18世紀フランスでは、女性は皆、男性に経済的に依存して生きていたのだろうか?どうしてもお金が欲しければ、体で稼ぐことしかできなかったのだろうか?
肖像画のモデルはローズ・ベルタン。マンガではもっとすっきりとしたお顔立ちだったけれど、この絵を見る限り、かなりふくよかなようで---。左右に広がった髪型も、アントワネットといい勝負。王妃お気に入りのデザイナー。本名はマリー=ジャンヌ・ベルタン。しかし仕事用の名前をローズとした。ローズは平民。しかし優れたファッションセンスの持ち主で、アントワネットの歓心を得る。王妃はローズ・ベルタンを個人的に呼び寄せて、長時間二人だけで流行やスタイルについて自室で相談することを厭わなかった。だからベルタンの別名は「ファッション大臣」。平民を重んじたアントワネットに無視される形になった貴族たちは、次第に王妃から離れ、彼女を憎むようになる。
王妃と大変親しかったベルタンは、その立場を利用して王室一の服飾デザイナーとなり、巨額の富を蓄える。彼女の顧客として王室一家、肖像画家エリザベート・ヴィジェ=ルブラン、ラファイエット侯爵、他国の王妃が挙げられる。しかしながらフランス革命はすぐそこまで来ていた。庶民が空腹に苦しむ中、ローズ・ベルタンを「自ら腐敗し、人を腐敗させる贅沢の仕立人」とする攻撃文書が数多く出回る。
フランス革命勃発直後、ベルタンはそれまでのように王族貴族のために豪華なドレスをデザインすることはせず、帽章をいくつか納品するにとどまった。けれど王室一家が捕らえられると、より安価ではあるものの、マリー=アントワネットのために衣装を作って送り続けた。王妃がコンシエルジュリ(パリ高等法院付属監獄)に送還されるときに着ていた最後の服は、パリにあるローズ・ベルタンの店『ル・グラン・モゴル』で作られたもの。
マリー=アントワネットが処刑された後、ローズ・ベルタンは恐怖政治を逃れるためロンドンに亡命し、1795年2月にようやくフランスに戻る。しかしその時には、彼女の名声はフランス革命により一掃され、流行もすっかり変わっていた。こうして、ローズ・ベルタンは忘れ去られ、1813年9月22日にこの世を去った。
アントワネットは、素晴らしい技量の持ち主であれば、相手が平民であることなどまったく問題にせず、その才能をきちんと認め評価している。そのため貴族たちの嫉妬心や反感を買ったものの、ベルタンは生涯王妃を裏切ることなく、王妃が捕えられてもなお、彼女のためにデザインしたドレスを幽閉先に送り続ける。日本で言う「御恩と奉公」の関係を見る思いがする。アントワネットが栄光の頂点に立っていた時、彼女をちやほやする輩は多数いた。しかしひとたび革命が勃発すると、さっさと彼女を裏切り国外亡命をする人が多かった中、ベルタンは最後まで忠誠を尽くした。いかにアントワネットが彼女を信頼し、重用していたかがわかる。
ベルタンが自分の腕ひとつで稼ぎ、経済的に自立していたなら、彼女は間違いなく18世紀のキャリア・ウーマンである。アントワネットは「贅沢・軽薄・不倫」等で、評判はよろしくないけれど、ベルタンに対する接し方を見る限り、なかなか人を見る目がある女性だったと思えてくる。
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お父さんに教えてもらった、困った時の答えの出し方、目を閉じて心を静かにして考えてみよう。」
ミーナは目をつむります。
「命より大切な髪を切るという事は死んでしまうという事。 そうか! 一度死んで生まれ変わって男の子になるのをね。 マリアおばさんが言っていた。″女の子みたい″って言われて、お母さんは髪を短く切ったって、お母さんも頑張って男の子になったんだ。私でも出来る。
うん!やってみせる。」
それが、心で決めた答えでした。
ミーナは目を開けて、アマ―リエをしっかりと見つめました。
「アマ―リエさん、私、髪を切ります。アマ―リエさんに切ってもらいたいです。」
「じゃあ、決まりね。のんびりしている暇はないわよ。 ユーベル!」
「はい。」
「合唱団の学校ヘ行って、寮母のアンナに、今から書く手紙を渡して、入学申込書をもらってきて。そして、ミーナ、じゃなくてミーオの泊まっているホテル?」
「ホテル ザッハ。3階です。」
「そこへ、持って来てちょうだい。私もそこへ行っているから。 そのあとは、え~っと、ミーオの男の子の服、下着、靴下、靴、買ってきて。ミーオはもうすぐ8歳しては、小さいから、ユーベル、あなたと同じ大きさでいいわ。
あなたは、のんびり屋さんだから、特別、2時間あげるわ。
2時間後には必ずここに戻って来ること、いいわね!」
アマ―リエが手紙を書いている間、さっきまでクスクス笑っていたユーベルは、ミーオの神妙な顔に掛ける言葉がありませんでした。
でも、その表情は、悲しそうではありません。
決意を固めた、男の子の顔でした。
″凄いな、ミーオ! 泣き虫のぼくには、真似出来ない。″ ユーベルは、そう思いました。
アマ―リエは出来上がった手紙をユーベルに渡し、
「じゃあ、少年合唱団の寮母アンナよ。分かるわね?」
「はい。」
ユーベルは張り切って、出て行きました。
「私は今からあなたのご両親に説明して、了解を得て来るわ。 そして、ユーベルのもらってきた申込書にサインしてもらって、授業料もいただいて来なきゃ!
