Pattaya Paradise

何か入り口の方で賑やかになったなと思っていたら突然保健厚生相が部下を従え事務所に入ってきた。タクシン首相の懐刀として彼女は政権発足後わずかにして全国であっと言う間に喫煙規制を導入して愛煙家やレストランのオーナーを恐怖のどん底へ陥れた張本人である。あれよあれよとタバコのパッケージはガン末期の患者の写真が義務つけられ、メディアでは喫煙シーンはお酒と並んで禁断のものとなった。といってもここは省内なので年始末のいつものスキンシップのようでたちまち花などの贈答品の山に囲まれる。そんな華やかな雰囲気を尻目に破綻寸前の30バーツ一律保険保証制度の存続にまつわるスキーム作りに忙しい外国人はまるでかやの外。女性大臣の覚えが良くても悪くても給与は外国から送金されてくるので関係ないし、日本の一流国立大学を優秀な成績で卒業した翻訳の専門家も一日で省内の役人の一月分の給与を稼ぐので彼女もまるで関係ないような顔をしているが、その表情がなんとも表現し難く素晴らしい。草枕の主人公なら「そう、その表情だよ」と思わず叫びたい私もまたそれを眺めているただの傍観者。

この作品は香港と米国のスタッフで作られたので、まるでタイ国内の喫煙規制に注意を払っていないのでまるでくわえタバコのぼかし具合がAVのようでは見るに耐えないし、内容たるやこれも直視に値しないテレビドラマ以下。しかも冗談のように今度は拳銃規制というので、人に銃を向けるシーンもモザイクが。バン兄弟のバンコック・デンジャラスの興行的成功以来、香港のソフトとタイのハードという組み合わせ制作パターンは多くなったが、これは代表的な低予算、低品質な作品にPavarit Mongkolpisitが出演してしまった。香港人にとってもあんなガラの悪いパタヤ観光は二の足を踏み、いまや本土からの団体様での市場価値しかなくなっている。そこでは今ではロシアからの観光客が毎年10万人以上も世界最悪のリゾートに来ているらしい。

パタヤの警察高官は暗黒社会を形成し、一人の香港帰りの男が訳ありのバーの女経営者のもとでボディガードとして話が始める。全体的に「Pattaya Paradise」という題名もどうも意味がなく、これは米国市場向けの題名のような気がする。中国語では「戦虎」となっているのでこのほうがシックリくる。どうもパタヤの魔術かあそこを舞台にした作品でまともなものはまだ知らないので、色々と趣味で脚本を考えてみる。西洋人たちが「文化の浸食地帯」と面白いことをいっていた。そうだ！これだ。つまり今までの観光やリゾートはどちらかというと異文化との遭遇や休息を目指していたが、文化のない標本箱のような観光。何も求めず、感じず、非接触の人間移動体のような次世代の時間の無意味な過ごし方としてのパタヤはどうだろうか。