
私の大好きなシリーズ、合田道人さんの「童謡の謎」シリーズ。
これまで、そのシリーズを3冊、私は読んできている。
で、今回のこれは、これまでのそのシリーズで取り上げた童謡の謎のベストセレクション・・・ということだ。
とはいえ、新たに書き下ろした部分もある。
このシリーズが大好きな私としては、この本は見逃すわけにはいかなかった。
童謡が大嫌いな人ってのは、そうはいないのではないだろうか。
例え大人になって普段歌ったり聞いたりする機会があまりなくても。
童謡ってのは不思議なもので、シンプルで分かりやすい歌のようでありながら、よく味わうとかなり謎な部分がある。
残酷な個所もあったりする。
だが、子供時代に歌ってた時は、その謎をあまり気にせず、単に「歌」として受け入れて、あまり疑問も感じないで受け入れていた。
もっとも、子供時代でも、たとえば「かごめ」の歌詞には意味不明なものを感じたし、「てるてるぼうず」の歌詞には残酷なものも感じたりした。
だが、あまり追求しなかった。単なる「歌」の歌詞として受け入れていた。
それが・・大人になって再び童謡に触れる機会があると、子供時代に漠然と感じてた謎な部分がだんだん気になるようになった。
そして、その童謡に隠された意味や、その曲が出来上がったいきさつなどにも私は興味を持つようになった。
この合田さんの「童謡の謎」シリーズは、そんな疑問に応えてくれるシリーズだったので、第1冊目が出たころから新作が出るたびに買って読みふけった。
そして、この「ベストセレクション」の続編を見つけので、またしても飛びついてしまった。
童謡に限らず、曲の出来上がった本当のいきさつについては、極論すれば作者以外分からない。
でも、それを愛する者や研究する者にとっては、あれこれ推察する楽しみもある。
この本は、各童謡のなりたちの「一説」を楽しむことができ、またそれによって、ますます童謡への関心は深まることになると思う。
特に「かごめ」「通りゃんせ」みたいな曲は、味わう側によって色んな感じ方があるだろう。
歌詞が意味深な場合、なぜその歌が誕生したかについてあれこれ思いをめぐらせると、その歌に「深さ」を感じるようになる。
合田さんのこの本で書かれている様々な童謡の検証や説は、興味深く面白い。歌の作者の境遇やドラマ、地域性などを調べたうえでの解釈なので、説得力もある。
なるほど、そうか・・と納得する個所は多い。
その歌が誕生したのに、様々な要素や側面があったにしても、この本で書かれている解釈は、確実にその歌の誕生の要素や側面の一つであっただろうと思えてくる。
童謡は、聴く人にとって、郷愁を感じさせてくれると共に、色々空想力を刺激してくれる作品が多い。
文章で言えば「行間」が豊かなのだ。
で、その「行間」には謎もあれば、闇もある。作った人のドラマや、人生から感じた悲喜こもごももある。悲しみ、喜び、苦悩、風刺、そして隠されたメッセージ。
歌というものは、童謡に限らず、どれもそういうものを含んでいることが多いが、童謡の場合、たとえば普通のポップスよりも歴史が長い場合も多い。
なので、歴史があるぶん、幅広い世代に覚えられてゆく。
流行とは別の次元にいるから、流行の影響を受けず、残ってゆく。
むしろ、流行のベクトルが、すでに存在している童謡に近づいたりすることもある。
流行と言うのは一過性のものだったりするが、元々流行の影響を受けずに存在している童謡は、特定の流行が一過性ゆえに過ぎ去っても、それで童謡がすたれてゆくわけではない。
だからこそ、子供からお年寄りまで一緒に歌えるのだ。
私は、合田さんのこの「童謡の謎」シリーズを読むたびに、各曲の誕生を映像化してもらいたいと思ってしまう。
オムニバスで。
言わば、かつてのアニメ「日本昔話」の童謡版みたいなものだ。
アニメでもいし、実写でもいい。
特に、人気の高い「赤い靴」などは、けっこう関心を持つ方はいるんじゃないだろうか。
「赤い靴」には、実際にモデルとなった女の子がいたわけだし。
歌に描かれた世界と、実際のその子の生涯の違いや、なぜそういう境遇になったかのドラマなどが描かれたら、その歌に対する感じ方は、より深くなるだろう。
この「童謡の謎」シリーズ、個人的にこれからも続けていってもらいたいシリーズだ。
次回作も楽しみにしたい。
おすすめのシリーズ。時間がある時に、ぜひ多くの人に読んでもらいたい。
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