ジャスト、1時間で戻ってくるわ。
あなたはその間、綺麗なブロンドの髪とお別れしながら待っていなさい。
女の子のミーナとお別れをして決意をかためておきなさい。
もう、後戻りの出来ない冒険の始まりよ。」
アマ―リエはそう言いながら、部屋を出て行きました。
ミーオのは一人になりました。
そして、自分の顔を鏡に映します。小さな声でつぶやきながら…、
「さようなら、私の大切な、大切な髪。」
でも、最初は悲しかった気持ちが少しずつ変わってきました。
この髪が無くなる寂しさよりも、後戻りの出来ない冒険?そっちの方が魅力的!
何だか、ワクワクしてきました。
「この髪を短く切れば、冒険が待っている。すご~い!」
こう思いながら1時間ずーっと、ブロンドの髪を見続けました。
「さあ、髪を切るわよ。ケープを付けて、私の前に座りなさい。」
ミーオはもう冷静です。朝、ユリウスに付けてもらった、リボンの髪ピンを前髪から外し、アマ―リエの前に、静かに座り目をつむります。
アマ―リエはミーオの髪を束で握り、ほとんど根元からハサミを入れます。ジョキッ!
そして、紙の上に置く音、バサッ!
ジョキッ、バサッ、 ジョキッ、バサッ・・・!
その音が繰り返されるたび、ミーオの首を優しく包んでいた、ユリウスと同じ色のブロンドの髪が無くなっていき、首と肩が、すうすうとひんやりしてきました。
頭に髪が無くなってしまった。ミーオはそう、思いました。
「切り終わったわ、まあ・・・、すっきりしたわね。 切った髪、どうする?」
「いらないよ。」
「そうね。」
アマ―リエはブロンドの長く美しい髪の束を、丁寧に紙に包み、くずかごヘ、″カサッ ″ 優しく投げ込まれた音が、ミーオの耳にも届きました。
「さようなら、ミーナ。お母さんのお揃いの長い髪、バイバイ。」
心で、お別れをしました。
「さあ、少年 ミーオ ミハイロフの出来上がり、鏡を見て!」
渡された鏡を見て、
「丸坊主になっちゃった。」
それが、男の子ミーオの最初の言葉でした。
「そんな事ないわよ。ちゃんと、3センチ残しておいてあげたから。」
ミーオは頭のてっぺんの髪をつまみ上げ、鏡に顔を近づけて、
「ほんとだ!すごーい!3 センチ しかない。本物の男の子になったんだね。ありがとう。」
ミーオがそう言ったとたん、アマ―リエは涙ぐみ、
「大丈夫なの?」
「うん、ぜんぜん平気だよ。女の子ミーナとはさっき1時間かかって、しっかりお別れしたから。」
ニコッと、笑ったミーオに、アマ―リエは抱きつき、抱き締めます。
「頑張ってね。どんな事があってもくじけないでね。」
「えっ?」
その意味は、学校に行って、ずっと先に分かるのでした。 でも、アマ―リエの言葉を思い出し、乗り切る事が出来たのでした。
ドン ドン ドン ! ドアを叩く音が…。
ユーベルが帰って来たようです。
「うわぁ、ミーオ!本物の男の子になってる。」
ミーオも、得意げに、
「見て、見て、ぼくの髪、ユーベルより短いよ。頭から3センチしかないんだ。」
「ほんとだね。男の子のミーオ、これからはお風呂も一緒に入れるね。」
ミーオの心臓が、ドキッ と、しました。 尽かさず、アマ―リエは、
「なんて事言うの、この子! レディーを傷付ける様な男の子は、ジェントルマンになれなくてよ。」
「ミーオ、ごめんなさい。命より大切な髪を切った君に、意地悪を、言ってしまって。」
「ううん、いいよ。だってユーベルたくさん、ぼくに協力してくれたから。ありがとう。」
「すごい!ミーオ、男の中の男だね。」
「ありがとう。」
横で、アマ―リエがクスッと、笑いました。
一緒にお風呂に入る…無邪気だけれど、ストレートで大胆な発言にドキッとしました。
ミーナはほんの少し、おかあさんの10代の頃の気持ちがわかったかな?