なんとか開場に間に合う時間に着物に着替え終え南座に到着。
開場直後だというのに、もう劇場前は人だかり。みんな、フォトジェニックな場所で記念撮影しようというのだ。(もちろん私達も)
それだけ顔見世時期の南座は絵になる。外側だけでなく中も、白に朱が映えて、教徒らしいはんなりさがただよっている。こうしてみると、やっぱり歌舞伎座を立て替えてしまったのは間違いだったのでは?多少の狭さには目をつぶって、あの建物を残しておくべきだったのでは・・・と、今更どうしようもないことを思ってしまう。
<舞台上には「唐破風」。能舞台の名残で、常設されているのは南座だけなのだとか>
さて、第一幕目は舞踏「羽衣」。よく知られた話。漁師を演じる愛之助丈、久しぶりに見たのだが、風貌があまりに仁左衛門丈に似てきていてびっくり。実子で天女役の孝太郎丈が似ていないのが目立つ~。
二幕目は「寺子屋」。吉右衛門丈の松王丸に梅玉丈の源蔵。梅玉丈の源蔵役は、はじめて見るが、きっちりとした雰囲気がぴったり。しかし圧巻だったのは吉右衛門丈。
菅原道真の子、菅秀才の身代わりに、我が子、小太郎を差し出した経緯を語るくだりは、わかっていても泣けてしまった。特に、源蔵から小太郎の最期の様子を聞くあたりでは、思わず声が出てしまうのではないかと思うほど泣けた・・・。このシーンの泣かせられ度No.1。周囲でも男女問わず、ハンカチを目にしている人が多くて、またそれが涙を誘う。
一緒に行った友人は、歌舞伎観劇も数回なのだが、終わった後に「なにこれ?」と叫んでいた。「こんなに泣く話なんて・・・」。
非常に形式的に見えるが、人間の真実のエッセンスが凝縮されているのが歌舞伎なのだ。だから長く多くの人に支持されるのだろう。
三幕目は、海老蔵丈に代わって、仁左衛門丈が名古屋山三を務める「阿国歌舞伎夢華」。
主演の二人はもちろんだけど、猿之助劇団の綺麗どころも揃って出演するので、舞台の美しさに期待していた。
いや~、期待通りきれいでしたよ。
出演者みんな、背が高いので、玉三郎丈も遠慮がないのか、こころなしか常より背筋が伸びて見え、その分、のびのびした印象を受ける。
衣装も、”かぶきもの”にふさわしく、柄付けが斬新。通常は衿から胸の正面にあるところ、もっと脇に柄があり、正面からはすっきり見える。前後、黒から白の着物に変えていたが、同じ柄だった様子。
仁左衛門丈の名古屋山三は、意外に出番の時間は少なく、え~、もっと見せてよといいたくなった(笑)。主役の二人を愛之助丈が後ろからじいっと眺めていたのが印象的。
そういえば、最近、若手役者を相手役に抜擢して育成に余念のない玉様だが、愛之助丈との共演というのは私の記憶にない。彼のような、きっちりまじめに芸に精進するタイプは、もしかしたら玉様のタイプではないのかしらん?
綺麗だったんだけど、舞踏なんで眠かったのも事実。
そんな眠気を吹き飛ばしたのは、次の「沼津」。片岡我當、秀太郎、仁左衛門と、松嶋屋三兄弟が揃い踏み。
仁左衛門丈の「呉服屋十兵衛」というのは、どうもイメージなかったのだが、舞台を見たらそんなのは杞憂なのがわかった。さすが・・・。秀太郎演じるお米に一目ぼれしてしまうあたり、なんとも可愛らしい、そしてちょっとお間抜けな様子が感じられた。でも、あんなに素敵な十兵衛なら、私がお米なら夫を捨ててついていきそう。難をいえばそのあたりか。
これも親子の情愛で泣かせる演目。友人はここでも「聞いていないよー」とハンカチを取り出していたのだった。
私達が京都入りして着物を着る場合、着物巧者が多いだろうとそれなりに緊張する。まして南座であれば。
しかし最近の私は、逆に開き直って、京都人の着物がどれほどのものか、楽しみにしている。でも、今回の南座、他の方がどんな着物だったのか、思い出そうと思うのだけれど、あまりはっきりしない。とにかくあわただしかったのだ。
顔見世興行は東西の綺羅星のような役者が顔を揃えるせいか、とにかく見所の多い演目ばかり。となると、おのずと休憩時間が短くなる。そのうえ狭いので、なんだか休憩時間中はずっと人ごみに圧迫されていたような印象だけが残っている。
それでも周囲の席のかたの着物は記憶にある。京都らしく柔らかものが殆どだったけど、黒や紺といった渋めの色合いの、江戸小紋や色無地が主流。もっとはんなりとした色が多いのではと予想していたのに意外だった。もしかしたら、私の周りは東京遠征組みが多かったのかな?
