「でも、君はその頃はまだ未成年でしょ? 男の子でしょ? そんな人とその…そういうことを華島が… 」
オミさんはなかったことにしたいんだろう。
華島さんと俺のことを。
「でも、未成年とか、そんなのあの頃のミュージシャンには関係なかったですよね。 女の子は… 」
他の男のことなんて考えられない。オミさんも含めてだ。
「そりゃそうかもしれないけど…」
もしかすると、オミさんは俺が華島さんに対して何か悪いことをするかも、と思っているのかもしれない。
恨みから恐喝とか、切りつけるとか…
もしくは、恨みというよりただの頭のおかしいファンとか。
「俺もその…華島さんに、華島さんの部屋に引っ張り込まれたんです」
「…そうだね あの人は女の子に飽きて、男が好きになってたみたいだからね…」
また俺はその言葉に傷ついた。
「でも、俺を廊下で助けようとしてくれそうになったのは、隣の部屋から出てきた ミオさんでしたよね? 」
「覚えてない 」
冷ややかな切り返しに、俺は泣きたくなった。
俺があられもない姿で廊下に追い出された時、たまたま通りがかって助けてくれそうになった〈ミオ〉ももうどこにも存在しないのだ。
華島さんと俺との関係の証人は誰もいないのだ。
すると、オミさんは笑みを浮かべ、
「でもあの人 そういうこと上手いでしょ。俺もベッドの中でいい思いさせてもらったし…」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます