Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

10月6日…ヴェルサイユを永遠に去った日

2016-10-06 22:12:17 | つぶやき

 1789年10月5日、深刻な食糧不足に業を煮やした約6,000人のパリの女性たちが、20km離れたヴェルサイユ宮殿目指して片道6時間、雨の中を鎌などの武器を持って行進した。

↓  雨の中、武器を持ってヴェルサイユに向かう女性たち。

 10月5日、ルイ16世は狩りに出かけていたため、ヴェルサイユに到着した女性たちの代表が国王と面会するために4時間近く待たされた。このことも怒りを一層増幅させ、市民が近衛隊と小競り合いを起こしてしまう。しかしその夜は、ラ・ファイエット将軍が市民を説得し、民衆は宮殿を取り巻いたまま一夜を過ごす。

↓  10月6日、朝6時、市民は警備の隙をついて宮殿内に侵入。国王と王妃の部屋を目指す。アントワネットは寝間着姿のまま、秘密の通路を通って国王の部屋に逃げ、事なきを得る。

↓  ついに王は王妃、王太子と共にバルコニーに現れる。漫画では国王や王太子を伴わず、アントワネットただ一人でバルコニーに登場。市民に向かい優雅にお辞儀をし感動させるが、実際はただ黙って立ちつくしていたとの説もある。どれが本当なのか今となってはわからないが、命の危険を顧みない優雅なお辞儀が創作であるとしたら、池田先生の着想の素晴らしさに唸ってしまう。この時点では、まだ女性たちはアントワネットを自分達の王妃として受け入れる気持ちがあったのだ。

↓  群衆は「王よ、パリへと帰れ」と叫んだ。国王はこの要求に屈し、議会もまた王と共にパリに移ることを決めた。午後1時、100名の議員が王を取り巻き、すべての軍隊、すべての民衆がパリに向かって行進を始めた。女たちは叫んだ。「わたしたちは、パン屋とパン屋の女房と小僧をつれてきたよ!」<河野健二『フランス革命小史』1959 岩波新書 p.90>

 アントワネットにはあまりに急なヴェルサイユとの別れ。この日一家は、着の身着のままで宮殿をあとにしただろう。こんな日がいつか来ることは予感していたが、まさかこれほど早く来るとは思っていなかったかもしれない。あるいは一応今回、民衆の要求に応じてパリに行くことに同意したが、事態が落ち着けばまた戻って来られると楽観していただろうか?結果として10月6日は、アントワネットがヴェルサイユと永遠に別れる日になってしまった。

 読んでくださり、どうもありがとうございます。



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