年3月29日、舟越さんは逝去されました。
この展覧会のためにブロンズ彫刻を制作展示する予定でした。
残念ながら完成にはいたりませんでしたが、舟越さんは最後までこの展覧会を望み、励んでいたそうです。



自然豊かな箱根の森の中で、舟越さんからのメッセージを読み解きながら作品に親しむことができる展覧会です。

(記事中の写真は「舟越桂 森へ行く日」内覧会時に撮影したものです。)

彫刻の森美術館 開館55周年記念
「舟越桂 森へ行く日」
【会期】2024年7月26日(金) -11月4日 (月・休)
【会場】彫刻の森美術館 本館ギャラリー(神奈川県足柄下郡箱根町ニノ平1121)
【詳細は公式HP】https://hakone-oam.or.jp

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空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン

2024年07月17日 | 日記
★取材レポート★

日本での展示は約30年ぶりとなる、ジャン=ミッシェル・フォロンの大規模展覧会が
東京ステーションギャラリー(東京・丸の内)で開催中です。



フォロンは、20世紀後半のベルギーを代表するアーティストのひとりですが、
日本では知らない人も多いかもしれません。
フォロンの作品にしばしば登場するリトル・ハット・マンは、フランスのテレビ番組でも放映され、当時のフランスの子どもたちは日頃から親しんでいたようです。



フォロンの描くリトル・ハット・マンは、フォロンの分身でもあり、何にでもなれる存在です。
今回の展覧会では、観覧者のよき道連れとして登場します。
プロローグ「旅のはじまり」、第1章「あっち・こっち・どっち?」、第2章「なにが聴こえる?」、第3章「なにを話そう?」、エピローグ「つぎはどこへ行こう?」と展示会は構成されています。



フォロンは、自らを"AGENCE DE VOYAGES IMAGINAIRES"(空想旅行案内人)と名乗っていました。
展示会場では、フォロンが実際に使用していた名刺も観ることができます。
展示会場で、観覧者は想像力をはたらかせ、能動的に自由に考えることができます。
決まった解釈を必要としないのがフォロン流だからです。



フォロンの作品の魅力は、グラデーションや滲みなどを駆使した美しい色彩にあります。
"空想旅行案内人"の名の通り、地球上から宇宙まで、空想の世界が描かれています。
しかしその作品をよく見ると、人類が抱えている出来事や私たちのシビアな問題に、真っ直ぐ視線が向けられているのがわかります。



フォロンは、私たちの悲劇をポジティブなエネルギーに変えてゆきます。
観覧者は、フォロンの作品を通して希望を見出す旅を体験することができます。
フォロンの作品の多彩な魅力、奥深さを、幅広い人が楽しむことができる展覧会です。

(記事中の写真は全て「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」内覧会時に撮影したものです。)

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン
【会期】2024年7月13日(土) - 9月23日(月・振休)
【会場】東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
【詳細は公式HP】https://www.ejrcf.or.jp/gallery/

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Beautiful Japan 吉田初三郎の世界

2024年05月29日 | 日記
★取材レポート★

府中市美術館(東京・府中市)で、鳥瞰図で有名な吉田初三郎の展覧会が開催中です。



鳥瞰図とは、空高く飛ぶ鳥や飛行機から見下ろした視点で描く地図などのことです。吉田初三郎は、大正から昭和にかけて鳥瞰図のスタイルで数多くの名所案内を描きました。鉄道会社、旅館、自治体など様々なクライアントから依頼を受けました。



初三郎の鳥瞰図は奥から景色を見るような見方で、普通は見えないものを描くのが特徴です。
南武鉄道開通の折に描かれたポスターは、中心に電車が大きく、線路が直線的に描かれていますが、鳥瞰図のスタイルで遠くには樺太、北海道、神戸、九州、台湾まで描かれています。
富士山を中心に描かれた作品でも、サンフランシスコ、ハワイ、九州、台湾、青森などが描かれ、現実には存在しない風景となっています。
クライアントの要望に応えて、同じ場所でも川を中心にしたり寺社を中心にしたりと構図を変え、周りが立ち上がり浮きだすように描いてぐるっと広さを強調しました。



また、初三郎の作品は、山並みの青や鉄道を描くオレンジなど特徴的な色が使われており、鮮やかです。
外国人観光客誘致の施策のために1930年(昭和5年)に描かれたポスター「Beautiful Japan」は、アメリカに7000枚、ヨーロッパに2000枚が配布されました。また、鎌倉や雲仙の名所案内など英語版も制作されました。



コレクターズアイテムとしても人気がありました。観光社という自社組織をつくり、コレクター向けの頒布もしていました。



初三郎は京都に生まれ、画家を目指して上京しました。商業画家に転向した後1913年(大正2年)に完成させた鳥瞰図が、翌年当時の皇太子(のちの昭和天皇)の目に留まり、「是は奇麗で解り易い、東京へ持ち帰って学友に頒ちたい」との言葉を受けたことから鳥瞰図をライフワークとすることを決意したそうです。
作品の構図や色彩、印刷技術、頒布方法など、魅力的で興味深い展覧会です。

(記事中の写真は全て「Beautiful Japan 吉田初三郎の世界」内覧会時に撮影したものです。展示室内は撮影できません。)

Beautiful Japan 吉田初三郎の世界
【会期】2024年5月18日(土)ー7月7日(日)*一部展示替えあり
【会場】府中市美術館(東京都府中市浅間町1丁目3番地 都立府中の森公園内)
【詳細は公式HP】https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/

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KAGAYA 星空の世界 天空の贈り物

2024年05月01日 | 日記
★取材レポート★

星空写真家・KAGAYAさんが、世界各地をめぐり撮影した星空の作品展が横浜で開催中です。
KAGAYAさんは、天空と地球が織りなす壮大な奇跡を、デジタルアートやプラネタリウム番組、写真などさまざまなアプローチを通して表現しています。
今回の展覧会では、写真作品約100点と新作映像作品が展示されています。



天の川の写真。



天の川は地球を包むように存在しているため、世界中で見ることができるそうです。

日本で見られた北海道のオーロラ。



KAGAYAさんは予報を見て撮影場所を決めるそうですが、最近の予報は精度がよいのだといいます。
展示されている北海道のオーロラの作品は、オーロラが見られる条件の予報を見た翌日に、北海道へ飛んで撮影したそうです。

星だけではなく月も撮ります。
望遠鏡にカメラを取り付けて撮影した満月。



会場では照明を工夫し、満月が輝いているかのように再現しました。
展覧会場ならではの楽しみです。

そして今回の展覧会の見どころは、KAGAYAさんにとっても初の試みである16mの大画面と床面を用いた星空の映像作品です。
壮大な音楽とともに星空の世界を体感できます。





映像のラストの月と地球の写真は、ソニーの超小型人工衛星『EYE』に搭載されたカメラを使って、KAGAYAさんが撮影しました。
コンピューターを用いたシミュレーションを行い、試行錯誤した実際の撮影手順の解説が、会場内に設置されています。

(KAGAYAさん)


その他、人工衛星『EYE』の原寸大モックアップの展示や、KAGAYAさんの撮影風景の上映などもあります。
天文・星空の解説や写真・動画撮影の解説もあり、写真撮影の新しい楽しみ方が見つかりそうです。

KAGAYA 星空の世界 天空の贈り物
【会期】2024年5月1日(水)-7月1日(月)
【会場】そごう美術館
(神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店 6階)
【詳細は公式HP】https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/

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