遠征組といえば、ツイッターで知り合った歌舞伎クラスターの面々も、この顔見世の大詰め時期に観劇が集中していた模様。その中で、今までメッセージを交わすだけでお目にかかれなかった、おはなさんと偶然にも席が近く、ご挨拶できたのは嬉しいことでした。
振り返ってみれば、ブログやツイッターで、新たなご縁が広がったのも今年の特筆する出来事だったなあ・・・。
▼以下、メモ
第一 羽衣(はごろも)
天女 孝太郎
伯竜 愛之助
第二 菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
寺子屋
松王丸 吉右衛門
千代 魁 春
戸浪 芝 雀
涎くり与太郎 種太郎
園生の前 扇 雀
春藤玄蕃 段四郎
武部源蔵 梅 玉
第三 阿国歌舞伎夢華(おくにかぶきゆめのはなやぎ)
出雲の阿国 玉三郎
女歌舞伎 笑 也
女歌舞伎 笑三郎
女歌舞伎 春 猿
女歌舞伎 吉 弥
男伊達 愛之助
男伊達 翫 雀
名古屋山三 仁左衛門
十三世片岡仁左衛門を偲んで
第四 伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)
沼津
呉服屋十兵衛 仁左衛門
平作娘お米 秀太郎
池添孫八 進之介
荷持安兵衛 歌 昇
雲助平作 我 當
goo ブログ
開場直後だというのに、もう劇場前は人だかり。みんな、フォトジェニックな場所で記念撮影しようというのだ。(もちろん私達も)
それだけ顔見世時期の南座は絵になる。外側だけでなく中も、白に朱が映えて、教徒らしいはんなりさがただよっている。こうしてみると、やっぱり歌舞伎座を立て替えてしまったのは間違いだったのでは?多少の狭さには目をつぶって、あの建物を残しておくべきだったのでは・・・と、今更どうしようもないことを思ってしまう。
<舞台上には「唐破風」。能舞台の名残で、常設されているのは南座だけなのだとか>
さて、第一幕目は舞踏「羽衣」。よく知られた話。漁師を演じる愛之助丈、久しぶりに見たのだが、風貌があまりに仁左衛門丈に似てきていてびっくり。実子で天女役の孝太郎丈が似ていないのが目立つ~。
二幕目は「寺子屋」。吉右衛門丈の松王丸に梅玉丈の源蔵。梅玉丈の源蔵役は、はじめて見るが、きっちりとした雰囲気がぴったり。しかし圧巻だったのは吉右衛門丈。
菅原道真の子、菅秀才の身代わりに、我が子、小太郎を差し出した経緯を語るくだりは、わかっていても泣けてしまった。特に、源蔵から小太郎の最期の様子を聞くあたりでは、思わず声が出てしまうのではないかと思うほど泣けた・・・。このシーンの泣かせられ度No.1。周囲でも男女問わず、ハンカチを目にしている人が多くて、またそれが涙を誘う。
一緒に行った友人は、歌舞伎観劇も数回なのだが、終わった後に「なにこれ?」と叫んでいた。「こんなに泣く話なんて・・・」。
非常に形式的に見えるが、人間の真実のエッセンスが凝縮されているのが歌舞伎なのだ。だから長く多くの人に支持されるのだろう。
三幕目は、海老蔵丈に代わって、仁左衛門丈が名古屋山三を務める「阿国歌舞伎夢華」。
主演の二人はもちろんだけど、猿之助劇団の綺麗どころも揃って出演するので、舞台の美しさに期待していた。
いや~、期待通りきれいでしたよ。
出演者みんな、背が高いので、玉三郎丈も遠慮がないのか、こころなしか常より背筋が伸びて見え、その分、のびのびした印象を受ける。
衣装も、”かぶきもの”にふさわしく、柄付けが斬新。通常は衿から胸の正面にあるところ、もっと脇に柄があり、正面からはすっきり見える。前後、黒から白の着物に変えていたが、同じ柄だった様子。
仁左衛門丈の名古屋山三は、意外に出番の時間は少なく、え~、もっと見せてよといいたくなった(笑)。主役の二人を愛之助丈が後ろからじいっと眺めていたのが印象的。
そういえば、最近、若手役者を相手役に抜擢して育成に余念のない玉様だが、愛之助丈との共演というのは私の記憶にない。彼のような、きっちりまじめに芸に精進するタイプは、もしかしたら玉様のタイプではないのかしらん?
