ルキノ・ヴィスコンティの映画は、大体観ているが、よく分からないものもあった。
『夏の嵐』は、分かりやすく、ラストシーンも面白いと思ったのだ。それが……。
冒頭シーンはオペラ劇場から。
回廊になった貴賓席にヴェニスの人たち。平土間席には、白い軍服のオーストリア軍の将校たち。
オペラが終わると、何層もある回廊席からばら撒かれるビラ、ビラ、ビラ。天井桟敷の人々が投げる抵抗運動ーーオーストリア軍への。
華麗な描写は、さすがヴィスコンティ。
そこでヴェニスの公爵夫人とオーストリアの将校が出会い、恋に落ちる。
公爵夫人の従弟は抵抗運動を先導していて、大事な資金を夫人に預かっている。
そして、恋に眼がくらんだ夫人はその資金を……
恋の終わりは、裏切りと、ののしり合い、その果てにあるものは、なんともおぞましいラストシーン。今、この歳で観るとつらい。
少し険のある顔立ちの女優も好きにもなれなくて、調べたら、アリダ・バリ。
あの有名な『第三の男』、そうだったのか。
あちらは、ラストシーンが有名で、幼少の頃から、学生だった兄や姉の口から聞いていた。
以降、専業主婦のころ、テレビで何度か観る機会があった。
オタクネタとして、『第三の男』は、一人称で語られる版と三人称で語られる版があるということ。アメリカ版とイギリス版で違うそうだ。とちらがどうか、もう忘れてしまったけれど。
アリダ・バリは、『かくも長き不在』も有名だった。戦死したはずの夫が帰ってくるという話だったと思う。リアルタイムの劇場で観たけれど、ねんねだった私にはさっぱり。夫婦の機微なんて分かるはずがない。単細胞だから、今でも分からなかったりして。