1001タイ映画、千夜一画 

タイ映画またはショートフィルム他で心の琴線に触れたアーカイブ。

SATANG

2006-02-05 23:49:29 | Weblog,
タイ映画の高い水準を示す作品の一つ。1942年、旧日本国軍がジャワで印刷した新札の一部が地方の有力者グループ(自由タイ運動)に強奪される。戦後、そのお金の在処を探そうと有志が同じボートでそれぞれの事情を抱えた問題や欲望への解決するための旅をするストーリー。難病の両親への薬代、恋人のため戦争がもたらした日常の変化のなかを人間にとってお金とは...を真摯に描いた作品。Satangというのはもちろんタイ通貨の最小単位。MoneyのかわりにSatangをタイ語の構文に組み入れるとまさに「一文もない」という意味。

そして今ホットな話題になってタクシン政権を揺り動かしているのもこのお金の問題だ。アジア有数のリッチマンとしてフォーブスにも選ばれたタクシン現役首相が自分が実質的に支配する通信会社の株の49%を2200億円という巨額な金額でシンガポールの政府系企業に売り渡し、しかも税金を免れるという荒技にさすがの穏健な市民も反政府運動に乗り出ている。これを日本に当てはめるとホリエモンがLive Doorで資金を溜め込み社民党のような小さな政党を買収して資金力にものをいわせて総選挙で圧勝、そして首相の座へといった感じかな。いやまだある。政敵を蹴落とし、防衛庁長官に親戚を送り込み、軍のクーデターを押さえる一方でさらに権力で自分の企業グループに利益を図るというもうメチャクチャぶり。唯一、この金権政治に最初から不快感を表明しているのがプミポン国王でタイ愛国党が皇室に嫌われているという捻れ現象は国民の誰もが知っている。

タクシン首相が本当に国民を舐めているなと思ったのが「餅菓子を売るんじゃないから市場で売って歩く訳にはいかない」と「なぜ今」という株売却の弁。でもタクシン政権はタイの社会構造改革というか「闇社会」の一掃をおこなった実績で航空機に爆弾を仕掛けられたりもして、麻薬犯罪撲滅を目指す米国にとっては頼りがいのある退役警察幹部だろう。やはり現実的にタイの政権も米国の意向を無視することはできないし、日本政府にとっても在タイ日本人の情報はタイの公安に筒抜け状態にする程度の親密さを継続させなければいけない。日本や米国にとってやっかいな問題はタイ国内に於ける中国のプレゼンス拡大だろう。タクシンだって中華系だしこの国でビジネスを円滑にするためには大小に関わらずチャイニーズの力に頼ることになるのはこれは基本的な事実である。

といって個人的には中華もインドも料理程度にしか興味がなく、願わくばタイ映画の原点である「豊かな自然と人間」をどうか破壊しないような商業開発を心がけて欲しいものだ。それにしても首相のご子息は美人秘書をしたがへ裏方のお仕事をこなしている。飲み屋で警察官を殺害してビデオの証拠もあるのに無罪を勝ち取った政治家の子息よりはマシと感じるような変なタイ化して慣れたことが恐くなる。

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