Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

何を意図して…

2016-04-29 23:06:06 | つぶやき

 ロンドンの大英博物館が所有する1枚のメダル。表側は華やかに着飾ったアントワネットを左横から捉えた構図。裏側は1793年10月16日、彼女が処刑されるため、コンコルド広場に向かうときの様子を表している。

 アントワネットの光と影を、コインの表と裏に描いたその意図は何だったろう?どうしても私は表より裏側が気になってしまう。

 道の両側で、多くの民衆が嘲笑と冷ややかな思いをこめて、華やかだったロココの王妃の死への旅路を見送る。王妃を運ぶのは粗末な荷車。両手は後ろできつく縛られている。(ルイ16世が刑場に送られる時は、縛られていなかった。)最後までフランス民衆に受け入れられず、まるで見世物扱いで処刑台に向かう姿が後世まで残ってしまったアントワネット。しかしコインの裏側の王妃はうなだれることなく、顔をきちんと上げ堂々としているのが印象的。誇りを失わなかったことを伝えたかったのだろうか?

 反王室派の画家ダヴィッドが描いた、アントワネット最後の様子。「ダヴィッドはアントワネットに反感を持っていたため、ことさら彼女を(実際より)醜く描いたのではないか?」…これは作家中野京子さんの説。それは十分ありうると思う。普通自分が好意を持っていない相手を、きれいに描こうなどと思わないだろうから。

 

 次はアントワネットの処刑後に描かれた絵。この絵がどこまであの日の真実に迫っているか、定かではない。アントワネットは一人ではなく、牧師に付き添われている。

 池田先生が新作エピソードで描いた、アントワネットがコンコルド広場に向かう様子。やや頭を下に向け、おそらく瞼を閉じたまま、残していく子どもたちのことを最後まで考えていただろうか?

 写真がない時代、同じ場面を描くにしても、描く人のスタンスや捉え方により表現は変わってくる。どれが本当のアントワネットの姿だったのか、それを解釈するのも読み手の感性次第に思えてくる。

 読んでくださり、ありがとうございます。



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