蒼天在眼 (そうてんまなこにあり)ーベランダで星を見る

昔、昔、天文少年でした。そして、今は、ベランダから、星を見ています。
いろいろの忘備録

ベランダから、Leonard彗星を窺(うかが)う の巻

2021-12-20 14:00:27 | 天体観測

先達の殿ばらすなる彗星撮影といふものを我もしてみむとてするなり

ということで、Leonard彗星(C/2021A1)の撮影に挑戦します。

尾を引く彗星は、太陽の近くにあるので、明け方の東の空か、日没後の西の空に出没しますが、バルコンのベランダは、彗星を見るのには全く向いていない作りです。東はお隣との仕切り板があって、まったく見えません。西は、開けているのですが、近くの雑木林が迫っていて、地平高度が低くなると、武蔵野の林の向こうに早々と沈んでしまいます。

今回のLeonard彗星は、地平高度が低いため観測は困難だと思っていました。さらに平日は仕事から戻るのは18時すぎになってしまうので、土曜、日曜日しか、日没時に、観測できないというおまけつきです。このような制約があるのですが、ある方に背中を押されたこともあり、12月18日、19日の2日をLeonard彗星の撮影日として予定しました。

12月18日

日没:16時44分

市民薄明の終了 17時13分( まだ明るさが残っていて、人工照明がなくても屋外で活動ができる)

航海薄明の終了 17時45分 (水平線と明るい星が同時に観測できる明るさ。天測に適時)

天文薄明の終了 18時16分 (六等星まで見える暗さになる前の明るさ)

とのことなので、予想される5等級の明るさであれば、航海薄明の終わりから、雑木林に隠れるまでの15分間が見える時間帯であるとのことで、ピント合わせ、導入、試写、本番をよどみなく行っても30秒の露出で、10枚程度撮影できれば、上々と予想されます。

使用する機材は、これまで、あまり出番のなかったASKAR FMA 180 焦点距離 180mm 口径 40mm F4.5三枚玉のアポクロマート望遠鏡です。後端にM42のネジが切ってあるので、ビクセンのTリングを介して、CMOSカメラ、ASI29 mc proと接続します。手作りのフードをかぶせています。奥は東側のお隣との仕切り壁です。

この鏡筒を選んだ理由は、焦点距離が短いので、画角が大きくとれ、彗星の長い尾も記録できることと、導入に誤差が多少あっても、どこかに彗星が入るだろうと考えて選びました。F4.5とBalcon の所有するなかで一番明るい鏡筒で、短時間露出で多数枚の撮影ができるであろうというのも選択理由のひとつです。

都会での天体撮影の肝であるフィルターはサイトロンのその名もコメット・バンドパス・フィルタ(48mm)を筒先にねじ込んで使います。西側の雑木林が右に写っています。この林が西側の視界を制限することになります。

一秒も無駄にできないので、Skysafari で、方位、高度、画角をチェックします。

なんと、 ASI air proのデータベースにC/2021 A1 がありました。

おお、これならば自動導入できるではないか。プレートソルビングするために、航海薄明になったら、木星付近で、フォーカスをあわせて、プレートソルビングで、位置を出して、赤道儀と同期をとって、では、自動導入。

おやまぁ、中央に、彗星のコマらしきものが入りました。 こんなに簡単でいいのかと思うほど、あっけなく導入完了。以前だったら、考えられません。長生きはするものです。CMOSカメラの感度がいいためか、思いのほか明るく写ります。180㎜の画角の全体はこんな感じ。

写真で分かるように、林の上にLeonard彗星がかろうじて見えます。時間があまりありません。

 

5秒以上露出をかけると、センサが飽和してしまうほど、背景が明るく、5秒で30枚スタックします。

Leonard彗星周辺をトリミング

あれれ、尾が写らない。5秒30枚スタックでも、尾が写りません。とほほ。そのうち、視野に森の梢がどんどん入ってきて、タイムアップ 18:03でした。

12月14日と15日にLeonard彗星は、outburstしたらしく、 形が変わったとの報告もあります。本撮影は、その後に行われたものであり、単に、明るい空と、尾のコントラスト低いだけでなくoutburstの影響もあるかもしれません。

以上まとめると、2021年、12月18日に、Leonard彗星を都内のベランダから撮影しました。航海薄明の終わりから、天文薄明の間の30分のうち、当ベランダからは、約15分間、観察することができました。コマは、はっきり観察できましたが、尾の部分は、コントラストが付きませんでした。理由としては、大気散乱光が強く残っていた、彗星の尾の方向と視線方向が近かった、 outburstによって、核が分裂して、尾自体が、短くなってしまった、などが考えられますが、今回の観察だけでは、絞り切れません。

次回は、コントラストを上げるために、口径を絞って(F値を上げて)撮影する、できるだけ空が暗くなってから、撮影に入るなどの対策をたてて臨みたいと思います。

(FMA180 のF値が誤っていたので、修正致しました。)



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2 コメント

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Unknown (starskys2)
2021-12-22 11:47:01
新星空の友です。

レナード彗星の写真、拝見しました。
東京都内の空で写りましたね。
最近のデジタル動画カメラと特殊フィルターは凄い威力を発揮しますね。
明るい空でも何とか彗星のコマと尾が写っています。
東京の空での記録撮影として意義があると思います。
私も135mm望遠レンズで固定撮影しました。
私の描いた彗星軌道図を見て頂きましたように、彗星の尾はこれから短くなる方向です。今のチャンスに撮影できたらどんどん撮影しておきたいものです。
本日(12/22)天気良ければ、ε-130D望遠鏡で撮影に挑戦してみようと思っています。
それでは、これからもよろしくお願いします。
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Unknown (balcon)
2021-12-23 13:53:14
暖かいコメントありがとうございます。本業のほうがとても忙しく返信が遅れましたお詫びします。
天文機材の進歩には、目を見張るものがあります。20世紀天文少年は、目を回しそうです。12月19日に、もう少しまともな彗星の写真が撮れたので、いずれ、記事にします。次の週末は、北海道に出張があるので、今年は、もう、本当に年末にしか、撮影のチャンスがありません。チャンスのある方はうらやましいです。
Leonard彗星は、12月20日ごろにも小規模のバーストがあったようで、1月は私にとっては、厳しいかもしれません。また、貴サイトへお写真を拝見に参上しますので、よろしくお願いします。
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