男子800m日本チャンピオン田母神一喜が故郷福島に帰り、スポーツ事業を始めた、と福島新聞に載っていたが、その内容にがっかりした。
自身の事業|||F スリーエフにジュニアチームを作り、小学生に走りを教えると言うのだ。
小学生1から6年生のアスレティックコースは幅広いスポーツ体験により、運動に興味を持たせる。
アスリートコースは5,6年生を対象に走りを教える。ということだが、このような活動は百害あって利益は無いので参加するべきではない。
子供の発達行動は遊び行動しかありえない。遊びの中で、子供は走り回りという行動を必ず行う。体に走る準備が出来ていない場合、転がり、じゃれ付きなど様々な行動により体を作り、駆け回りへと移行する。この仕組みは体の中にプログラムされているのだ。この中で足裁きや足腰のバネを自然と身に付けていくのだ、アフリカや東欧カリブのランナーが強いのは、山野でこの発達行動をたっぷりと体験して大人になるからだ。
ところがアスリートが子供を集めて陸上をはじめるとスプリントドリルなどトレーニングをやらせたがる。このトレーニング練習をやらせるとせっかく体の中から運動しようという発達行動の信号が出ても、それを阻害してしまう。だから子供にスポーツをやらせてはいけないのだ。
厚生労働省が近年、子供時代にスポーツをやった人と、遊びで日常を過ごした人の、体力運動能力について統計調査を行っているが、遊びにより成長した人の方がレベルが高いという結果が出ている。
ところがアスリートは陸上だけでなく色々なスポーツで、中学生高校生成人だけでは商売のネタが不足なので、小学生を対象にした事業をやりたがる、そしてスポーツをやらせたがるのだ。
また大会を積極的に開催すると言うのも、これを子供を対称にするとしたらまずい。今、子供やジュニアを勝利至上主義に駆り立てる大会の廃止が各スポーツで行われ始めている。当然のことである子供は無垢なので試合に出させると、それに熱中してしまう。だから大人がそうならないように、試合には出来るだけ出させず、子供らしい生活を確保しなければならない。子供は遊びの中で競い合い、冒険を行い闘争し和解し、心身を作っていくのだ。これが子供の本分は遊びであるという哲学の意味。
子供を相手に事業をやりたいのであれば。
遊び場経営がいいだろう。とりあえず公園の隣に土地を借りるか買うなどして、そこでパン焼きがまを作ってパンを焼いたり基地を造ったり、自由に遊び場として使えるようにする。大人は出来るだけ見守りに徹する。
子供はそこにスペースがあれば自由な遊びを始める。言われなくても走り回りやじゃれ付き木登りなどを始める。
試合を開催したいのならそれは大人を対象にすべきだ。
子供に必要なのは遊びと、たまにお祭りだ。屋台のでるお祭りが子供に、遊びの延長だが普段と違う刺激になる。
充実した遊びの時間が毎日あれば、子供はスポーツにあまり興味を示さない。そうして、心身が成長して大人になりかける十代半ばにスポーツに興味を持つようになり、アスリートを目指したくなるのだ。それを青田刈りで小学生をアスレティックに駆り立ててはいけない。
この内容では一流アスリートとしての自分の存在理由が無くて不満かもしれないが、これが正しい子供との接し方だ。
これが本当に気軽に利用できる場所であれば多くの子供が集まってくるだろうし、遊び場を求めて親子連れがあつまって来るだろう。
このような事業にスポンサーや助成金、寄付金、利用料などで資金作りをすることは、難しくないだろう。土地を取得すれば会社の資産になる。
福島は比較的土地も安い、自然にも恵まれている。この特長を生かして、もっと子供のために、かつ自分のためにもなる事業をやるべきだろう。遊び場に自社事務所も安く作れるし、隣接地区に別途土地を取得して貸しロッジを作るとか、いくらでもいい事業が企画できる。もっと頭を使いなさい。
走りを教えたければ育成がやりたければ10代後半以上の大人を対象にすればいいのだ。今の日本の陸上界は10代後半から大人の練習内容がひどすぎるレベルだ。才能のある実業団の所属選手が、世界に出るとべた負けに負ける。
そこでトレーニング科学の基礎を学び、生物学を学び、そうしてちゃんとした指導者になればいいのだ。田母神君がやっていた練習方法では、まったくレベルが低すぎる。日本選手権では勝てても世界では勝てない。つまり10代後半以降の大人を対象としたスポーツ指導でもまだまだやりようがあると言うことだ。
(下の写真福島民報より転載|||F のジュニア教室)体育学の知識が欠けていることが分かる。
田母神君、子供を起業のダシにするのは止めたまえ。そして福島県民の皆さん、このようなスポーツ教室には子供を入れないようにしよう。
小学生集めてのスポーツ教室などはちょっと名の知れたアスリートが日本中でやっている。発達学のハの字も知らないで、このような生き方を自己満足というのだ。いまさら、そんな愚か者の仲間入りする必要はあるまい。
解剖生理学には発達学や発生学が含まれている。指導者になるのならそういった勉強をもっとしっかりやるべし。陸上の本場欧州のテキストを読むと、ジュニアのトレーニングは大人のトレーニングの薄めたコピーではない。と書いてある。そして少年はトレーニングではなくて遊びで心身を作る。スポーツでそれを阻害してはいけない。
蛇足だが、アスレティックコースとアスリートコースでは意味が同じだ。アスレティックとは職業スポーツ、アスリートとは職業で運動をやる人という意味だ。語源は古代ギリシャ語である。
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