
18~19世紀の欧米の女性の肖像画を見ると、三角形の白い布やレースを肩に掛けている人が少なからずいる。この布はfichu(フィシュー)と呼ばれる。18世紀のイギリスで生まれ、ドーバー海峡を渡ってフランスなどでも浸透し19世紀後半まで流行した。
↓ 「ベルばら 新作エピソード」では、ロザリー、幼いマリー・クリスティーヌがフィシューを着けている場面がある。
↓ 惣領先生が描くアントワネットも、初めてルイ15世に対面する場面でフィシューを着けている。
この時代、女性のドレスは胸元が大きく開いていた。慎ましさをアピールするため、開きすぎた胸元を隠そうとフィシューを使った人もいる。また寒い時期は防寒対策として役立った。(首周りを保温すると、冷えが軽減することを知っていたのだろう。)大きな四角い布を折って三角形にしてから正面で結んだり、ピンでとめたり、襟ぐりの中に折り込んだ。色はだいたい白、リネンや綿、あるいは絹を使い手の込んだ刺繍を施したものもある。平民の女性は汚れが目立たぬよう、濃い色のものを着けていたらしい。フィシューを着けることで、ドレスが汚れるのを防止することも可能。おしゃれと実用性を兼ね備えたとても融通の効く小物だったと言えそう。
↓ 18世紀のもの
↓ 18世紀、アメリカ製
↓ 1790年~1810年
↓ 1808年、アメリカ製。綿でできている。
↓ 1770年~1780年、イギリス製。
↓ 1780年、ローヴ・アングレーゼに着けたフィシュー。
↓ 細かい刺繍が見事。
↓ 美しいレース飾り
↓ 18世紀、縞模様のフィシュー。
↓ いずれも18世紀
↓ アントワネットもタンプル塔やコンシェルジュリでは、フィシューを着けていた。
フィシューでドレスにアクセントをつける。祖母から母へそして娘へと代々受け継がれてきたフィシューもあっただろう。王族や貴族だけでなく、平民の女性も身に着けていた。材料がそれほど高くなかったのだろう。手先の器用な女性は、素敵なフィシューを手作りして楽しんでいたかもしれない。どんなに政情が不安定でも、女性には「美しくありたい」想いがある…フィシューを着けた女性たちの肖像画を見てふとそんなことを感じた。
読んでくださり、どうもありがとうございます。
アレにはちゃんとオシャレな名前があったのですね! 服飾雑貨等から歴史についていろいろ学ぶのは楽しいですね。懐中時計の話もよかったです〜いつもありがとうございます!
フィシュー・・・初めて名前を知りました
単純に スカーフかなって思っていました
レースがとってもきれいで 基本「白」なんですね
襟元のおしゃれ
和服にもありますね・・かけ襟や半襟・・
祖母のたんすを整理していたら 絞りや刺繍のある半襟が出てきました
ほんのちょっとだけしか見えないところのおしゃれ・・・好きです・・・私はできないけれど
>アレにはちゃんとオシャレな名前があったのですね
多くの女性が身に着けていましたから、名前があったのでしょう。特に冬場は必需品だったのではないでしょうか?真冬に、あんなに胸の部分が開いたドレスを着ていたら、間違いなく風邪をひきそうです。
まだまだ知らないことばかりです。少しずつ調べていきたいです。
>襟元のおしゃれ
和服にもありますね・・かけ襟や半襟・・
色合わせが難しいですよね。同系色どうしだと面白くないし、かといってトンデモナイ色と合わせると品がなくなるし。センスが問われる部分なので、なかなかチャレンジできません。
>祖母のたんすを整理していたら 絞りや刺繍のある半襟が出てきました
日本人も、なかなかおしゃれに着物を着こなしていたんだなあと感じます。十二単など、世界に誇れる民族衣装だと思います。色を表現する雅な言葉もたくさんありますし。日常生活で、もっと気軽に着物が着られたらいいなあ。