1001タイ映画、千夜一画 

タイ映画またはショートフィルム他で心の琴線に触れたアーカイブ。

「The Body of Evidence」 登場人物は映画よりも個性的・・・人権を考える

2005-06-06 04:45:17 | タイ映画
記憶に新しいタイの猟奇事件というとやはり医大生による女友達ミンチ事件だろう。嫉妬に狂った医者の卵がモーテル内で射殺。そして包丁で胴体と首を切断して、ほとんどの部分をミンチにして洗面所に流してしまった事件だ。こういう事件といういと法医学専門のポンティップ女医が登場してくる。この有名な女医のトレードマークは見事なパンク風極彩色ヘアースタイルとファッションだ。少し前までタイ国でDNA鑑定というとこの女医さんの独壇場だったが、「The Body of Evidence」はこうした個性の強い実際の登場人物に反してごくつまらない映画になってしまった。

何故、エリートの医大生が友人をミンチにしてしまったのか。その背景、それを捜査する警察当局、そしてマスコミの興味本位の報道等々。この映画の原作もPornthip Rojanasunand(1955年生まれ)なので、監督も製作会社も微妙な立場なのかもしれない。彼女は法医学者、作家、人権保護の運動家として世界的に有名で警察の囚人虐待や2003年のタクシン政権下での反ドラッグキャンペーンの間、1000人以上の薬の売人が行方不明や殺された事件の警察の関与に関して明るみにしようと運動を行っている筋金入りの活動家だ。この間も人身売買のビルマの少女達を救おうと警察のトラックの荷台に乗って捜査を指揮しているのをテレビで報じていた。だからこの映画よりも彼女の活動を考えると原作を読んでみたくなる作品である。

身近な人権弾圧というと1992年のスチンダ軍事政権掌握に反対した(?ほとんど無差別)数百人という人民虐殺だが、その後は歴史の闇に埋もれて新聞でも取り上げなくなった。あの時は、民主記念塔付近で軍の下級兵士の顔の表情を丹念にウオッチングしていたが、本当に地方の部隊から出動してきたバンコクは右も左もわからないような浅黒く幼い表情で機関銃を構えていたのが印象的。農村部X都会派市民の邂逅。ふとあのときに水牛楽団なんかが反対集会に参加するのではと期待していたが・・・。あれだけの事を書くのだから、何がなんでもこういう政変には成田から飛んで参加しなければ意味を失う。音楽に裏切られた最初の経験の傷は深いと感じるのは私だけだろうか。

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