(写真はイメージ)
寡黙な映画である。
オーストラリアの広大な平原、そこに佇む点々とした木々、近くに寄れば見事な大樹。
その自然の風景に寡黙さを感じた。
そこで苦闘する人間はというと、痛ましいかぎりである。
この大陸に希望を託してドイツからやって来た両親と一人の少年。
堅物で一生懸命働くしか能のない父親と農業に興味のもてない母親のあいだに、亀裂が生じてくる。
やがて母親には愛人ができ、子どもまでできてしまう。
ふたりの男を往ったり来たりする女としての母親、そして少年。
家事もできず、子育てにも無関心で、夢ばかり見ている母親。
それでいながら、どの男にも「愛している」と言われる。なかなかの好演である。
そんな女に振り回されて苦しむ男たち。
台詞が多くないだけに、行間にあふれる悲惨なできごとは、よけい胸にせまる。
少年は長じて哲学者となる。その視線が、この映画の寡黙なふんいきとつながるのだろうか。
父親役は『ブーリン家の姉妹』でヘンリー八世役だったとか。
また観る機会があれば見比べてみるのも楽しみだ。
新しいところでは『ミュンヘン』で好演しているらしい。
プライム・ ビデオにはあったが、レンタル料がいる。一人で観るのはもったいないので、しばし断念。