
先日自分自身のソロライブをやったばかりだが、実はそのソロライブの前日、私はサイモン&ガーファンクル(以下「S&G」)のコンサートを見た。
ここまでの大物になると、ライブを見て自分のライブへの刺激にする・・なんてことはできない(笑)。
恐れ多くて。
過去にS&Gは何度か日本公演をやってるはずだが、私はこれまでS&Gの公演は見たことがなかった。
中学3年の終わりごろから高校一年の頃にかけて、さんざん聴いて感動していたにもかかわらず。
サイモンもガーファンクルも、共にもうすぐ70歳になる年代。
ソロ名義ならともかく、S&Gという超大物デュオでの公演となると、今後もう見れないかもしれない。
なので今見ておかねば・・という思いは強かった。
いきなり二人だけで、「旧友」という曲でコンサートは始まった。
オープニングが、バックバンドが入らず、この二人だけでの演奏・・ってのがいい。
原点だもの。
東京ドームということで、正直、音響はあまりよくない。
今出した音が、こだまのように後ろから返ってきたりする。
なので、音の芯がぼやける。
でもそれはアーティストのせいではない。
会場の構造上、仕方ないのだろう。
サイモンの弾く1本のアコギの音がきれいだ。
そしてそれに乗っかる二人のハーモニー。きれいだ。
これだけで数万人の客を十分「聴かせて」しまう。
S&Gの演奏、歌唱、歴史、功績、存在感、そして楽曲の素晴らしさのなせるわざだ。
私が中学時代、ラジオなどでは、ビートルズとS&Gをライバル扱いして構成した番組があった。
そういう動きのせいもあって、一時はビートルズとS&Gはライバルのように私は思っていた。
変な話だが、もしもサイモンがビートルズにいたら、どうなっていただろう・・なんてことを考えたこともあった。
正直、ルックスではビートルズの方が上だと思った(笑)。
だが、サイモンのソングライティングの才能は、レノンやマッカートニーにひけはとらないと思ってたものだ。
「明日に架ける橋」は圧倒的な壮大な名曲だし、「サウンドオブサイレンス」の素晴らしさには震えた。
「ボクサー」のエンディング部分の盛り上がりには、計り知れないほどの影響を受けた。
「コンドルは飛んでゆく」には私は人生を変えられた。
私が後にワールドミュージックのめり込むようになる原点が、そこにはあったと言えるだろう。
以前、サイモンのソロでの日本公演を観にいったことがあるが、ひそかに「コンドル」をやってくれることを期待していた。
でも、・・やってはくれなかった。
「明日に架ける橋」を大幅にアレンジして別の曲のようにして演奏し、アンコールで申し訳程度にやった「サウンドオブサイレンス」は、あまりにもサラッとしていた。その様子に、正直ガッカリしたのを覚えている。
それ以来、ああ、それ以来。
「コンドル」をS&Gバージョンで聴きたい。
「明日に架ける橋」を、あのピアノのイントロで始まって、高らかなアートの高音にサイモンのハーモニーがかぶるバージョンで聴きたい。
それはもう・・S&G名義でのコンサートで聴くしかないのだ。
S&Gで来日公演やってくれないかなあ・・という願望がいつも心の中にくすぶり続けていた。
それが・・・今回!
やっと、実現したのだ。夢のようだった。
ステージにポール・サイモンとアート・ガーファンクルの二人が一緒にいて、二人で歌っている。それだけでも嬉しかった。
ある意味、ビートルズでいえば、レノンとマッカートニーが一緒にステージに立っているような嬉しさが私の中にはあった。
一時、サイモンは指を怪我して、ギターをあまり弾けなくなった・・なんていう話をどこかで聞いた気がするが、この日のコンサートを見る限り、ギター演奏のほうも健在に思えて、ホッとした。
「旧友」が終わり、バックバンドの演奏が加わり、次々と曲が演奏され、二人のハーモニーで歌われる。
ちゃめっけのある選曲もあったが、全体的にはお馴染みの懐かしく有名な曲ばかり出てくる。
「冬の散歩道」「ミセス・ロビンソン」「アイアムアロック」「スカボローフェア」「アメリカ」「早く家に帰りたい」その他、その他。
聴きたいと思う曲、ほとんどをやってくれたと思う。
出てくる曲、どれも有名な曲ばかりだ。
凄い。
そして、なによりも、嬉しい!