綺麗だったんだけど、舞踏なんで眠かったのも事実。
そんな眠気を吹き飛ばしたのは、次の「沼津」。片岡我當、秀太郎、仁左衛門と、松嶋屋三兄弟が揃い踏み。
仁左衛門丈の「呉服屋十兵衛」というのは、どうもイメージなかったのだが、舞台を見たらそんなのは杞憂なのがわかった。さすが・・・。秀太郎演じるお米に一目ぼれしてしまうあたり、なんとも可愛らしい、そしてちょっとお間抜けな様子が感じられた。でも、あんなに素敵な十兵衛なら、私がお米なら夫を捨ててついていきそう。難をいえばそのあたりか。
これも親子の情愛で泣かせる演目。友人はここでも「聞いていないよー」とハンカチを取り出していたのだった。
私達が京都入りして着物を着る場合、着物巧者が多いだろうとそれなりに緊張する。まして南座であれば。
しかし最近の私は、逆に開き直って、京都人の着物がどれほどのものか、楽しみにしている。でも、今回の南座、他の方がどんな着物だったのか、思い出そうと思うのだけれど、あまりはっきりしない。とにかくあわただしかったのだ。
顔見世興行は東西の綺羅星のような役者が顔を揃えるせいか、とにかく見所の多い演目ばかり。となると、おのずと休憩時間が短くなる。そのうえ狭いので、なんだか休憩時間中はずっと人ごみに圧迫されていたような印象だけが残っている。
それでも周囲の席のかたの着物は記憶にある。京都らしく柔らかものが殆どだったけど、黒や紺といった渋めの色合いの、江戸小紋や色無地が主流。もっとはんなりとした色が多いのではと予想していたのに意外だった。もしかしたら、私の周りは東京遠征組みが多かったのかな?
遠征組といえば、ツイッターで知り合った歌舞伎クラスターの面々も、この顔見世の大詰め時期に観劇が集中していた模様。その中で、今までメッセージを交わすだけでお目にかかれなかった、おはなさんと偶然にも席が近く、ご挨拶できたのは嬉しいことでした。
振り返ってみれば、ブログやツイッターで、新たなご縁が広がったのも今年の特筆する出来事だったなあ・・・。
▼以下、メモ
第一 羽衣(はごろも)
天女 孝太郎
伯竜 愛之助
第二 菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
寺子屋
松王丸 吉右衛門
千代 魁 春
戸浪 芝 雀
涎くり与太郎 種太郎
園生の前 扇 雀
春藤玄蕃 段四郎
武部源蔵 梅 玉
第三 阿国歌舞伎夢華(おくにかぶきゆめのはなやぎ)
出雲の阿国 玉三郎
女歌舞伎 笑 也
女歌舞伎 笑三郎
女歌舞伎 春 猿
女歌舞伎 吉 弥
男伊達 愛之助
男伊達 翫 雀
名古屋山三 仁左衛門
十三世片岡仁左衛門を偲んで
第四 伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)
沼津
呉服屋十兵衛 仁左衛門
平作娘お米 秀太郎
池添孫八 進之介
荷持安兵衛 歌 昇
雲助平作 我 當
goo ブログ
号泣する程の「寺子屋」観たいです。吉右衛門丈は登場人物の背景を感じさせるのが抜群に上手いですよね。
大掃除や年賀状書きに追われる今になってみると、あの南座で過ごしたひと時は夢ではなかったのかと・・・。
今回は仁左衛門丈、玉様目当てで出かけたので、「寺子屋」は隙がありました。やられた・・・って感じ。今度機会があったら、ぜひ吉右衛門丈の松王丸みてください!