汗と涙の着物生活 

突如着物に目覚め、ついに着物作成に挑戦。着付けに涙し、とどまらぬ物欲に冷や汗の毎日。

オンナが観る歌舞伎のオンナ講座で襲名を寿ぐ

2016-10-20 | 歌舞伎



歌舞伎ライターの仲野マリさんをメイン講師に迎えての口座開催3回目に当たる今回は、はじめて、講座の後に参加者連なって、実際に歌舞伎座に観劇に出かけました。

幕見ではあったのですが、歌舞伎を観たことのある方にも「幕見ってこういうシステムなんですね!」と発見があり喜んでいただけたようです。


<襲名祝いの幕を「幕見席」から望む>


<主催者・サブ講師の私は、歌舞伎座上演中の「藤娘」の帯を締めて>


参加者の方からは、次のような感想を寄せていただきました。

・知らない演目について詳しく、わかりやすく教えていただける。

・ユーモアたっぷりで笑いがある講座であるのが楽しい。

・より深く深く、演目を理解することができた。

・女性の視点で見つめなおすのが「いとをかし」でした。

・現代の視点で読み直すところが素晴らしい。

・特に、人間関係の複雑さを理解できてよかった。

さて、アンケートのコメントにもありましたが、この講座では、熊谷陣屋演目を現代に置き換えると、どんなことが言えるのかを考えるのが大きな特徴です。

たとえば、主人公の熊谷直実は源氏方の武将として登場しますが、もともと平家に与する家の出身であったのに、その後、源氏方に入ったり、また平家方に戻ったり…と、行ったり来たりしています。
「まるでどこかの知事のような…」というのは冗談ですが、転職回数の多いビジネスパーソンのようなキャリアを歩んできていました。
本当はあまりの若さに、逃がしてやりたかった平家方の若武者、敦盛のことを見逃すわけにはいかなかったのです。
もし見逃しでもしたら「平家方のスパイ」と疑われてしまうことになるから。
さらに、義経の命に従うために、身を切るような辛さにも耐えなくてはならなかった…。
源平の勢いが目まぐるしく移り変わる中で、生き延びるには、行ったり来たりを繰り返さなくてはならなかった勤め人の悲劇でした。

これは現代の私たちにも通じることです。
我が身のために、組織のために、建前で生きなくてはならないのは昔も今も同じです。
だから、直実が建前を捨て、出家して自分が斬った相手の供養に生きようとすることが、今でも多くの共感を呼ぶのです。

実は、建前と本音の構図は、直実だけではなく、彼の妻の相模にも共通です。

彼女は、自分の息子に対し「武将として見事に戦った上での死なら名誉なことだ」と前半で大いに語ります。
まさに武士の妻、母として、理想的な姿です。
しかし、実際にその事態に直面したとき、その建前は崩れ去ってしまうのです。

「熊谷陣屋」は、登場人物二人が、建前から本音にと、大きな転換を経験する物語です。
社会に生きている以上、建前はある程度、必要です。
しかし、言動が建前だらけになっていないか、建前を本音と思い込んでいないか、どこかで自分を冷静に見つめる必要があります。
そう意識しないと、本音は忘れがちなのが人間なのです。
「熊谷陣屋」は、そんなことを教えてくれる演目であるように思います。

そう考えると、歌舞伎はキャリアを考える上での絶好のケーススタディになるんです(^-^;
これからも、歌舞伎を題材にキャリアを考える講座を続けていきたいと思っています!




<観劇後、空には満月!>


<襲名祝いの幕は、佐藤可士和氏プロデュース。たぶん芝翫丈と同い年。私もです(^-^;>

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