ヒット曲だけで、コンサートを構成できてしまうんだもの。
これだけでも、いかにS&Gが凄いユニットだったかがよく分かる。
S&Gに興味が無い人でも知ってる曲は多いはずだ。
あらためてS&Gがどれほど偉大な存在だったかを思い知らされた感じだ。
ビートルズと並び称されたのは、ダテではないのだ。
やがて、特徴的なイントロが。
もう、一発で反応した私。
そうだ、「コンドル」だ! 来た!
これを待っていたのだよ。
やはり、やってくれたね。
フォルクローレのアルバムで「コンドル」はいくつものバージョンを私は持っているが、この曲を知ったのはS&Gのレコードで、だった。それは中学時代だ。
なので、S&Gの「コンドル」こそが、私にとっての「コンドル」の原点なのだ。
もう、泣きそうになった。
コンサートは進み。
途中、二人のソロコーナーがあった。
それぞれ3曲づつ、ソロで。
その間、もう一人は引っ込んでいる。
この公演に途中休憩の時間はなかったが、当事者同士はそれぞれソロコーナーを設けることで、15分くらいは休憩していたことになるね(笑)。
なるほど、いい手だ(笑)。
その後もコンサートはヒット曲満載で進み、やがてお馴染みのあの「世紀の名曲」のイントロがいきなり流れ出す。
それはまぎれもなくS&Gバージョンの「明日に架ける橋」だ。
正直、この曲が出たら、もうコンサートは終わりなんだろうな・・と思ってたので、このイントロを聴いた瞬間「え?もう終わってしまうの?」って思った。
客の反応が違う。真打ち登場って感じだ。
歓声と共に大きな拍手が起きた後、すぐに静まりかえる。皆、この曲をじっくり聴きたいのだ。そりゃそうだ。
20世紀が生んだ世紀の名曲。20世紀が誇るスタンダードナンバー。
1番をアートが歌い、2番をサイモンが歌い、3番は二人のハモで。
レコードなどではさんざん聴いてた曲だが、こうして本人たちが目の前で生で歌うと、その感動はひとしおだ。
言葉も出ない。
案の定、正規の公演はここで終わり。でも、まだ「サウンドオブサイレンス」も「ボクサー」もやってない。
それで許されるわけはない(笑)。
アンコールで「サウンドオブサイレンス」そして「ボクサー」と続く。
場内、泣いてるお客さんはけっこういたのではないだろうか。
「ボクサー」では、曲の間奏部分でなんと!テルミンの登場。
これはビックリ。
まさかここでテルミンが登場するとはね・・。
電子楽器テルミン。
ロックでは、なんといってもビーチボーイズの「グッドバイブレーション」という名曲で使用されて世に知られるようになった楽器だ。
粋なアレンジ。やってくれるねえ!
ただ、残念なこともひとつ。
「ボクサー」では、コーラス部分の合間に「バン!」という打撃系の音が効果音として入るはずなのだが、その「バン!」が聞こえてこない。
どうやらその「バン!」を担当する楽器は・・ないようだった。
いや、もしかしたら誰かが担当してたのかもしれないが、聞こえてはこなかった・・。それだけがちょっと残念だったかな。
やがてアンコールも終わって二人は引っ込んだ・・と思ったら、再び出てきた。
二度目のアンコールのためだった。
当初、13000円というチケット代は高いなあ・・と思っていたのだが、これだけ好きな曲をたくさんやってもらうと満足だ。文句、ありません。
いい曲をたくさん持ってる・・というのは、ミュージシャンとして最強の武器だね。
サイモン&ガーファンクルは、やはり偉大なアーティストだった。特別な存在だ。
フォーク居酒屋などでS&G大会をやると盛り上がる・・ってのは、よく分かる気がした。
ギター伴奏、ハーモニー、そして名曲の多さ。申し分なし!
最後に。
コンサートの最中、やたらと席を立って移動する人が多いのが気になった。
トイレならしかたないにしても・・。
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